第4回時間と労力をかけた前フリ。
- ──
- 初めてつくられたのが‥‥
- 光浦
- このブタですね。
- ──
- ああ!本の中のエッセイで
極楽とんぼの加藤さんに「こわい」と
言われていた、あのブローチですね(笑)
- 光浦
- そうです、そうです。
初めてこのブタをつくったときに、
「なかなか素敵じゃね?」と思って
帽子につけて飲みにいったんです。
そしたらばったり加藤さんに会って
一緒に飲んでいたら急に、
「それ、手づくりって?」怪訝そうに。
- ──
- はい(笑)
- 光浦
- そうですって答えたら、
「こわい、こわい。」って言われて。
初めての反応がそれでした。
- ──
- その反応は悲しかったですか?
- 光浦
- いや、嫌がられてるじゃんって
おもしろくなっちゃって。
でも逆にその反応をもらえて
「これは結構いけるぞ」と思いました。
それでどんどんつくりはじめて、
作品が集まってきたので
何か形にしたいなと思って、本にしようと。
- ──
- ブローチづくりをはじめて、
どれくらいになられますか?
- 光浦
- もう10年くらいになります。
- ──
- ブローチのクオリティが
どんどん高くなっている気がします。
- 光浦
- ありがとうございます。
これが3冊目に掲載したもので、
人の顔もつくるようになりました。
- ──
- これは‥‥。
すごすぎて何にも言えない‥‥。
- 光浦
- 人の顔や単色の動物のほうが、
つくるのはむずかしいんです。
- ──
- そうなんですね。
- 光浦
- 絵の具みたいに色を混ぜられないので
絶妙なカラーリングがつくれなくて。
色の濃淡がないので凹凸を表現できず、
なかなか似せられないです。
たとえば、細かいシワで凹凸を表現するときは
茶色が汚れにみえることもあるので。
- ──
- 作品をつくるときは、
1からデザインを考えられるんですか。
- 光浦
- 絵は描かないです。
「キリンをつくろう~」くらいだけ考えて、
あとは写真をみながら。
- ──
- つくりたいキリンを頭の中にイメージして
チクチクと刺しはじめるんですね。
- 光浦
- これはキリンのネクタイなんですけど、
商品化されるかな? って期待したのに
全く世間がくいつかなかった(笑)
- ──
- 一般の方には身につける難易度が
高かったんですかね?(笑)
- 光浦
- そうですね。
むずかしいですね(笑)
- ──
- どの作品がお気に入りですか?
- 光浦
- つくった作品は、
まあ、全部お気に入りですかね。
- ──
- そもそも、ブローチをつくり始めたきっかけは?
- 光浦
- 手芸は30年以上やっていて、
普段から手芸店にはよく行っていたんです。
- ──
- オカダヤとかユザワヤとかですか。
- 光浦
- そうです。ある日お店に行ったときに、
たしかクマの人形が飾ってあったんです。
素材はフェルトなのに
縫い目がないから驚いていたら、
「これはニードルフェルトですよ」って
店員さんが教えてくれたのがきっかけです。
そしたら1つ目が意外にうまくできて、
どんどんとハマっていきました。
- ──
- 3冊目の新刊をつくるのに、
だいたいどれくらい時間がかかったんですか?
- 光浦
- 3冊目は約3年ですね。
- ──
- 3年! それは長いですね。
- 光浦
- やっと作品の数が揃ってきたので、
前フリができるなと。
- ──
- 前フリ、ですか?
- 光浦
- このブローチたちは、
とってもとっても時間と労力をかけた前フリです。
この前フリがしっかりしているほど、
おもしろくなるんですよ。
- ──
- そうなんですね。
- 光浦
- 人様にみせて
笑ってください、
楽しんでくださいって、
やっと言えるんです。
- ──
- それは光浦さんの中で
やりたかったことなんですね。
- 光浦
- そうです、
おもしろいものがいいですねぇ。
- ──
- そうか、
ブローチは笑ってもらうきっかけなんですね。
- 光浦
- ブローチという前フリが用意できたので、
今回、やっとやりたかったことができるんです。
音声で遊びたいなって。
- ──
- 音声で遊ぶ?
- 光浦
- たとえば、歌やコントや‥‥
TOBICHIでは作品をみながら聞いてたのしめる
ラジオコントみたいなものをつくっています。
- ──
- えっ!ラジオコントですか!