第8回 エレキ合戦。
今日、清順さんが教えてくださった
キーワードのひとつは、まず
若者はお金がないということです。
でも、やる気がある若者はいっぱいいる。
細川さんのビジョンで、
モデルケースをいっぱい作れば
「日本列島暮らし直し」という
おもしろいことがはじまる予感がします。

細川 そうできたら楽しいですね。
糸井 緑の話って、見えやすいだけに、
掘らないで進んでしまう、ということが
あり得ますから、
そこは注意したいところですね。
善意で集まってくる人の希望も、
とても大きく、厚いんです。
それがいい形になるといいと思います。
糸井 でも、今日お話していて、
土の下の「根っこ」のほうが
深いんじゃないかな、という気がしました。
細川 まさにそうですね。
糸井 「長城」といわれるよりは、
ブロックごとに、
そこに住む人たちの幸せ感のようなものが
表現されているといいんでしょうね。
細川 いま「森の長城プロジェクト」という
名前にしていますけれども、ほんとうは、
「長城」というイメージは
あんまり合ってないですね。

糸井 はい(笑)。
細川 わかりやすくするためにこうしていますが、
実際にはやっぱり、そんなになりっこない。
むしろ、前にも言ったように、
デコボコになったほうがいいんです。
さっきの岸先生のお話のように、
山から水が流れてきても海に出ていきやすいし、
海から来た水も、デコボコになっているほうが
ブロックしやすい。
まあ、どうせ
現実的にはデコボコにしかならない。
それでちょうどいいんですよ。
清順 はははは。
糸井 これ、読んでる人は
「おもしろい」と思ってくれるかもしれないけど
手伝おうと思ったら、いまのところ
植栽の苗を買うことしかできないですね。
それではちょっとつまらないように思うんですが、
何かほかにないかなぁ。
細川 植栽に参加していただくというのもありますよ。
やっぱりモデル地域ですよ。
おもしろい若者を集めて、
モデル地域を作りましょう。
糸井 うん、モデル地域ですね。
場所をある程度確定してやっていく。
清順くん、もしそういうお話があれば、
やってくれる?

清順 もちろん。場所があれば。
糸井 ぼくらは、
このプロジェクトから
枝として発生したか、
根っことして潜るか、
それはわからないけど、
「こういうのじゃないの?」
というのをやってみたい。
そういうことで、また声をかけあいましょう。
細川 はい。ぜひよろしくお願いします。
とにかく1kmなら1km、
500mなら500mでもいいですけど、
そういうモデル的な場所が決まると、
わかりやすいから
非常に仕事がやりやすくなります。
それが見えないと、いちいちはじめから
説明しなくてはならない。
声をかけるのも難しい。
清順 そうなんですよね。
ぼくも人前で講演させていただくことが
ちょっとあるんですけれども、そのときに
気をつけなあかんと
思っていることがあります。
それは「森を大切にしましょう」と言いすぎない、
ということです。
若者の耳が聞き慣れすぎている言葉だから
「ああ、そっち系か」とすぐ思ってしまう。
そうじゃなくて、
「こんな楽しいことあるよ」
「糸井重里さんに会えるよ」
とか、変な話なんですけどもね(笑)、
そういうことを伝えあうほうがいいです。
もちろんみんな、森林を大切に思ってて
大好きで、学んでいたりするんだけれども、
そういう難しい話じゃなくていい。

そういうことを考えてない人たちも、
実際に足を運んだらたのしくて、
何かに気づいたり、お金を落としたり、
気持ちを交流させて帰ったりする。
そういう仕掛けができたら
すばらしいのではないでしょうか。
それは復興という意味で発展すると思うんです。

糸井 こんもりした緑地が
人を巻き込んでいく、
そこからも発信できる。
そこをすごく個性的に、やってみる。
おもしろいと思います。
清順 現代版の、ほんまに、1000年の森。
鎮守の森ですね。
それは、人が足運ぶ理由になります。
足運ぶ理由って、ほんとに
ひとつでも多いほうがいいと思います。
細川 うん。いい感じだと思います。
糸井 国がインフラとして
開発するという場所は、すでにあります。
しかしぼくらはぼくらなりに、できることを、
ちいさなポイントで手伝っていくと決めたら
あかるくやれる気がします。
清順 いや、なんか、そんなん、すごくいいな。
ほんとに糸井さんらしいと思う。
ぜひやっていただきたいです(笑)。
細川 そうですね。
糸井さんが動かれると、たくさんの人が動きます。

清順 やっぱりそれはね、逆に言ったら、
乗らない手はないと思うんですよ。
いやいや、ぼくはべつに何か、
思惑があるわけじゃなくって、
ほんとにこれは、そうです。
糸井 いわば、点の発想。
モデルが点々にできていって、
それに憧れる視線が次の行動を起こす。
細川 そうなるといいですね。
糸井 つながらなくてもいいから、
星座をつなげるみたいに。
清順 そう。心がつながったらべつに
物理的にベルトになってなくてもいいと思う。
糸井 ぼくら、若いときに
「エレキ合戦」ってありましたね。
はい、はい。
糸井 ぼくにはあのイメージがいつもあります。
みんなばかで、
音楽の授業も出てないのに、
エレキギターを買ってやりはじめました。
あれがいまの音楽を決めたんだと思います。

文化祭なんか「エレキ出たがり」で
いっぱいでした。
糸井 文化祭がエレキ合戦だった(笑)。
みんなベンチャーズですよね。
糸井 そうそう、みんなベンチャーズ。
細川 私はもう卒業してた頃ですね。
清順 ぼくはわからない時代だなぁ(笑)。
テカ、テカ、テカ、テカ♪
チャカチャカチャカチャ‥‥‥‥‥‥♪
糸井 つまり、
「楽譜が読めないけど音楽は楽しめる」
という人たちが増えた。
それが何になったかといえば、
「聴き手」になったんです。
清順 なるほど。

糸井 たぶん、そのイメージです。
なんだか、世の中、そういう方向に
動いていると思います。
センスのいい企業がそっちを追ってる。
そういう動きをぼくがちょっと
大きく信頼しているだけのことかも
しれないけど‥‥。
何が気持ちよくて、何がためになるか。
それが基本の基本であって
これまでの時代にカッコつけてやっていたこととは
なにか全然違う展開という感じがする。
糸井 そう。
「目標を何%にして、達成しなくてはいけない」
というのではないんだよなぁ。
清順 そうですね。
ぼくはデパートの仕事をさせていただいたり
しているんですけれども、
進んだ考えのデパートは、
一坪でどれだけの売上があるか、という
考えではもはやありません。
売上の大事なそのひと坪に、
それこそぼくに頼んで木を植えたりしています。
気分が、そうなってきたんだよね。
無理してカッコつけてるんじゃなくて、
ほんとに気持ちのいいことというのは、
そうじゃないって、わかってきたんだ。

清順 そうですね。むしろ、効率がいいと
思ったんでしょう。
たぶん、判断しているんです。
糸井 昔の人が宗教に払っていたコストを
そういうところに
持っていっているのかもしれませんね。
そうですね。
お葬式なんか、最近はほんとうに
簡略化していますから、
そんなお金が、別の気持ちのいい
おもしろい分野に
あっけらかんと流れはじめていい。
従来の常識とはバランスが
取れなくなってきているのかもしれない。
糸井 お祭りとか、お寺さんに
昔はお金も気持ちも使っていましたからね。
それは緑化とか、ピタッとくると思う。
清順 そうなってきています。
糸井 ぼくも、なんでこんなことするのか
わかんないんだけど、
おもしろいと思うんだよ。

清順 すばらしいと思います。
糸井 お二方とも、お声をおかけすれば
お会いできますか?
もちろんです。
清順 はい。
糸井 細川さんも?
細川 いつでも。
ありがとうございました。
ほんとうに。
糸井 ありがとうございました。
これから、よろしくお願いします。
  (この4人の座談会は、ひとまずこれで終わります。
 いつか、この次の動きがあることでしょう。
 たのしみにしていてください)
2012-10-03-WED
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