カメラのファインダー越しにオムライスを覗いている。
オムライスはなぜこうもフォトジェニックなのだろう。
オムレツも同じ形をしているが、
目の前のオムライスは取り分けるおかずではなく、
左手に持ったご飯のようなもの。
対峙して愛着すら感じる。
ふわふわの玉子に包まれた黄色い楕円と
それにかけられた赤いケチャップ。
じっと見ているとそれが大きな瞳のように見えて、
お互い目が合っているような気分になる。
オムライスはカレーやラーメンのように
気軽な食事でありつつ、洋食として品格をも備え、
家庭でもお店でも
子供から大人まで誰からも愛されている。
その上にフォトジェニック。
他にこんな料理があるだろうか。
会津の東山温泉で踊る芸妓を撮影させてもらった時に
近所で行きつけの美味しいランチを尋ねたら、
洋食家ふらいとのオムライスを教えてくれた。
チキンライスはあえて玉子で包まず上にのせ、
食べる時に玉子の表面をスプーンで割って広げ、
中身のトロトロを表にし頂く。
ソースはケチャップだけでなく毎月季節によって変わる、
キノコデミ、明太、和風などのソースがあり、
常連客を飽きさせない工夫がうれしい。
相馬市のキッチンポテの
ガーリックチキンのふわふわオムライスは
カゴメが主催するオムライスの大会で
東北代表にもなった一品。
シェフは看板メニューを考えていた当初、
冷蔵庫にあまっていたニンニクをあるだけ擂り下ろし、
臭いを気にしつつも美味しそうだとチキンと炒めた。
和風ソースとデミグラスソースにあわせてみたところ
意外に相性がよかったそうだ。
臭いのことを言われてもいいから
記憶に残る味を目指した理由は、
誰よりもシェフ自身が美味しいと思える料理が
お店のメニューの基本だと考えていたから。
最後に生クリームを上からたらし味を滑らかにする。
玉子にケチャップがかかった従来のオムライスとは違った
キッチンポテだけのオムライスが完成した。
テレビでも取り上げられ
遠方からもポテのオムライスを目指して来る人が絶えない。
福島市音楽堂の向かいにあるみどり豆は
曜日や時間帯によって様々な人が集う町のレストランだ。
ランチタイムは会社の食堂として、
午後のお茶の時間は奥様たちの憩いの場、
音楽堂でコンサートがあれば音楽好きが集まり、
地域のカルチャースクールを楽しむ趣味人や、
病院が近いから退院した人、お見舞い帰りの人も
皆ここに立ち寄る。
お店はおひとりでも家族連れでも
ピザやパスタ、ハンバーグにグラタン、
ありとあらゆる洋食の定番メニューが揃っている。
その中でオムライスは看板メニューであり続けている。