作家の川上弘美さんは
『MOTHER2』を何回となくやったファンで、
『MOTHER2』をつくった糸井重里は
川上弘美さんの小説やエッセイのファンで、
ゲームを切り口にいろんな話が盛り上がりました。
前回大好評いただきました
「男女が同居するということ。」に続き、
ふたりの放談をたっぷりお届けします。
『MOTHER』ファンも、そうでない人も、
ごいっしょにその場にいる気分で、
ほんわりとお読みくださいませ、なんですよねー。
そうそう。

第2回

看板と電線

糸井
あまりゲームはしないという川上さんが
『MOTHER2』を
何度もプレイされているというのは
何か理由が思い当たりますか?
川上
なんでしょうね。
なぜか、くり返しやっているのが
『MOTHER2』と
『I.Qファイナル』なんですよ。
『I.Qファイナル』って、ご存知ですか?
糸井
パズルゲームでしたっけ?
川上
そうです。
佐藤雅彦さんがつくったゲームなんですけど。
糸井
あ、あれか!
ああ、思えば、両方とも
広告屋がつくったゲームですよね(笑)。
川上
ね。それが不思議だなと思って(笑)。
『I.Qファイナル』もね、
もちろんパズル自体が楽しいというのは
あるんですけど、
『MOTHER2』と同じで
やっぱり細部がいいんですよ。
マッチ棒でできたような
なんでもない「人」が出てくるんですけど、
それがいいんですよね。
たとえば『MOTHER2』も
建物の感じとか、街の感じとか、
本筋とは関係ないところで
すごくいいところがありますよね。
さっきおっしゃっていた
プレイヤーのストレスを
軽くするようなものだと思うんですけど。
糸井
あの、ゲームって、記号を並べるだけなんで、
下手をすると、
それこそ設計図の上を歩くみたいな、
味けのない世界になるんですけど。
川上
ああ、そうですね。
糸井
そこにどこまで情報を付加できるかっていう、
加減がけっこうむつかしくて、
同時におもしろいところなんですよ。
たとえば背景の絵を描いてるときに、
絵を描いてる人が発見をするんですね。
「なんでこの街、
死んでるように見えるんだろう?」って。
で、いろいろ話しあっていくと、
「看板がないからだ」って気づくんです。
それで、とくに『MOTHER2』は、
メッチャクチャに看板が多いんですよ。
川上
そういえば、そうかもしれない。
あれで街の全貌がパッと
見えちゃいますもんね。
糸井
看板がないと、街が生きないんですよ。
川上
ふーん。それ、不思議ですねえ。
糸井
不思議(笑)。
川上
看板で思い出したんですけど、
糸井さんは、実生活で、
「電線」っていかがですか?
糸井
「電線」ですか?
川上
ゲームと関係ないんですけど、
「電線」って、すごく嫌がってる人と、
そうでもない人がいて、
二通りに分かれてるんじゃないかと思って。
糸井
川上さん、嫌じゃないでしょ?
川上
私、平気です。
糸井
でしょ? そこは体質なんだと思うんだけど。
川上
体質なのかなぁ?
糸井
うん。その体質は共感できるんですよ、ぼく。
だから、川上さんの書くものが
ぜんぶ納得できるんですよ。
川上
(笑)
糸井
ぼくは、川上さんの作品を読んでるときには
女になってるんですよ。
川上
そうなんですか(笑)。

(続きます!)

2003-08-05-TUE