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武井さんはお金があったら家を買いますか。
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宝くじが当たったら、というような話ですよね。
だったら買います。
いくら当たったら、中古で部屋を買って、
リノベーションをして住めるかな、
なんて妄想は、けっこう楽しくしてます。
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じつはそういう人、けっこう多いですよね。
ほんとは建てたいけれども、建てることよりも
エンジョイ・ライフを選択している人。
土地が高くなったとか、家が高くなったとか、
いろいろと理由はあると思いますが。
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フィンランドに何度か仕事や旅行で
行ってるんですけど、非常に羨ましいなと思うのは、
ヘルシンキは都会ですから、都会で働く人たちは
当然アパートメント暮らしをしてるわけです。
もちろんそれなりに快適ですが、
それはそれで都会の暮らしなので、
東京と似たようないろんな問題やストレスがある。
けれども彼らがいいのは、それはそれとして、
週末はもうポンと郊外に行くことです。
それが非常に安く済む。
家も自分で建てちゃったりするんです。
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サウナみたいな小屋を森ん中に持ってるんですよね。
30分とか１時間車に乗ればそこに行ける。
金曜日の夜にガールフレンドとフラフラと行って、
月曜日の朝そっから出社する、みたいな。
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しかも、その場所は密集地ではなく、
湖が自分のもののようにある、
ほんとうにほんものの自然のど真ん中。
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完全になるでしょうね、孤独が。
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羨ましすぎる！
でも、そんなにみんながみんな？
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友だちと一緒に行ったりするんですよ。
自分は持っていなくても、
仲間が持っていたりする。
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「使っていいよ」というパブリックな感覚が、
すごく大らかだという気がしますね。
あの感覚は、もう、そもそもベースが違うんで
「羨ましい」を超えてますけど‥‥。
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僕も、フィンランドを旅して思ったのは、
このライフスタイルの豊かさは、
当然湖とか森とか白樺の木とか、
ああいう自然に囲まれてのことだろうなとは思いました。
もちろんデメリットもありますよ。
北過ぎて、夏は太陽が沈まないし、
冬場はもう午後３時で暗くなっちゃうとか。
でも、だからこそ自分の生活を
どう作るかっていうのはすごく参考になって、
森の生活っていうのは、
メタファーでもなんでもないんです。
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「森に帰る」っていうのが、
比喩ではないんですよね。
ほんとに森に帰ってるんです。
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東京の人が１時間小田急で箱根に、
というレベルじゃないんです。
で、学生時代にフィンランドに行って、
なんでだろうっていろいろ考えたけれども、
やっぱり人口密度じゃないかな、と。
大都会でも、ヘルシンキの人口は
約59万人（面積716平方キロ）。
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ヨーロッパで二番目に
人口密度が低い都市だそうです。
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東京23区は、621平方キロに対し、
人口は約900万人ですからね。
フィンランド全体でみると、
日本よりやや小さな33.8万平方キロに、
総人口は540万人。
日本は１億2805万人。
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フィンランドの田舎って、
都市からそんなに遠くないところでも、
森では誰にも会わないんですよ。
湖に行って泳いでるのは自分たちだけ、
みたいなの、当たり前。
だから、裸で泳ぐのも当たり前。
しかも、湖の水が飲めるんですよ。
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夏なのに冷たくて気持ちいいんですよね、湖が。
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恐ろしく冷たいです。
で、釣りをして、
焚火をして、サウナに入って‥‥。
あの暮らしはある意味理想だけれども。
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じゃぁ「君はフィンランドに移住するのか」
って言われたら‥‥。
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できないですよ。
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その暮らしに自分たちが
ほんとうに満足できるのかどうかは、
やっぱりわからないことですよね。
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分かんないです。
旅人だから、そう思うのかもしれない。
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おうちでゲームしてるほうが楽しいかも、とか。
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別に僕、湖で泳ぎたいわけじゃないよ、とか。
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（笑）ところでそんな鈴木さんは、
お家を建てるんですよね。
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そうです。51歳にして決意しました。
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何が決断させたんですか。
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やっぱり家族です。
ちっちゃいころから新聞の分譲住宅とかの
間取りを見たりするのが大好きな子どもだったんですよ。
家には関心はずーっとあって、
いずれ建築家と組んで建てられたらいいなという
夢は持っていたけど、僕の場合も
都内に親が家を持ってるんです。
いずれ相続することは分かってた。
それに、都内に家を買うとか建てるとかいう
収入じゃないのもわかっていたので、
「いずれ継ぐまでは、いいか」
みたいな感じだったんです。
ただ、それがいつんなるか分かんないじゃないですか。
できれば長生きはしてほしい。
けれどもそれまでずーっと仮住まいか。
その中途半端感がだんだん居心地悪くなってきた。
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せめぎ合う心。
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うんと郊外に行けば、家を持つ夢も叶わなくはない。
けれども、そういう状況で、
自分のような仕事だと、
できるだけ便利なところに住みたいとも思う。
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そこなんですよね。
その価値観──武井さんもそうですけど──
都市に住みたいっていう価値が
すごく高いんじゃないですかね。
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そういうことなのかな。
「塔の家」ってあるじゃないですか。
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建築家・東孝光さんの自邸であり、
たいへん有名な狭小住宅ですね。
都心にあるあの建物を建てるお金と土地を買うお金を、
郊外でやれば３倍、４倍の家、庭付き一軒家っていうのが
建てられたはずなところを、
あえて、都心の小さな敷地でチャレンジした。 |
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そこまでチャレンジをするつもりもないんです。
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けれども、いまの鈴木さんの話で言うと、
吉祥寺なら住むことがイメージできるけど
たとえば相模湖畔の森の中の広い家は
イメージできないわけですよね。
それは通勤が大変だしいろんなデメリットもあるけれども、
「郊外の広い一軒家」に住むことの良さを、
本当に想像できてるのかというと、
できていないのかもしれない。
朝早く起きて、夜遅くまで通勤に時間をかけるということを
我慢すればすごく魅力的な何かが、
体験できるのかもしれない。 |
| （つづきます） |
