19号
餃子を探して

かれこれ10年前、
マガジンハウスの雑誌「ku:nel」の撮影で
中国の西安へ餃子の取材に行った。
一般家庭におじゃまし、いつもの餃子の作り方や
食卓を囲む風景を撮らせてもらった。
挽きたての小麦粉を練る、皮にこだわった餃子。
茴香やセロリ、葱など具材を細かく刻む、餡が特徴の餃子。
胡麻油に山椒の実を入れたスパイシーなタレで楽しむ餃子。
それぞれの家にそれぞれの餃子がありその奥深さを知った。
西安で食べた餃子のほとんどは水餃子だったが、
食後に餃子の茹で汁をそば湯のように飲む
餃子湯(チャオズタン)のやさしさが忘れられない。
でも、もうこれ以上食べられません! というほど
餃子を朝昼晩食べ続け、ご家庭以外にもチェーン店まで
逃すことなく一生分の餃子を食べた気分になった。
餃子漬けの過酷な取材もいまとなってはよい思い出だ。

ただ日本の餃子は焼き餃子が主流だからか、
本場の餃子を食べ飽きたことなどどこへやら。
帰国後すぐにラーメンにつられて
餃子を注文してしまったことも忘れてはいない。

その後、宇都宮や浜松などの有名店も訪れたが、
最近は福島の餃子が好きだ。
焼き餃子、水餃子、蒸し餃子、揚げ餃子。
ラーメン屋さんや専門店、中華料理店にチェーン店も
餃子は家でだって誰からも愛されている。
この先、浜通り、中通り、会津地方、
僕はそれぞれの土地で餃子を探すだろう。

福島の元祖円盤餃子、満腹(まんぷく)は
友人のテレビディレクターに教えてもらった。
旧満州から福島に円盤餃子を持ち帰った
菅野かつゑさんの流儀は「餃子は皮を食べるもの」。
四季の白菜にこだわった餡と手練りの皮、
本場から受け継いだその味から豪快さと
お店の名前どおりのかつゑばっぱのやさしさを感じる。

福島駅からほど近い同じく円盤餃子の山女(やまめ)は、
開店前、雨が降りしきる中でも行列ができる人気店だ。
並べられたフライパンで次々と焼かれていく餃子が
厨房を囲むカウンターから見えるのがうれしい。
揚げたように焼かれたきつね色の皮が特徴的。
次は水餃子も注文したいと思っている。

11号「福島の中華 麺と麻婆豆腐」にも登場した
いわきの蘭燈園(らんたんえん)。
水餃子、焼き餃子、隠れメニューに揚げ餃子もある。
こだわりは一般的な日本の餃子。40年以上味を変えず
調理法だけで違った味わいを楽しむ。
東中野仕込みの大将の味はいわき市植田に根付いた。

郡山の大三元(だいさんげん)
のメニューはタンメンと大盛りと餃子のみ。
餃子の個数が控えめなところにお店のこだわりを感じる。
それはきっと餃子の卸業を行っている自信の現れだ。
選び抜かれたキャベツとニラ、
皮も自家製と手を抜くことはない。
最初はなにもつけずに食べてみてほしいと店主。
ラー油も自家製でタンメンと一緒に食べる。

  • 円盤餃子
    満腹
    福島県福島市仲間町1-24
    024-521-3787
    月・木・金 
    16:30-餃子がなくなり次第終了
    土・日   
    11:40-餃子がなくなり次第終了
    火・水休
  • 円盤餃子
    山女
    福島県福島市早稲町5-23
    024-523-1772
    17:30~21:30
    日・祝休
     
     
     
  • 水餃子・揚げ餃子・焼き餃子
    蘭燈園
    福島県いわき市東田町2-15-2
    0246-62-0243
    11:30~14:00
    17:00~18:30
    店主の体調により
    営業時間、休の変更あり
    月休
  • 餃子
    大三元
    福島県郡山市菜根3-12-12
    024-938-1421
    11:00~20:00
    年末年始休
2016-09-29-THU
©HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN