続・『MOTHER』とカミサン
ご夫婦でいっしょに『MOTHER』を
プレイするというのは、どういった感じで?
- 太田
- そうですねえ。まあ、そのときは
まだ結婚してなかったんですけどね。
要するにふたりで交代で
コントローラーを持つんです。
で、1時間くらいすると交代するんですけど、
やらないほうはずっとそれを見ているという。
見てるっていっても、ほんとに、
いっしょに参加してる感じで。
「あ、いま、あのアイテム使ったほうがいいよ」
とかって言いながらやるんですけど。
そのときに、たとえば、
男のセリフはぜんぶ僕が声に出して読んだり。
カミサンは女のセリフを声に出して読んで。
- 糸井
- へーーーーっ!!
- 太田
- なんか、自分たちも芝居しながら(笑)。
- 糸井
- はっはっはっは!
それは、ちょっとすごいっすね(笑)。
- 太田
- だから、すーごく、疲れるんですけど(笑)。
でも、夢中ですからね、もう。
いかにうまくセリフを言うかとかね。
そういう感じで、お互い盛り上げながら。
「この街、すごいねえ」とか言い合って。
やっぱりはじめてのRPGだったから、
ふたりともいろいろと衝撃を受けていて、
そういうときって、
すぐ誰かに伝えたいじゃないですか。
- 糸井
- わかる、わかる。
- 太田
- で、その相手がすぐ隣にいるわけだから。
感動をお互いに伝え合いながら。
なおかつ僕らの場合は、つき合い始めなんで、
ふたりの関係も新鮮で。
だから、ぜんぶ新鮮だったですね。
- 糸井
- 最高だよね(笑)。
ほんと、新婚旅行じゃない?
プレイしながらベタベタしてるわけだよね。
ぼくも、そんなふうにやってくれたら、
最高だろうなと思ってつくってたわけだけど、
それは、親子でやってくれるといいな、
って思ってたんですよね。
- 太田
- あー(笑)。
- 糸井
- 夫婦っていうのは、思い浮かばなかった(笑)。
それは、どこでやってるの?
- 太田
- カミサンの家なんですけど、
僕がそこに転がり込んだようなかたちで。
だから、いっしょに暮らしはじめて
1ヶ月とかの時期だったと思いますけど。
- 糸井
- それは、最高(笑)。
あるレコードをいっしょに聴いたよな、
みたいな感じだよね。
- 太田
- そうそうそう。おぼえてるのは、
そのときに鳥を飼ってたんですよ。
わりとよくしゃべる鳥だったんですけど。
で、『MOTHER』って
歌を集めるじゃないですか。
だから、その歌を、鳥におぼえさせて、
「♪ピピピピピ~」って、
歌えましたから、うちの鳥は。
へーーー(笑)!
ますますつくった話みたいですねえ。
- 糸井
- つき合いはじめのふたりがいっしょに
『MOTHER』を交代でプレイして、
その後ろで鳥が歌ってるわけ?
それ、誰かにぼくが話したら
ウソだって言われるよ(笑)。
- 太田
- あと、最初の『MOTHER』は、
1回も電源切ってないんですよ。
最初から最後までぶっ続けでやりましたから。
- 糸井
- はっはっはっは!
- 太田
- 最後の戦闘はすごかったですよ。
倒しかたがぜんぜんわからなくて。
もう、完璧な装備で臨んだんですよ、戦闘に。
ところがぜんっぜん倒せない。
けっきょく3時間ぐらい戦ったんですよ。
死闘!
- 太田
- ええ、もうほんっとに死闘。
- 糸井
- 倒せなくても、自分が3時間死なないだけの
重装備をしてたわけね(笑)。
- 太田
- そうそう。それでね、
すでに徹夜してるわけじゃないですか。
だから途中でね、気を失ったんですよ。
- 糸井
- うはははははは!
電源切ってないんですもんね(笑)。
- 太田
- だから、眠ったというか、気を失ってて。
うちのカミサンはもう、ひとりで、
ほんっとに、死闘してて。
で、もう、その重装備が
とうとう尽きるっていうときに、
「これもうダメだ!」っていうときに、
倒しかたに気づいたんですよ。
そこでぼくは「ねえねえ!」って起こされて。
おお(笑)。
- 太田
- で、もう、アイテムとかもなくなってるから、
ギリギリで負けるかもしれないっていう状態で、
そこから「あとちょっと」って感じで
ほんっと、瀬戸際のところで倒したんですよ。
だから、ものすごい感動でしたよ。
「はぁ~っ!」っていう達成感と、
気がついてほんとによかったね、みたいに。
- 糸井
- 「俺とおまえがいれば!」
みたいな感じになるよねえ。
なんでもできるような気がするっていう。
つくり手にとっては夢の世界だね(笑)。
- 太田
- そうですねえ(笑)。
だから、ゲームとぼくらのタイミングが
ほんとにうまく合ったんですよね。
- 糸井
- あり得ない(笑)。
でもね、そういう話をたまに聞くんですよ。
たとえば、たまたまなにかで地方に行ったとき
「こうだったんです!」って聞いたりね。
最近になってメールがたくさん来たり。
だから、その、日本中に、
自分がつくったものが伝わってる感じって、
それまで持ってなかったんですよ。
つまり、誰かが、どこかで、
「あんたがやったことは、
私に影響を与えたんだよ」
っていうふうに言ってくれるわけで、
それはものすごくうれしいですよね。
なんか、たかだか数千円のソフトがさ、
その人にそんなに大きく影響してるなんて。
- 太田
- すごいですよね。
- 糸井
- だから、『MOTHER』への関わりかたを
聞くだけで、その人の性格や人間性なんかが
わかったりするじゃないですか。
そんなふうになると思ってなかったもんね。
- 太田
- うちの場合も、『MOTHER』によって
「あ、合うな」っていうのを確認しましたから。
- 糸井
- (笑)
- 太田
- 自分がこんなに楽しめるゲームを、
ふたりでいっしょに楽しめるって思ったら、
「あ、この人とは合うな」って感じますよね。
だから、お互いに確認し合った感じですね、
『MOTHER』というゲームで。
- 糸井
- そういう感覚を共有できるのは、
うれしいよねえ。
- 太田
- そうですよねー。