[糸井]
SLっていうのはさ、昔、こう、エロティックなシーンに、そういう行為の隠喩として突然、使われたりしたもんだよな。
[南]
へぇ(笑)。そうなんだ。覚えてないな。
[糸井]
使われてたんだよ。
たとえば、その、連結器が「ガッチャン!」ってつながるところだとかさ。
[南]
ああー、なるほど(笑)。
[糸井]
石炭をがんがんくべて燃え上がって加速するピストンの動きなんて、わかりやすいでしょ。
[南]
「ボッ、ボッ、ボッ、ボッ!」って。
[糸井]
うん。その力強く動く様子とかね。
上下に揺れるやら、左右に動くやら、回転するやらで。
[南]
ははははは。
[糸井]
なにが言いたいかというとね、デジタルの時代、CGの時代には、ああいう表現がなくなったね。
[南]
わざわざ、そんなことを言いたかったのか(笑)。
[糸井]
うん(笑)。
[南]
たしかにね。SLで、そういう行為をね。
あの、「ボーーー!」っていうのも、そういうふうに使う場合にいいね。
[糸井]
いいだろう? なんていうか、わかりやすいだろう?
[南]
「シュシュシュシュシュシュ シュシュシュシュシュシュシュ‥‥ ボーーー!」だもんな。
[一同]
(笑)
[糸井]
SLマニアとか、いるわけだよね。
だってオレ、子どものころ、蒸気機関車が鉄橋渡るときの
「ボーーー!」でおしっこもらしたことあるもん。
[南]
えっ、ほんと?
[糸井]
鉄橋のそばで川遊びしてたらさ、
「シュシュシュシュシュシュ」って蒸気機関車がやって来てね、
「ボーーー!」ってなったときに
「ジャーー!」って。
[一同]
(笑)
[南]
へぇ、すごいね、その話。
[糸井]
それくらい、あの音とか迫力は、ボディーにくるものだということですよ。
花火とか近くで見るとさ、やっぱりボディーに響くでしょ。
[南]
うん、そうだね。ドーンと。
[糸井]
子どもたちは、ああいうものに接することで、
「世の中には、かなわないものがあるんだ」
っていうことを学ぶんだよ。
「ぼくは子どもだから小さいんだぁ」
みたいな気持ちを、わかっていくわけだよ。
[南]
なるほど(笑)。
[糸井]
雷とか、台風とかさ。
台風のあとの川の濁流とか、すごかったじゃない?
[南]
うん、うん。
[糸井]
オレは台風のときの増水した川にブタが流れてきたのを見たことがあるんだから。
[南]
川を、ブタが。すごいね。
[糸井]
すごいよ。「おわぁー!」だよ。
[南]
濁流って、オレも子どものころは好きでなんだか知らないけどよく見てたなぁ。
板橋の駅前のところに、いわゆるドブ川があって、
「ゴォー」って流れ込んでる場所があるんだけど、その濁流を、じぃっと見てた。
[糸井]
濁流ファンだね。
[南]
あ、濁流ファンだったのか、オレ。
[糸井]
オレは、濁流ファンだよ、わりと。
このあいだ、『放流』っていうDVD買ったもん。
[南]
なにそれ。
[糸井]
ダムの放流シーンだけを集めたDVD。
こう、溜めに溜めたものすごい量の水を、
「ド、ド、ド、ド、ド、ド!」と。
[南]
ははははは。そういう場面ばっかり?
[糸井]
そう、延々続くんだ、と思うよ?
じつは、まだ観てないんだ。
[南]
ははははは。買ってはみたものの。
[糸井]
うん。観るのかな、あれ。
というか、ダムの放流ってのも、かなりエロティックだと思うな。
[南]
ああー、なるほどね。
[糸井]
マニアにはたまらないんじゃない?
[南]
放流マニア。
[糸井]
そうそう。
放流マニアと濁流マニア。
[南]
どっちかっていうと、オレは濁流かなぁ。
(もうちょっと、つづきます、けど)
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