[南]
いまはわかるんだけど、オレは昔、
「胃が痛い」っていうことがよくわかってなかったんだ。
[糸井]
え? 胃が痛くなかったってこと?
[南]
いや、胃は痛かったんだと思うんだけど、
「胃が痛い」っていうことの意味がわかってなかったんだ。
そういうのは、漠然と、
「お腹が痛い」に含めちゃってた。
[糸井]
ああ、はぁ、はぁ。
[南]
だから、わかりやすい例を挙げると、誰かが「胃が痛い」って言うと、
「うんこすれば治るよ」って返してたわけ。
[糸井]
違うだろう、それ(笑)。
[南]
違うんだよ(笑)。
[糸井]
「胃が痛い」と「うんこすれば治る」はそもそもの場所が違うよ。
[南]
ああ、そうだね。
[糸井]
でも、昔のばあさんとかは
「腹が痛い」って言うととにかく
「うんこしてこい」って言ってたね。
[南]
そうなんだよ。オレもそれと同じで、
「胃が痛い」も、「腹が痛い」も同じこととして認識してたんだ。
[糸井]
胃も、腸も、同じだと。
「ちょうよ、いよ」と育てられたわけだ。
[南]
はははははは。わかりづらいね。
[糸井]
「腸よ胃よ(蝶よ花よ)と育てられ」。
[南]
いいね、くだらないね。
[糸井]
いや、しかし、そうですか。
「胃が痛い」が理解できませんでしたか。
[南]
うん。あのさ、
「胃がシクシク痛む」とか言うじゃない?
[糸井]
うん。
[南]
それを聞いて、
「シクシク? なに言ってんの?」って。
[糸井]
ふざけんじゃない、と。
甘えるんじゃない、と。
[南]
「お腹が痛い」って言うならふつうに同情しますけどね。
シクシク? なに?
[糸井]
泣いてんのか、と。
怪談か、と。
[南]
じつは、いまでも、
「胃が痛い」は理解できたけど、
「シクシク痛い」はよくわかんないんだ。
[糸井]
伸坊自身は、胃が丈夫?
[南]
いや、胃は痛いよ。でも、オレはね、そういうときも胃が痛いんじゃなくて、
「みぞおちが痛い」と思ってたんだ。
[糸井]
ははははははは。
[南]
だから、あるとき、
「どういうわけか みぞおちが痛い」って言ったら、
「それは胃が痛いんだよ」って教えてくれた人がいて。
[糸井]
(笑)
[南]
それでようやく
「胃が痛む」ということに思い至ったと。
[糸井]
それでいろいろ合点がいった?
[南]
腑に落ちたねぇ。
「みぞおちが痛いときは、 水を飲むとスーッとするぞ」
とか思ってたからさ。
[糸井]
それは、つまり、胃液が出すぎてたとか。
[南]
そういうようなことだと思うんだよね。
徹夜で仕事してたりすると、そのあたりのことが、うまく調節できなくなるんだよ。
[糸井]
ああ、そうね。
[南]
夜中に食べたり飲んだりするもんだからね、胃の、液とか、粘膜とか調整する人も、
「急に言われても‥‥」っていう状態でさ。
「勤務時間内にお願いします」
みたいなことだったんじゃないかな。
[糸井]
「勤務時間内」(笑)?
[南]
だから、胃の、役人がね、さぼってるっていうか‥‥。
[糸井]
その役人、どういう格好してるの?
[南]
胃の役人ですからね。
だいたい、みんなこういうような。
[糸井]
こういうような? どういうような?
[南]
ええっと‥‥「いなかっぽい」格好を。
[糸井]
胃の中の役人だけに。
[南]
そう。
[糸井]
「いなかぼっこ」っていうのは、どうかね。
[南]
「いなかぼっこ」?
[糸井]
田舎に当たるんだよ。
体がポカポカしてくるんだ。
[南]
ちょっと肌寒い季節に。
[糸井]
そうそう。干し草の上かなんかに寝そべって。
[南]
いいかもしれないね。
(さすがにもう終盤ですが。まだ、つづきます)
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