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建築家というのはやっぱり
施主のリテラシーが高いと
仕事がしやすいものなんでしょうね。
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嬉しいですよ。住宅設計って、対話をしながら、
リテラシーを一緒に高める作業だと思うんです。
僕だっていままでの33年間の生活しか経験がない。
映像や本で知ったことも含め、経験としては33年間です。
で、例えば内田樹先生は僕の人生の倍近くあるわけです。
そんな人と一緒に家づくりをするっていうのは、
僕自身が一番スポンジ状態で、
共有するっていうか、吸収する、学ぶ側にいる。
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その学び方はすさまじいんですよね。
光嶋さんの本を読むと分かりますが。
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それは内田先生だからっていうわけじゃなくて、
常にその関係にあるんです。
対話をすることでお互いのリテラシーを高めたい、と。
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さっきお金があれば家を買いたいって言いましたけど、
そのときにひとつ大事なことがあるんです。
ぼく、風邪ひきやすいんですよ。
だから、一番ほんとに欲しい家は、風邪をひかない家です。
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それは思いつかなかった!
僕もすごい風邪ひく!
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すごく大事です。
冬は床が暖かく、裸足でも歩いて熱くない。
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乾燥しないでね。
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そう! ストーブの熱じゃなくて、
エアコンの熱でもなくて、暖かい家。
裸でお風呂まで行って平気な家。
夏は、冷房を強くつけなくても風が
──空気が動いているという意味ですが──通り、
ちゃんと日差しも浴びられるんだけど、
暑すぎず、快適に暮らせる家。
そして、夜、快適に寝られる家。
夏は冷房のつけすぎで、
冬は寒くて、もう、いつも風邪をひくかひかないか、
みたいなとこで生きてますからね。
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僕今武井さんにすごく仲間意識が
芽生えてきたんですけど(笑)!
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まさしく今、鈴木邸と同時進行で
もう1件、担当している家づくりがあって、
そのお施主さんは、まさにいま武井さんが言った、
気持ちがいい家づくりを望んでいらっしゃるんです。
たとえば、自然素材を使う。
絶対に人工的なものを使わないでほしい。
空調もほこりとかにすごく敏感だからやめてほしいと。
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分かります。
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そこで檜の木と土の土壁にしようと考えているんです。
いわゆる竹小舞、竹を組んでそこに土を塗る土壁です。
まさに昨日、構造設計を担当してくれる
アラップ(ARUP)っていう会社と打ち合わせをしたんです。
そこの事務所は世界のいろんな
名だたる建築の構造設計をしているんですが、
現代において、土壁を
そういう古典技法でつくることの環境的な側面や、
夜どうやって風を引き込んで、
熱くなっちゃった建物を冷やしてあげるか、
そんな話をしてきたんです。
そのお宅は、夜は山から海へ、日中は海から山へっていう、
すごく分かりやすい風が吹く土地なんですね。
そういう風をどう取り入れるか。
それを、空調機じゃなくて、パッシブに取り込みたいとか。
で、僕が昨日打ち合わせしてたなかで
面白いなと思ったのは、
その風を取り入れる煙突を作ろう、
っていう話になったんですけど、
その煙突で、光も取り入れられるんじゃないかと。
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いいですねー!
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そうすると、左官の技術なんですよ。土壁だから。
左官ってことは直線である必要がないんですよ。
曲げられるんです。
そうすると何ができるかって言うと、
トップライトが光入って来ますよね。
晴れた日にはピカンと東の光が入る。
その光を壁に当てて湾曲させると、
時間帯によって壁が光る。
それがパッシブ・デザインだと思うんです。
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鏡みたいにキラキラ反射するわけじゃないけど、
っていうことですよね。
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そうそう。でも、ツルッツルに鏡みたいに、
白ーく、テッカテカの漆喰を塗ればそう反射するし、
もっと柔らかいざらざらしたもの、
もしくはそこに石を入れるとかすれば、
キラキラ、キラキラって光ったり。
いろんなことができるんですよね。
で、それがまさに風邪をひかないための家なんですよ。
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いいなあ! それはでも一軒家じゃないとできない。
立地もそうとう吟味しないとならない。
いくらお金があっても都心では
難しいことなのかもしれない。
マンションの中では、
効率の良い照明と床暖房入れましょうって話になる(笑)。
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ま、PSっていう、放射冷暖房っていうのもあるんです。
空調機だけれど冷たい風を出すんじゃなくて、
ラジエーターっていうかフィンの中に冷たい水を流す。
室温が例えば28度とか30度超えてるときに
10何度の水を流すと表面にダラダラ汗をかくんですが、
それがつまり除湿してくれるし、
それによって放射で冷えるんですよ。ひんやり。
ただ、これはムラがあるので、その周辺だけしか効かない。
離れると暑い。そういうのをうまくコントロールして、
どこに設置したらよいかを考える。
決して安いものではないので、
どこにでもつけることはできない。
じゃ、生活の一番大事なコアなところに、
2基つければ十分だ、と。
値段的に言うとそのPS1基で、
通常の室内用空調機が10個ぐらいつきますから。
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10倍!
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当然お金も関係してくる。
予算のなかで、何を重視するか、
そこにも設計の面白さがあるので、
そこで明確な優先順位を持たれてる
クライアントっていうのはすごくやりやすいんです。
欲張りにあれもこれもっていうのは
どうしたって無理です。
で、逆に、お金はいくらでもあるよ、
土地もどこでもいいよ、
いつでもいいよって言われたときに、
すばらしい設計ができるかと言うと‥‥
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必ずしも、そうとは限らないでしょうね。
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普請道楽の人の奇妙な家ってありますもんね。
建て増し、建て増しで迷宮になったような家。
世界中にあるんですよ、
昔のお金持ちが建てたおかしな家が、
観光名所になったりしてます。
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制約がないとそういうことになっちゃうんですよね。
名作は制約の中で生まれてきた、
というのは間違いないと思うんです。
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洋服もそうですよね。
デザイナーにとって、
レディースこそ大変なんですって。
なんでもできちゃうから。
けれども紳士服は様式がある。
ジャケット、シャツ、パンツ。
その細部をつきつめて、
新しい提案をする楽しみがある。
際限のないクリエイティブを見せるレディースは、
魂のすり減る仕事だと聞いたことがあります。
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建築も一緒ですよ。その制約との戦いっていうか、
やっぱそれがあるからこそ、努力というか、
新しい何かっていうのは出ると思いますよね。
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光嶋さんと話してるとどんどん家が欲しくなる。
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(笑)。 |
(つづきます) |