どせいさんとつくり手冥利
- 川上
- どせいさんは、
どういうふうにしてできたんですか?
- 糸井
- これは、まえの取材でも言ったんですが、
どせいさんは無垢のシンボルなんですよ。
- 川上
- 無垢、ですね。うん。
- 糸井
- 昔、原作を手がけた
『情熱のペンギンごはん』にも
そういう無垢を描いたりしたんですが、
ぼくはそういうものが好きで。
ひとつは「無垢をバカにすんなよ!」
っていう気持ちがあるんですよ。
- 川上
- (笑)
- 糸井
- だから、たとえばどせいさんは
「科学の粋」を持ってたりしますよね。
つまり、進化のかたちって、
人間と同じかたちだけじゃないと思うんです。
そういうことについて、
ちょっと演説したくなるようなことを
ぼくは全部、どせいさんに入れたんです。
- 川上
- なるほど。でも、それ、
時代がようやく追いついた感じがありますね。
いまの「癒し」のブームってそれですもんね。
「ぽえ~ん」とか言われると
もう「それでいいかも」っていう
気持ちになりますよね。
- 糸井
- うん。どせいさんがそういう人だったからか、
けっきょくのところ、
みんなが共通に憶えてるのって
どせいさんなんですよね。
- 川上
- ああ(笑)。
- 糸井
- 無条件でいい人じゃないですか。
- 川上
- そうですね。そうそう。
- 糸井
- こないだ、『MOTHER』の音楽について、
対談をやったんですけど、そのとき、
音楽を担当した田中(宏和)くんが、
自分の子どもの話をしたんですよ。
その子は『MOTHER2』をやっていて、
こう、ご飯を食べているときに、食卓で、
「お父さん、どせいさんって、
いい人だよね」って。
- 川上
- あははははは!
- 糸井
- それで、「そうだな」って言ったら、
もう1回、「お父さん、どせいさんって、
ほんっとに、いい人だよね」って(笑)。
- 川上
- かわいい(笑)!
- 糸井
- もうね、つくり手冥利に尽きるって
そういうことですよねー。
- 川上
- そうですよね、はー。
- 糸井
- ゲームつくってよかったと思うのは、
そういうときですよね。
小説にそういう子ども、いないですもんね。
- 川上
- ああ、それはそうですね。
そういう人物造形って、
小説だとできる場所がないですね。
ゲームとマンガくらいかなあ。