[糸井]
オケラは見たことある?

[南]
ないんだよね、オケラ。

[糸井]
ぼくは、オケラも好きでねぇ。
平素は土の中にいて、なんかの拍子に発見されるんだけど。

[南]
そういうの、好きだよね。
セミの幼虫とか、モグラとか、オケラとか。

[糸井]
やっぱり、めったに出会えないからさ。

[南]
そういうことだろうね。
あのさ、オケラにさ、
「大きい? 小さい?」って訊く遊びがあるでしょ。

[糸井]
はいはいはい。

[南]
なんなの、あれは?

[糸井]
ええとね、まず、オケラって、穴を掘るときのために、両手がシャベルみたいになってるんだよ。
全身の大きさでいえば、どうだろうな、小指の第一関節分ぐらいの虫なんだけど。
その全身に対しての割合からいうと、両手のシャベルは、けっこう大きめで、オケラを持つ場合は、そのシャベルの両手の付け根を持つことになるんだ。
人間でいうと、脇の下を持つ感じ?



[南]
こう、ザリガニを持つときのように。

[糸井]
そう、そう、そう。
で、そこを持つとね、オケラは
「やめてくれ」っていう感じで、シャベルの両手を、こう、思いっきり、左右に大きく開くわけだよ。
(オケラのマネをして手を左右に開きながら)
もう、こう、なんだ。こう、こう。

[南]
つまり、釣った魚の大きさを自慢するようなポーズを。

[糸井]
そう、そう。で、オケラをつかまえて、
「伸坊のちんぽがどーのくらい?」って訊くと、こう、両手を、こうやって。

[南]
あ、それでなんだ(笑)。

[糸井]
そういう遊びさ。



[南]
知らなかったわ、その遊びは。

[糸井]
くだらないんだけどさ。

[南]
いや、それが盛り上がるのはわかるよ。
そうか、そういう遊びだったんだな。
なんとなく、ニュアンスだけは微妙にかぎ取ってたんだけど。

[糸井]
ちょっとした、きわどさがあるんだよね。
男の子特有の。

[南]
うん。そんな感じがしてた。

[糸井]
なんだか知らないけど、当時、誰かに
「ちんぽこがデカい」って言われるのはものすごくイヤなことだったんだよ。
で、「そんなことはねぇ」みたいな感じで、言ったやつをなぐったりしてさ。

[南]
あらら(笑)。

[糸井]
そういうナーバスなテーマを、
「オケラが言ってることだから」
ってことで曖昧にしちゃうのがおもしろかったんだろうな。

[南]
だってオケラが言ってるんだもんね。

[糸井]
そうそう、オケラが言ってるんだもん。



(オケラ、見たことあります? つづきます)


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