気仙沼ニッティング、
という存在。
とても大切なできごと。
それが東北の気仙沼に編みものの会社
「気仙沼ニッティング」をつくるプロジェクトです。
気仙沼のおかみさんたちが編んだセーターを売る。
それには、心からほしいと思える
ニットでなければいけないと、
三國さんにデザインをお願いをしました。
ほぼ日でMiknitsが生まれる、
その前段階として
「気仙沼ニッティング」の仕事がありました。
気仙沼のおかみさんたちが編み手となって
最高のフィッシャーマンズセーターを届ける、
編みものの会社をつくるプロジェクトが
動きはじめたのが2011年の6月ごろ。
デザインの力が重要になるプロジェクトだと
糸井さんもおっしゃっていて、
早い段階で三國さんに協力の依頼をしました。
「原点に触れておいたほうがいいだろう」
という糸井さんの発案から、
かつて編みもの産業で栄えていた
アイルランドのアラン諸島に行くことになりました。
そこから気仙沼でワークショップをして、編み手を募って……
スタートした当初は、編み手さんとのコミュニケーションや
働いてもらううえでチームになる難しさを感じるなど
つまずくこともたくさんありました。
課題も多く、忙しいなかで三國さんがつくりあげてくださった
「MM01」は今でも名作だと思っています。
作品を見せていただいたとき、
涙がポロポロこぼれました。
ニットのデザインを依頼されて、
わたしにできるのは
依頼主の側の理想を想像することくらいなんです。
「オーセンティック」というキーワードは
いただいていたんですが、
デザインって言葉で語れるものではなく
「これだ」と思うものを編んで、渡すしかない。
完成したニットをお見せしたときにようやく、
どうやらこれでよかったらしい、ということがわかった。
長い旅の末の一枚でしたし、
ずいぶんホッとしたことを覚えています。
デザインはもちろんのこと、
わたしは糸にも感動しました。
柄がはっきり出て、着心地も気持ちよくて、
AVRILさんにつくってもらった糸は
三國さんのすばらしいデザインのために
ぜったい必要だったんだと思いました。
震災があったあと、いろんなアイデアが社内で出ました。
その中にツリーハウスや写真館があったのですが、
気仙沼ニッティングは
「できたらすごい」と思っていました。
全部がうまくいったわけじゃないですが、
アイデアと実際に手を動かす人たちと、
いろんなことがうまく組み合わさった
プロジェクトだったと思います。
三國さんがほぼ日手帳のカバー用に
デザインしてくださった
「フェアアイル」と「エストニアンニット」を
モチーフにして、手袋キットを販売したのが
Miknitsがうまれたきっかけだと思います。
キットをつくったきっかけは、
三國さんからいただいた指定糸。
「『きょうの編みもの』の
フェアアイルのベストを編む予定です」
と三國さんにお話したら、
「よかったら、指定糸を送ります」と
ジェイミソンズの糸をわざわざ送ってくださったんです。
当時は糸の違いをよくわかっていなかったのですが、
編んでみたらできあがりがとてもきれいで。
指定糸で編む大切さを、実感しました。
わたしと同じように、
この驚きを体感してもらいたいと思い、
指定糸と編み図をセットにしたキットを販売しました。
わたしもみちこさんと同様に、
指定糸以外でもよく編むんです。
でも、指定の糸でないとうまくいかないかもしれない、
というニットもたしかにある。
一番最初の手袋のキットのときには
本当に必要としている人はいるのだろうか‥‥と
不安に思うところもありましたが、
「瞬時に売り切れました」という知らせを
もらったときは、
飛び上がるほどうれしかったです。
2024-03-27-WED
2024年2月29日株式会社アヴリルは廃業を発表しました。 これまで長きにわたり、大変お世話になりました。