MOOMIN LOVE
重松清×『ダ・ヴィンチ』横里隆+「ほぼ日」武井 おじさん3人、ムーミンを語る。

第2回  グッズも原作も大好き。

    重松 あのね、自分がいかにさ、
ムーミン好きかっていうのを見せてあげるよ。
仕事場にさ、2つパソコン持ってるんだけど、
そのマウスパッドがね‥‥。
   
       
    武井 はい。おーっ。
   
ニョロニョロ  the Hattifatteners
白くひょろりとした体に
短い手がついた
不思議な物言わぬ生き物。
種から生えてきて、
いつも群れで行動している。
雷の電気がエネルギー源で、
さわると感電する。
(ムーミン公式サイトより)
     
  横里 おーっ。ミイだー。
もう一枚は、ニョロニョロ!
   
  武井 もうこれ、使い込んだ跡が。
   
    重松 でしょ。ほんと使ってる感じ、するでしょ。
これがねー。
   
    横里 うーん、ほんとだー。
   
    武井 フィンランドで買ってきたんですか?
 
はい! フィンランドと
北欧各国で出ている
ムーミングッズが揃っています。
食べ物やシャンプーなどは
スーパーにもあるので、
このショップにはありません。
スーパー探検の折にぜひ
ムーミンガムやミイケチャップなどなど、
見つけてみてはいかがでしょうか。
    重松 うん、これ、ヘルシンキで買ってきた。
 
    武井 ヘルシンキに
ムーミンショップがあるんですよね。
 
    重松 デザイン的にかっこいいんだよね。
 
    武井 じゃあ僕のマウスパッドも、見てください。
 
    重松 何、武井さんもそうなの?
 
    横里 え、ムーミン?
 
    武井 僕のはシブいですよ。
   
    重松 あっ!
   
    武井 ムーミンやしきです。
   
       
    重松 これも持ってる!(笑)
設計図だよね。
   
    武井 お持ちでしたか。
   
    横里 へぇー、かっこいいー。
じゃ、僕も。
いつもこの鞄に、
スナフキンをつけてるんです。
   
えーえーえー、私も加わりたい!
     
    重松 あっ、ほんとだ(笑)!
何、何、もう、みんな、
そのへん(グッズ)から
来てるんだ、もうー。
   
    横里 ぼろぼろになっちゃって。
フィンランドのお土産に貰ったんです。
あと、これ、武井さんから
フィンランドのお土産で貰ったスナフキンの絵。
   
     
フィンランドのお土産に
ムーミングッズはぴったり。
でも男性にはあれかなと、
いつも躊躇してました。
だからフィンランドの方が
日本の取引先の方にと
ムーミンネクタイを購入されるたびに
ハラハラしてたんです
(それはなかろう、と)。
ムーミン、男性にもいけますね!
    武井 たぶん原画のリプロダクトなんですが、
かわいいですよね。
 
    横里 かわいい、かわいい。
 
それではこの辺りで私のムーミングッズ。
トーベ・ヤンソンが『ガルム』誌の
1951年クリスマス号に描いた
ファッツェル社(お菓子のメーカー)の
広告です。 限定400個よ!
アラビアのムーミンマグは
世界中のムーミングッズの中で
最も売れている商品です。
フィンランドにも熱烈な
ムーミンマグコレクターが
かなりいる模様。
  重松 この絵いいね、うーん。
不思議なんだけど、みんな、
単に好きだっていうだけじゃなくて、
こうして身の回りに置いてるんだね(笑)。
 
  武井 置きますね!
アラビアのカップはいかがですか?
 
  重松 俺はね、たぶん、
現行のアラビアのマグカップ、
全て持ってると思うよ。
ほんとに集めてさ、
いちばん人気があって、
「在庫なし」だったのがね、
ミイなんですよ。
   
     
    横里 へえー。
   
    武井 おー、ミイが、意外!
   
    重松 ミイがね、斜面を滑り落ちるような
絵柄のマグカップ、
それだけが、いっつも、なくてね。
イッタラやアラビアを集めてる雑貨屋に
リクエストを出して、やっと手に入ったんだ。
そうなんだよ、ムーミンって、
心の中で、少年時代の思い出として好きだった、
っていうんじゃなくて、
今、まさに、現役で好きなんだよ。
 
フィンランドではムーミングッズって
ムーミンのアニメを見て育った世代と
一緒に育ってるんです。
彼らがいま成人してるから
ムーミングッズも大人の暮らしや
大人のテイストに合わせたものが
増えました。
    武井 現役で好きです。
そういうものって、結構珍しいですね。
 

 

  横里 だから身の回りに置いてるんですね。
 
    重松 マウスパッドをミイにするとね、
小説に対して、ちょっと厳しい目が(笑)、
「あんた、またきれいごと書いて!」
とか言われちゃうんだよ。
   
    横里 (笑)いいなあ。
   
    武井 ニョロニョロのマウスパッドとは、
気分で変えてるんですか。
   
    重松 そう、ニョロニョロはあまり反応がないから
寂しいな、とかさ(笑)。
いや、でもほんとね、
傍に置きたくなるんだよね。
つまり(横里さんのかばんを指し)、
スナフキンと共に君はいるわけだ。
   
    横里 そうです、いつもこれで歩いてます!    
    武井 原作も読みますか?
   
    横里 うん、むかし読みましたよ。
   
    武井 僕はなんども読み返した文庫版が
ぼろぼろになったので、
最近、単行本を買い揃えました。
読まないかもしれないけど、
置いておきたくて、
   
    横里 ハードカバーの方?
 
book
『ムーミン童話全集』
(講談社刊)
    重松 ボックスセットでしょ。
 
    武井 そうです! ボックスセット。
 
    重松 俺、それ持ってる。
文庫で読んでてもね、
年取るとさ、
字がおっきな方が楽になるんだよね。
 
    横里 おっしゃる通り。
 
    武井 原作でお好きなエピソードとかありますか?
   
book
『ムーミン谷の彗星』
(講談社刊)
  重松 彗星の話があったじゃないですか。
   
  横里 あー、はい、はい、はい!
   
  武井 『ムーミン谷の彗星』
彗星が来るっていって大騒ぎになる。
 
   
28
▲第28話「浮かぶばけもの屋敷」 
    重松 あと、洪水の話。
 
    横里 『ムーミン谷の夏まつり』
 
23
▲第23話「ムーミン谷の冬の住人」
   
  重松 それからさ、冬眠中に
1人だけムーミンが起きちゃった話。
 

22
▲第22話「ムーミンとミイの大冒険」

     
  武井 『ムーミン谷の冬』
 
book
『ムーミン谷の冬』
(講談社刊)
   

 

  重松 で、あと、夏の終わりにさ、
ムーミンパパがみんなを連れて
島に行っちゃう話があるじゃない、
   
  武井 『ムーミンパパ海へいく』ですね。
 
アニメのムーミンも
とても美しいフィンランド語が
使われていて、
繊細な感情を言葉といっしょに
伝えてくれると評判です。
子供や孫に見せたいと
大人が積極的なだけでなく、
子供も夢中になっているのは、
そうか、そこに子供たち自身の
気持ちがあるからなんでしょうね。
  重松 原作を読むと、
不安だったり、不気味だったり、
少年たちが怖いと思うものが
結構入ってるんですよね。
子ども心の不安なところとか心配事を、
ムーミンが、結構背負ってくれてるんだよね。
 
  横里 単なるユートピアじゃないですもんね。
何回も世界の滅亡とか洪水とか、
そういうものに出くわします。
 
  武井 「飛行オニ」が現れるとか
『たのしいムーミン一家』)。
  001
▲第1話「ムーミン谷の春」 
   
002
▲第2話「魔法の帽子」
  重松 あと、モランだっけ。
 
モラン the Groke
歩いたあとは凍り、
座ったあとは草花も生えない場所になる、
孤独な冷たい大きな魔物。
灯やたき火など人が集まる
あたたかいところへ近づきたがる。
みんなに恐れられているが、
その心のさびしさを
ムーミンやミイはわかっている。
(ムーミン公式サイトより)
     
    武井 冬の魔物!
 
    重松 みんなから嫌われちゃってさ、
この人が座ると凍りついちゃうみたいな。
でもムーミンだけが友だちになって。
 
    武井 近づいていくんですよね。
   
    重松 みんなさ‥‥みんな、
寂しそうなんだよ。
   
    横里 そうですね。
   
    重松 全体的に。
   
ムーミンママ Moominmamma
いつも赤と白の縞のエプロンをつけ、
黒いハンドバッグを持っている。
このハンドバッグには
みんなの世話をやくために
必要なものが何でも入っている。
ムーミン屋敷をみんなに開放し、
訪れる者をわけへだてなく
温かくもてなす、まさに
「みんなのママ」。
(ムーミン公式サイトより)


  武井 パパはパパで孤独を抱えてるし、
ママはママで、何か1回、島に行ったときに
ママがやることがなくなって、
ちょっとノイローゼ気味になっちゃったり。
   
  重松 そうそう、そうなんだよね。
   
  武井 そして絵を描きだすんですよね。
   
  重松 そう、絵を描く。
そしてその絵に飲み込まれちゃうんだよね。
   
  武井 そうそうそうそう。
そうか、みんな寂しさを抱えて。
 
この前ムーミンを読みながら
目に飛び込んできた言葉が
“寂しさ”でした。
寂しさをムーミンの世界では
「幸せ」ととらえてるんですね。
スナフキンを通じて
しっかり言葉にしていて、
「すごいなぁ、いいな」
と思ってたところでした。
  横里 寂しい。
寂しくて、いい。
 
  重松 でね、ひとりぼっちの寂しさじゃない
寂しさってあると思うんだ。
つまり仲間はちゃんといてさ、
孤独感じゃないんだけど、
何か、そういう寂しさってあるんだよ。
それが、大人になってからの方が染みるんだよ。
 


2011-12-27-TUE

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