──

今回、デジタル印刷を選択した
理由を教えてください。

高本

視覚的に、ドット絵のスクエアな感じや、
エッジをしっかりと出すことを優先しました。
それをするには、デジタル印刷が最適だったんです。

──

デジタルだと、 線や角のシャープさを再現しやすいんですね。

高本

はい、ファミコンの時代に
我々が初めて触れたコンピューターグラフィックって、
やはりあのドットのエッジがすべてじゃないですか。
いまは、あれを滑らかにできる機能もあるんですけど、
使いたくありませんでした。

簑田

ブラウン管だとゲーム画面も
実際には少しにじんで見えます。
だから、もしかしたらみなさんの記憶の中の風景は、
そこまでエッジが立っていないのかもしれません。
でも絵にするとなったら、
シャープなほうが断然いいなと。

──

そこは、臨機応変に。

高本

はい。

▲「サンクスギビング」。ドッドのエッジに注目。

──

確かに、初めてファミコンとテレビを
AVケーブルでつないだときの、
それまでと違うきれいな画面を見たような
感動がありました。
限られた色数しか使えなかったファミコンの、
当時のデザインの努力みたいなものも、
くっきりはっきりと見えてくる気がします。

簑田

（笑）。
デジタル印刷の強みですね。

──

ちなみに、ゲーム画面って
テレビにRGB（レッド、グリーン、ブルーを混ぜて
多彩な色を表現する手法）で
表示されていると思うのですが、
今回の印刷に使ったインクは？

簑田

CMYK（シアン、マゼンタ、
イエロー、ブラックを混ぜて
多彩な色を表現する手法）ですね。

高本

社内に、RGBからCMYKに
正しく色を変換することに
情熱を注いでいる部署があるんです。
ですから、色の再現性はばっちりそのままですね。

──

じゃあ、今回の絵も、
当時のゲーム画面そのままの色で。

高本

はい。
元のデータが正しいファミコンの色なわけですから、
基本的にはそれをそのまま再現しました。
でも、原画はみなさんの記憶の中にあるものですから、
「正しい色」にも正解がないと思いまして‥‥。
とにかく、きれいに色を出すことを
最優先に考えました。

▲「ホーリーローリーマウンテン」。
おどろくほど細かいドッドが忠実に再現されている。

簑田

ちょうどいい頃合いのトーンに
調整する感じと言いますか、
ノスタルジックな面と、
オリジナルの絵としての
バランスのせめぎ合いでしたね。

高本

鮮やかすぎず、でも濁りすぎず、みたいな。

──

ちょうどいい頃合いに。

高本

ですから、お渡ししたサンプルの中に、
あえて色を濃くしたものもあったと思うんですね。

──

あ、はい。ありました。

高本

あれは、ブラウン管のイメージを想像したときに、
これくらい濃くてもいいんじゃないかと解釈した、
いわば「記憶色」のバージョンです。
テレビの画面が光っていたぶん、
元の色は見た目より少し濃い、
とも考えられるわけで、だから、濃いのもいいなと。

──

確かに。とくに、
マジカントのピンク色の出かたが
サンプルごとに大きく違っていたのが印象的でした。

簑田

そうですね。ピンク色はとくに、
変化の差が大きかったかもしれません。

高本

うん。だけど、古いテレビの画面だから、
光もそこまでは強くないんです。
ですから、やり過ぎない程度にしました。

▲透明感のあるピンク色が際立つ「マジカント」。

（つづきます）