「知られざるエピソード」
僕が糸井さんという人を始めて知ったのはマザー2でした。
2をやったあとに1をやったんですが、
全然色褪せてなかったし。
音楽が最高すぎますし。
2の名前入力画面で「OKですか?」って
聞かれてびっくりしたし。
(Nob)
ランダムでかまわないんですけど、
当時の知られざる話とかありますか。
- 糸井
- あの、名前入力するところに、
ぼくの「OKですか?」っていう声が
入ってるじゃない?
あれ、田中さんに騙されて録音されたんだよ。
え? 録音してると知らずに?
- 糸井
- うん。いつ録音されたかわかんないんだ。
あれ、少なくとも、
録音用にセッティングしたんじゃないよね?
どうやって録ったの?
それさえもおぼえてないもん。
- 田中
- うーん、いつどんな状況で録音したか‥‥
忘れちゃいましたね。
- 糸井
- とにかく勝手に録って勝手に入れたんだよ。
そういえば、あれ、
かしこまった声じゃないですね。
つぶやき声みたいな感じ。
- 糸井
- あれは「OKですか?」って
言わせたくて、計画したの?
- 田中
- いや、まあ、とりあえず素材として
いろんなスタッフの声を
録音しまくってたような‥‥気は‥‥。
セッティングして、マイクテストみたいな感じで
「OKですか?」とか言ったんですかね?
- 糸井
- ぜんっぜん、おぼえてない。
- 田中
- いや、僕もおぼえてないです。
誰もおぼえてない(笑)!
- 糸井
- たぶん、セリフというよりは、
日常会話を勝手に田中さんが録ってて、
そこから拾ったんじゃないかなあ。
糸井さんはいつ気づいたんですか。
- 糸井
- なにかのときに、テストプレイで、
「おい、これ、俺じゃん!」って。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- そしたら、「いや、録ったんですよ」って。
- 鈴木
- たしか、ひろかっちゃんが
「糸井さんの声入れよう」って
言い出した記憶があるな。
スーファミになって、
サンプリング音源も使えるようになったんで、
そりゃ、やりたくなるでしょう。
はあ~(笑)。
ほかにこっそりやったこととかあります?
- 田中
- あの、ダンジョン男の中で聞こえる音楽に、
鼻歌が混じってるの、ご存知ですか?
あれ、糸井さんが歌ってんの。
- 糸井
- えっっっっっ?!
- 鈴木
- (笑)
糸井さんは知らずに(笑)?
- 糸井
- 知らない、知らない。
‥‥いまのいままで知らなかった。
いまのいままで知らなかった!
いまのいままで!!
取り乱しているようです。
- 糸井
- オレなの?!
- 田中
- そう、糸井さんなんですよ。
- 糸井
- 「OKですか?」は知ってるけど、
え? ダンジョン男の中で?
- 田中
- 言葉‥‥というか‥‥ただ
「レッツ ファーフォーマンー」という
フレーズなんですけど(笑)
なんだか意味わかんないですけどね、
でも歌ってます。
「ダンジョン男」って設定いいなあ‥‥
って思って
なんかそれって糸井さんじゃないだろかと、
ピン!とひらめいて(笑)
ダンジョン男が歩くシーンの曲、
ダンジョン男の中のダンジョンのBGMの2曲で、
糸井さん登場します。
- 糸井
- ‥‥知らなかった。
オレ、よく歌うたってるからなぁ。
- 鈴木
- 知らないうちにいたずらされてんの(笑)。
あ、エンディング・テーマにも
糸井さんの声入れたような記憶が。
- 糸井
- ええ?
寝てるうちに孕んでた、みたいな。
産んだのはアタシよ、みたいな(笑)。
‥‥えーーーっ?!
ほ・ん・とかよーー?!
取り乱してるようです。
- 田中
- あと、ま、声でいうと、ゲップーとかね。
- 糸井
- ああ、それはわかる。
ゲップーは、ちゃんといるんですよ。
ゲップの上手いヤツがスタッフにいたんです。
ほんっとにイヤがられてたの、ゲップするんで。
それは、その、日常生活において?
- 糸井
- 日常生活においてさ。
‥‥屁とかもするんだよ。
- 田中
- そう、屁も録ったんだ。使ってないけど。
- 糸井
- それで、あまりにもイヤなゲップをするから、
「おまえ、正式にゲップしろ!」って言って
録ったんだよね。
で、「いいですよ。‥‥ゲップ!」って(笑)。
悪いやつじゃぁないんです。
来たメールを読んでてわかったんですけど、
ゲップーのゲップはいまだにイヤがられてますよ。
- 糸井
- イヤがられたねえ(笑)。
初めてゲップーの声を聞いたとき、
あまりにも気持ち悪い声なので、
のどの奥が酸っぱくなっていました。
(真由美)ゲップーはほんと
あれ以上ゲームで気分が悪くなったことってないかも・・
(あし)
あ、でも、ひとりぐらい、
すごい好きだっていう変わった人もいましたね。
MOTHER2を買ったのは小5でした。
ゲップーが好きであのゲップを
どこまで真似できるかというのを
テープに録音してまで友達と競っていました(笑)
結局カビクサイマン程度しかできなかったんですが・・。
(ATS)
ほかになんかありますか?
- 田中
- う~ん、ムーンサイドのボルヘスの酒場では、
隠れメロとして、
アメリカ国歌、『星条旗よ永遠なれ』。
変な音に隠れてるけど‥‥。
- 鈴木
- あ、そうだ、そうだ、そうだ!
ありましたありました。
気持ちわるーい感じの。
- 田中
- よく聴くと 聞こえるんですよ。
ヘロヘロのジミヘンが、こっそり溶けてる‥‥
というイメージですね(笑)
音楽の好みがこっそり反映されてますね(笑)。
- 田中
- あとね、P.I.L
(※元セックス・ピストルズの
ジョニー・ロットンがジョン・ライドンと
改名して結成したバンド)
の元ベーシストが好きで、ええと‥‥。
- 鈴木
- ジャー・ウォーブル。
アメリカ国家にしろ、
ポスト・パンクだよなあ、ひろかっちゃん。
- 田中
- いやいやー(笑)。
とくにジャーウォーブルのベースが好きで
ほんっとに低い音がガンガン鳴って、
なんか潜んでいるような音の中を、
疾走するようなね、あの感じが大好きだった。
で、そっから、彼を追いかけて
レゲエ、とくにダブに行ったんですよ。
ダブって、音を抜いていくもので、
歌とかもないんだけど、
逆にイメージはどんどん膨らむんですよ。
それで、『MOTHER2』の病院は──。
- 糸井
- ああ、病院! 病院は現代音楽入ってる。
- 田中
- ほんとはね‥‥
なんか病院のBGMには、ふさわしくないと
ずーっと思ってたんですけど‥‥
他に使う所なかったんで
無理やり入れました(笑)
病院は「ビコーズ・アイ・ラブ・ユー」のダブ版、
フォーサイドは。それのサルサ版です。
(*ビコーズ・アイ・ラブ・ユーは、
ギーグを倒した後に流れるBGMです。)
いやぁ、いろいろありますねえ。
効果音関係はどうですか?
- 田中
- うーーーん、ああ、
最後の、ギーグが痺れる音って、
放電の音なんだよね。
放電!
- 田中
- うん。バチバチバチッていう放電の音なんですよ。
あの音を、たまたまサンプリングしてたの。
それをもとにして、いろいろキー変えてくと、
声みたいに聞こえだして。
すると、あの放電の持ってる、よくわかんないけど
放電現象の「エネルギーの声」みたいな感じがして
なんかギーグとの最終戦闘のシーンに、
合ってるのではって思って。
それは、絵からのイメージだけで?
- 田中
- あのへんはセリフというか、
ことばのやりとりで感じるイメージからですね。
糸井さんから、できあがったシナリオが
回ってくるから、慶一さんとふたりで、
「こういう順番にしようか?」とか、
「怖い感じかな?」とか、
セリフのイメージを広げてつくりました。
- 糸井
- はー。そのへんの話ってさ、
つくってる最中に絶対に聞こえてこないから。
- 田中
- わざわざ自分から言うことでもないしね(笑)。
- 糸井
- あっ、あとあれがあったね。
ポーキーのノックの音!
- 田中
- ああ(笑)。
あのー、最初、
確か、ポーキーがネスの家の
ドアを叩くところがあるんだけど、
あそこで、「お・ま・え・は・ア・ホ・か」
のイントネーションで
叩いてる部分があるんですね(笑)
横山ホットブラザーズ(笑)!
- 糸井
- それ、田中さん、ずーっと言ってたんだよ(笑)。
- 田中
- もう、関西人としては、
なんとしても後世に伝えなきゃあって‥‥
もう、あふれんばかりの使命感(笑)
ノコギリじゃないんだけど、ドアを叩くシーンを
シナリオで見つけた時、ああ ここだー!
「ド・ド・ド・ド・ド・ド・ドッ!」って。
- 糸井
- もう、当時ね、かたくななまでにやりたがってて。
それ聞いて「おまえがアホじゃ」と思った(笑)。
そんで、「やろう、やろう!」って。
- 一同
- (笑)
トンズラブラサーズ。
ツーソンからスリークに行くとき。
バスに一度乗るとわかる。
そうじゃなくても、スリークって怖い。
でも、通っちゃうんだよなぁ。トンズラ。
面白かった。手叩いて膝叩いて、
スリークに向かったの覚えてる。ムーンサイド。
こそようこそよう
ムーンサムーンサ‥打ってるだけでぞわわ~って来る。
こっっわかったんだから。
未だかつてゲームでここまで怖かったことはないですよ。
これが何の骨か知っていますか?
貴方の骨。私の骨。骨、骨、骨。ここの音がまたぁ‥不気味。そうだ、ホテルに泊まったとき!
目覚め悪そ~な音でさぁ。
ママに電話したりエスカルゴ運送呼んだりして頑張った。‥あと、これはずせない。
エイトメロディーズ。てか、これを聞く為に、今三度目のプレイ中。
今はスカラビに向かうところ。それと、最終戦。ギーグ。
一番最初にあいつと対峙したときの事は忘れまい。ああ、楽しかった。
思い出になりつつありますが、
思い出から何かを作ることもあります。
結局いい思い出とは、
人がまた何かをするときに役立つのだろうと。
思います。
(はろるん)