[糸井]
横尾さんが取材やインタビューでやり取りしてるのを見ると、聞く人はとにかく意味を求めているんです。
でも、横尾さんは、意味じゃないところでやってる。
そこに横尾さんはいつも苦労なさっているような気がするんですが。



[横尾]
そうなんだよ。
意味を求められているときは、ただことばを言えばいい、というのではないんです。
そこがやっかいなんでね。
その人に通じる意味、その人の意味を満足させるようなしゃべり方や言い方をしなくてはいけない。
それは、どうしていいのか、わかんないでしょ。



[糸井]
はい、そのお気持ちは、わかります、よくわかります。

[横尾]
だから、最終的には
「この絵を見ればいいでしょう」
ということになるわけよね。

[糸井]
「意味じゃないよ、 だから横尾さんは絵を描いたんだから」
ということは、ぼくにもわかるようになってきた気がするんです。
‥‥そうしたら今度は、自分が横尾さんの病気になってきて(笑)、いろんな質問がめんどくさくてしょうがなくなってきてしまいました。

[横尾]
相手が質問する前から、相手が何を聞くか、自分の答えまでわかっちゃう。
そういうのに、なってこないですか。

[糸井]
はい。要求されることがわかるようになると、いま自分がこう言うと紙面は納得する、ということがわかります。
だけど、それはウソなので。

[横尾]
うーん‥‥テレビの人、雑誌の人は、質問を仕事でやってるからさ。

[糸井]
そうそう。
それはしょうがない、そのとおり。

[横尾]
その人が切実に、なにか聞きたいわけでもないわけでしょう?

[糸井]
そうですね‥‥だけど、少なくとも、興味本位になってほしいんですよ。



[横尾]
そうよね。

[糸井]
いかにも役に立ったようなことを引き出せました、ということが仕事の手柄になるからですね。
それはやっぱり、カメラマンに「笑ってください」と言われたときと同じ悩みが出てきてしまいます。

[横尾]
あの人たちは職業意識でしゃべってるけれども、ぼくは職業意識じゃできないからさ。
だから、どうしてもちぐはぐになっちゃう。

[糸井]
で‥‥その病に(笑)、ぼくは完璧に、いま、なってます。



[横尾]
ふっふっふ、どっち?
中間にいるわけ?

[糸井]
中間です。
中間ですけど、横尾さんがいままで困ってた理由が如実にわかるようになった、そのことはとても困ります。

[横尾]
うん。
そのときに思いついた、あることばで質問した人たちが満足のいくような答え方ができるときもあります。
けれども、それはウソっぽくて、そのウソっぽさが、自分ですごくイヤなの。
その「観念」がイヤなの。

[糸井]
そうなんですよ。
いやぁー、すごくわかって、困っちゃう。

[横尾]
それは「もういいよ」とかさ、ほんとにもう、ガキみたいに答えたいわけよ。



[糸井]
ぼくは子どもが小さい頃、
「なにがいちばん好き?」という質問をしたことがあるんです。
だけど、子どもは絶対に答えない。

[横尾]
そうでしょう。

[糸井]
大人はいつも
「いちばん好きなものはなんだ」とか
「右と左だったらどっちがいいか」とか、区別をさせたがるんですね。

[横尾]
子どもはたぶん、好ききらいとか、そういったものはないと思う。
もしかしたら、形で大きい小さいもないのかもわかんないよ。

[糸井]
子どもって、そのつど喜んでいろんなものを選んでるだけだから、
「いちばん好きなのはなに?」
「将来なにになりたい?」
ということついてもそんなにことばでは考えてないと思います。

[横尾]
そうだよ。

(続きます!)


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