[糸井]
「♪おいら岬の〜灯台守はぁ〜 妻とふたりで〜沖行く船の〜 無事を祈って灯をかざす 灯をかざ〜す♪」
いい歌詞だなぁ。

[横尾]
いい歌詞だね。

[糸井]
自分の職業を言ってるだけの歌詞なんですけど、なんのてらいもなくて、ちょっとじんとします。

[横尾]
歌詞もいいし、曲もいいよね。
ぼくは、白浜へ行ったとき、その灯台にも行ったよ。
アメリカが本土に突入してくるときには、その灯台を目当てにしてグラマン戦闘機なんかが来たんだって。
だから、銃弾の痕がいっぱい灯台に残ってた。
いま、かけますか。



[糸井]
CD、あるんですか。

[横尾]
あるよ。

[糸井]
へえぇ。

[横尾]
そのあたりの曲、みんなあるよ。
ちょっと待ってね。
ええと、なんだっけ?

[糸井]
タイトルは『喜びも悲しみも幾年月』ですね。
若山一郎でしょうか?

[横尾]
伊藤久男ではないよね。
霧島昇でもないよね。
(CDをさがす)
ありました。



[糸井]
ありました、誰でした?

[横尾]
やっぱり若山彰だよ。
『喜びも悲しみも幾年月』、えー(CDのブックレットを読む)、いまの糸井さんの、一番の歌詞は合ってる。

[糸井]
はい(笑)。さすがにそのあとは知らないです。

[横尾]
二番もいいんだよ。
喘息になってから、歌が歌えなくなっちゃったからなぁ。
ことばを引っ張れなくなった。

(横尾さん、CDをかける ♪〜音楽流れる)



[糸井]
これ、なんだ?!

[横尾]
ふはははは。
『柿の木坂の家』だよ、青木光一。

[糸井]
「柿の木坂はぁ〜♪」



[横尾]
そうそう、それ。
これを聴いたあとに、『喜びも悲しみも幾年月』を聴きましょうか。

[糸井]
そうしましょうか。
『柿の木坂の家』もいいですねぇ。
「柿の木坂は駅まで三里〜♪」

[横尾]
「春には 青い めじろ追い♪」
青木光一の顔はわかるけど、若山彰はぼやっとしか覚えがないね。

[糸井]
丸い人だったような‥‥

[横尾]
おじさんくさい顔してたね。

『柿の木坂の家』が終わったよ。

[糸井]
歌謡曲って、歌詞が一本の芝居みたいになってますね。

[横尾]
さあ、お待ちかねの。

[糸井]
もっと暗い歌ですよね、今度は。

(♪〜『喜びも悲しみも幾年月』音楽流れる)

[横尾]
へぇ。

[糸井]
暗いというか、大げさ‥‥ですね。

[横尾]
うん。なんだかマーチみたいじゃない。
軍歌かと思ったよ。
応援歌だよ。

[糸井]
「♪妻とふたりで 沖ゆく船の〜」



[横尾]
こういう校歌作るとおもしろいよね?
「無事を祈って 灯をかざす 灯をかざす」
元気が出るね、この歌。

[糸井]
ぼくは、愛妻物語として歌ってたのに。

[横尾]
ぜんぜんちがうじゃない。
あ、次の歌に行くよ。

[糸井]
止めましょうか。

[横尾]
止められるの? 糸井さん(笑)。

[糸井]
いや、たのしいですね。
(笑)この歌はなんだ。ちょっと待って。
えっ、なんだろ!

[横尾]
バスの歌だっけ。

[糸井]
「♪若い希望も恋もある ビルの街から山の手へ 紺の制服 身に着けて♪」

[横尾]
誰が歌ってるの?

[糸井]
コロンビア・ローズ。
「わたし、東京のバスガール 発車、オーライ♪」



[横尾]
はははは、これやってたら、きりないよ。
今日が終わってしまうよ。

[糸井]
うん、やめます、やめます。
またにします。

[横尾]
お、これは「無法松の一生」。
まだまだ出てくるよ。

[糸井]
歌えますね、みんな。

[横尾]
子どもの頃はね、みんな歌えたんだよ。

[糸井]
歌えた。なんででしょうね、ほかになにもなかったからでしょうか。

[横尾]
なかったからでしょう。
それから、歌がほとんど映画化されてたよね。
だから、全部が映画の主題歌なんです。
(なにげなく、手みやげのしょうがに 手をのばす横尾さん)
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