糸井 |
細野(晴臣)さんはどうですか。 |
日笠 |
あの、私、細野さんがまだ28だったときに
「おじさん」だと勘違いしてたことがあって
今考えれば、すごく失礼しちゃったと思って。 |
糸井 |
(笑)。
思えば少年のような人ですよね。 |
日笠 |
そう。本当に子どもなんですよ。
すーごい子どもだから、青年がないの、中間が。
子どもとおじいさんのあいだ。 |
糸井 |
今になってみたら思うでしょ、
小学生みたいな人だなって。 |
日笠 |
そう。だけど、あのときはね、なんかもう‥‥ |
糸井 |
声低いしね。 |
日笠 |
声低いし、口の周り黒いし、
もうおじさんだなとかって思ってた。 |
糸井 |
でも、細野さんって、このあいだ、
マーコもパンフレットに書いてる
あのDVD見たんだけど、
昔から本当に素直な人だったんだね。 |
日笠 |
“素直ないい子”ですよ。 |
糸井 |
で、ロックでもないしっていうか。 |
日笠 |
(笑)。 |
糸井 |
何ていうの、丸のまんま出せる鷹揚さがあるね。 |
日笠 |
そう。素直だし、口ごたえしないし、
暴力性ないし、“いい子”ですよ。
ウソつかないし。
本当にかわいい子だと思います。
あの人はかわいい天才。 |
糸井 |
そうですね。いや、改めてこれだけ
年月が経ってから、
この人はいい人だったんだなあと思うわ(笑)。
‥‥きれいですよね。 |
日笠 |
え? |
糸井 |
きれい‥‥というのとはちがうか。
じゃ、純‥‥? |
日笠 |
‥‥でもないけど、なんかまあ‥‥ |
糸井 |
少年? |
日笠 |
“かわいいタヌキ”ですよ。
タヌキっていうか、かわいい生き物。
かわいい生き物だと思いますね。 |
糸井 |
あ、そうですか。
きっと僕より深いところで
見てるんだと思うけど‥‥ |
日笠 |
いやいや(笑)。 |
|
|
糸井 |
僕は改めてこのあいだ、
細野さんの若いときの映像を見て。
活動としては一番野心的な時代に
こんな感じだったのかって思ったら、
この人は天からもらった運命の中に、
ただ泳いでた人なんだなと思って、
素晴らしいなと思ったの。 |
日笠 |
マリンバなんて叩きながらね(笑)。 |
糸井 |
そうそうそうそうそう。
どこかで練習したわけだよね?
マリンバだって。 |
日笠 |
いや、違うのよ。 |
糸井 |
え? |
日笠 |
あの人天才だから、
マリンバでもスティールドラムでも
新しい楽器を持ってくるでしょ、
世界中の珍しいもの。
2、3分触ってると、
もう演奏できちゃうんですよ。
5分与えればレコーディングできちゃうの。
どんなものでも、カヤグンでも何でも
自分流の演奏ができちゃうから、
マリンバも練習してないです。 |
糸井 |
俺は、これはこれなりに練習したんだと思って、
すごいなあと思っちゃった。 |
日笠 |
いや、しないんですよ。できちゃうの。 |
糸井 |
本当に生まれたときから
泳げる人みたいなものだね。 |
日笠 |
そう。 |
糸井 |
はあ‥‥。それが、
でも、表れてますよ。
その、何ていうんだろ‥‥
「きれいな」って僕が言いたくなっちゃうのは
そのへんで、
カリカリしてる必要がないんですよね、あの人は。 |
日笠 |
お腹がすくとカリカリしますけどね。
根っから丸くてっていうんじゃないんだけど、
例えば‥‥だからやっぱり
動物に近いんだと思いますよ。
動物っていうか‥‥ |
糸井 |
横尾(忠則)さんとかに近いのかな。 |
日笠 |
あ、近い。横尾さんもサル‥‥
サル系の方じゃないですか。動物ですよね、
お腹すくと怒るし。
で、得意なことはすごく得意だけど、
あとは面倒臭がり屋で、でも憎めない。
だから、そうですね。近いですね。 |
糸井 |
そばにいたら面倒臭いだろうし、
毎日は会いたくないしね。
だれでも自分の中に横尾さんやら細野さんが
いるってところあるけどもさ、
あの青春時代のDVDを見てね、
「あ、全然違うんだ」と思ってさ(笑)。
「全然違うんだ。すいませんでした。
本当にまったく違うわ」と思った(笑)。 |
日笠 |
うん、カッコよさに対する概念みたいなのが
多分少し違うんですよね。 |
糸井 |
見事ですよねえ。 |
日笠 |
うん、あれは見事なものですね。 |
糸井 |
そのマネジャーだったんですよね。
世話をやく仕事だったんですね。
(うらやましそうに)そうかー。 |
日笠 |
(笑)糸井さんはひとりで
何でもちゃんとできる、
手のかからない、
社会性のある人ですよ。 |
糸井 |
いや。それは我慢してやってるわけです。
したくないです。
僕も細野さんになりたいと
ずっと思って生きてます。 |
日笠 |
へぇー! |
糸井 |
だけど‥‥ダメですね。
ダメですねって、そう思われたことが
ないんでしょうね。 |
日笠 |
だから、それは人それぞれ性分っていうか、
ほら、お母さんっていうか、
気がついたら何か言ってあげるとか、
してあげちゃうとか、
それはもう役回りなんですよ。
気質。
だから、猟犬だったりとか牧羊犬だったり
犬にそれぞれ種類があるでしょう。 |
糸井 |
でも、憧れるよね。
何でも世話焼かれるって。 |
|
|
日笠 |
でも、悩みはあるんですよ、あの人にも。 |
糸井 |
そういうのもあるよね。
いや、そうだろうとは思うけどね、
僕、悩みを持っているのはイヤだから
解決したいっていうか、
問題解決型なのよね。 |
日笠 |
だって人のことをすごくわかるじゃないですか。
こうすればいいな、ピッて。 |
糸井 |
うん、解決したくなるんですよね。
でも、それはねえ‥‥それはそれで、
まんざらいいことばっかりとも言えないよね。 |
日笠 |
糸井さんは、例えばコピーライターのときも
そうだったけど、
世界を客観的に俯瞰的に見て、
あとは何でも面白がれるじゃないですか。 |
糸井 |
そうかー。 |
日笠 |
ね。何でも面白がれて、
何でも遊びにする力があって、
それを意地悪な気持ちとか難しい気持ちじゃなく、
社会を「うーん?」って楽しみながら
客観的に俯瞰的に見てて、
「あ、こことここ結んだらこうだ」とか
「あ、これはこうだ。今流れはこうだし、
あ、これはこうだな」って
的絞ってピッていうことが。
その才能が天から与えられているから、
そういうお仕事もできてきたし、
今もいろんなことができるし、
ひとりずつの人に的確なアドバイスが
できるわけじゃないですか。 |
糸井 |
それはだってもう、マーコが言った、
木が倒れててそこから何かを見るのと
同じことですからね。 |
日笠 |
うん。だから、木が倒れてるって
いち早く発見できる人ですよ。 |
糸井 |
ああ‥‥ |
日笠 |
で、「あの木をこうすればいいんじゃないか。
この人はこうだ。これはどうだ」ってことも
同時にわかっちゃうタイプ。 |
糸井 |
で、年取ってから、倒れたまんまっていうのが
アリだとかね、わかるようになると
また選択肢が増える。
「結局、僕は何も1年しなかったな」と言っても、
「しなかっただけじゃないんだよ」
みたいなことを言えるようになったですね。 |
日笠 |
うん。してることっていうのは
すごくやっぱりみんな多いわけで、
別に肩書きでその職業とかってだけじゃなくて、
本当に微笑みがきれいな人っていうのは、
ただ何もしなくて笑ってるだけで、
「ああ、この微笑みステキ」
と思って人を温めてるかもわかんないし、
例えばその人が入っていくと
会議中ピリピリしてても場が和むとか、
無自覚の役割っていうのも
やっぱりあると思うんですよね。
だから、その無自覚な役割、お役目というか。 |
糸井 |
うん‥‥。細野さんがいいなあ。
細野さん、本当になんか、いいなあ。 |
日笠 |
なりたいですか。 |
糸井 |
‥‥改めて聞かれると(笑)。
例えば、永ちゃんになりたいですかって、
まずなりたくないですよね。
大変だし、一般的にああいうガキ大将系の
強い子型の人にはなりたくないなって。 |
日笠 |
ああ、それはそうですね。
それはなりたくない。大変だもん。 |
|
(つづきます。) |
2007-04-11-WED |