看板と電線
- 糸井
- あまりゲームはしないという川上さんが
『MOTHER2』を
何度もプレイされているというのは
何か理由が思い当たりますか?
- 川上
- なんでしょうね。
なぜか、くり返しやっているのが
『MOTHER2』と
『I.Qファイナル』なんですよ。
『I.Qファイナル』って、ご存知ですか?
- 糸井
- パズルゲームでしたっけ?
- 川上
- そうです。
佐藤雅彦さんがつくったゲームなんですけど。
- 糸井
- あ、あれか!
ああ、思えば、両方とも
広告屋がつくったゲームですよね(笑)。
- 川上
- ね。それが不思議だなと思って(笑)。
『I.Qファイナル』もね、
もちろんパズル自体が楽しいというのは
あるんですけど、
『MOTHER2』と同じで
やっぱり細部がいいんですよ。
マッチ棒でできたような
なんでもない「人」が出てくるんですけど、
それがいいんですよね。
たとえば『MOTHER2』も
建物の感じとか、街の感じとか、
本筋とは関係ないところで
すごくいいところがありますよね。
さっきおっしゃっていた
プレイヤーのストレスを
軽くするようなものだと思うんですけど。
- 糸井
- あの、ゲームって、記号を並べるだけなんで、
下手をすると、
それこそ設計図の上を歩くみたいな、
味けのない世界になるんですけど。
- 川上
- ああ、そうですね。
- 糸井
- そこにどこまで情報を付加できるかっていう、
加減がけっこうむつかしくて、
同時におもしろいところなんですよ。
たとえば背景の絵を描いてるときに、
絵を描いてる人が発見をするんですね。
「なんでこの街、
死んでるように見えるんだろう?」って。
で、いろいろ話しあっていくと、
「看板がないからだ」って気づくんです。
それで、とくに『MOTHER2』は、
メッチャクチャに看板が多いんですよ。
- 川上
- そういえば、そうかもしれない。
あれで街の全貌がパッと
見えちゃいますもんね。
- 糸井
- 看板がないと、街が生きないんですよ。
- 川上
- ふーん。それ、不思議ですねえ。
- 糸井
- 不思議(笑)。
- 川上
- 看板で思い出したんですけど、
糸井さんは、実生活で、
「電線」っていかがですか?
- 糸井
- 「電線」ですか?
- 川上
- ゲームと関係ないんですけど、
「電線」って、すごく嫌がってる人と、
そうでもない人がいて、
二通りに分かれてるんじゃないかと思って。
- 糸井
- 川上さん、嫌じゃないでしょ?
- 川上
- 私、平気です。
- 糸井
- でしょ? そこは体質なんだと思うんだけど。
- 川上
- 体質なのかなぁ?
- 糸井
- うん。その体質は共感できるんですよ、ぼく。
だから、川上さんの書くものが
ぜんぶ納得できるんですよ。
- 川上
- (笑)
- 糸井
- ぼくは、川上さんの作品を読んでるときには
女になってるんですよ。
- 川上
- そうなんですか(笑)。