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何年かまえのある売り場で、僕が休憩に行ってて、
代わりの者が留守番で立ってたんです。 |
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(笑)。
そうしたらあるオヤジが来てね、
「あいつが売っているものを
いままで俺は5個も6個も買った。
頼む、ひとつでいいから
俺にでもできることを教えろ!」って。 |
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「家ではもう買ってくるなって
言われてるんだ」って。 |
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長いあいだやってますとね、
そういう人も中には出てきますよ。
デパートなんかで見ているうちに
欲しくなっちゃうんでしょうね。 |
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わかりますか(笑)。
女性のお客さんなんかは見ているうちに
「あ、こうやれば家で使えるな」っていう
実用のイメージができて、購買につながるんですが、
男性の場合はそうじゃないんです。 |
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これを買って帰って女房の前でやってみせたら、
うまいこといくんじゃないかと。 |
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見ているうちに
「あのオヤジにできるんだったら俺にもできる」
と思って買うんだけれど、
家に帰ってやってみたらまったくうまくできない。
挙げ句の果てには
「なんでこんなもの買ってきたんだ」って
女房に言われちゃうわけです。 |
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野菜を切る道具だとか、
穴のいっぱい開いた包丁などを
買っていただいたわけなんです(笑)。 |
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でも、最近の包丁は穴なんか開いてませんよ。
それこそ、今の包丁を売るときなんかは
「何であんな穴、開いてるんだ」とか
「穴が開いていればいいってなもんじゃない」って
言いながら売ってますから。 |
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絶えずトマト切ったり、
「サンドイッチでもヨンドイッチでも」って
言いながらパン切ったりしているわけです。
長いあいだこの業界でそういうものを
売ってますから、
それが実演販売の根底にある
エキスみたいになってるんですね。 |
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なるほど。
古典落語をやってるみたいなもんですね。 |
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そうですね。
同じことの繰り返しを何十年もやってますから。
僕も新しいことをやるのは
嫌いじゃないので
レパートリーは広くと思ってるんです。
でも、僕らの場合は
ひとつの品物で何十年も続けられるっていうのが
いちばん効率がいいんです。
それこそ、ひとつの商品を40年やって
引退したっていう人のがいるくらいですから。 |
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そう考えると、この手帳はずっと売れるんだから
こんなに効率のいい商品はないわけです。
でも、実際に実演販売で
この手帳を売るとなると話は別。
だいたい、この手帳3500円くらいですよね? |
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手帳の売り場に変なオヤジがいて
「おい、ちょっと見ていけ」と。
それで本当に罪もない、
ただ通りすがったお客さんから
3500円で買っていただくというのは
やっぱりね、なかなかたいへんなんですよ。 |
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僕らって仲間内の商売を
している気がしてるんです。
毎日「ほぼ日」を読みに来てくれる人が
その友だちに勧めてくれたり、
さらにその友だちがっていう感じで
「いい」と思えるドームの中に
僕らもお客さんもみんなでいる、
みたいな部分があるんですね。 |
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そういうドームの中で仕事をしていくのが
ある意味いちばんラクなんです。
でも、そのラクな状態のまま続けていくと
知らないうちにお客さんとの関係も
その商品自体も微妙なものになってしまうんです。
さきほどおっしゃった
「3500円で買っていただくのは難しい」という
言葉を考えると、
商品が売れている状況であるときに僕らは
「その難しいことがなんでできているのか?」
ということを考える必要があったんですね。 |
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あ、でも、そんなに深く考えないでくださいね。
実演販売のときに話すことはマーフィーさんの
やりたいようにやっていただければいいんです。
なんでもいいんですよ。
「なんて売るのが難しい商品を
引き受けちゃったんだろう」っていう話を
延々されてもいいですし、
いざとなったら野菜出して
「野菜も切れます」でもいいです。 |
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(続きます) |
2008-12-15-MON |