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家のことを考えているのは
すごく楽しいですね。
現実じゃないから楽しいのかなあ。
ウィンドウショッピングじゃないけど
ショールーム見るのとかも楽しいですよね。
こないだキッチンのショールームで
高級キッチンをためつすがめつ見ていたら
「業者のかたですか」とたずねられましたが。
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ぼくは結婚と持ち家を機に
趣味と生活を切り離すことにしたわけですが、
武井さんは一緒がいいんだ。
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僕は切り離したくはない。
キッチンに住みたいくらい、
といいつつ、眠るときに、
料理や食材の匂いがするのはいやなんですよ。
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ほー。
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そっか。例えばキムチ鍋をして、
そのキムチの匂いが残ったなかで
寝ちゃうのはいやなんだ(笑)。
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いやなんですよ。絶対にいやです。
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換気扇に対するこだわりとか無いですか。
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ほんとはあるんですけど、
もう賃貸はしょうがないじゃないですか。
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しょうがないですね。
賃貸の換気扇ってきかないっていうか、
パワーがないですもんね。
いくら強にしたって、
部屋中充満しちゃったりするでしょ、匂いが。
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それでも分譲賃貸だから
かなりいいものがついてるんですが、
それでも‥‥ね。
あ、ダイソンの扇風機を逆につけたら、
どんどん吸い込むんじゃないか?
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わははははは!
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あれは気流を作るんで、
いいアイデアかもしれないですね。
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そういうこと考えてると、いくらでも楽しめます。
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面白いなあ、
家にいっぱい人が来るのがイヤだったという武井さんが
やっぱり人を呼びたい部屋をつくってる。
それをもっと現実にしましょうよ。
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だから、問題はお金で‥‥。
鈴木さんはいいなあ。
設計中ってことは
もう楽しくて楽しくて
しょうがないんじゃないですか。
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それが、何十年も夢見てきたことが
リアルになりつつあるのに、
なんだかこうね、まだ胸弾むとか、
そういう感じではないんです。
どうしてなんだろう?
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きっとまだ具体的に想像できてないからですよ。
土地は取り壊す前の家が建ってる状況です。
あれが更地になって、
じっさいに建築が始まったら
もう全然違いますよ。
うわっ、ここかーっ! ていうね。
これだけ大きいことになると、
ワクワク感って徐々に
ボディブローのように来るんじゃないかなぁ、と。
ものすごく大きな決断をしたわけじゃないですか。
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さっき、テープ回る前に、
結婚よりも離婚よりも大きな決断だったって
おっしゃっていました。
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えっ、ほんとうですか。
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うん。ローンを組むっていうことの大きさは。
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それくらい悩んだってことですか。
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ほんとにいいのかって、
こんなことしちゃってっていう。
もう、絶対後戻りできないじゃないですか。
いや、そりゃまぁ結婚だってそうですけど、
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経験がないからわかりませんが
離婚のほうが大変だっていいますよね。
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そうそう!
結婚は何べんもしてもいいかもしんないけど、
離婚だけは二度としたくない。
ぼくはすごく円満に別れたんですよ?
強調して言いますけど。
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すごいプライベートな話になってきた。
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じっくり時間をかけて
平和に別れたつもりだったんですけど、
でも一人になった途端に後悔とか
いろんな感情がどーっと押し寄せてきて……。 |
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うわ、うわ、うわ、うわ。
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おおー、キツー。
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いや、ほんっとにキツかったですよ。
そして今回ローンを組むという決断は
ある意味、それよりもキツかったんです。
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いや、すみません、妙な話を振ってしまって。
家って‥‥家のこと考えるって、
そうとう人にカミングアウトさせちゃいますね。
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生活におけるあらゆる瞬間が
積み重なったものが、家だからですよね。
例えばすごい嬉しかった瞬間だって宿ってる。
それはお母さんからの電話一本かもしれない。
そのときのソファーの感覚とか
そういうものが堆積した結果が家なんです。
新しく家を建てるときにも、
そんなことをいかに大事にできる家にするか。
それが、僕がやりたいと思ってることです。
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その「思い出の堆積」ですが、
一気になくなっちゃうんですよ。引っ越すと。
10年住んで引っ越しの日が来て
荷物が運び出されたとき、
そこは突然「廃虚」のようになっちゃった。
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僕も覚えてます。学生時代に6年間、
大学院まで一回も引越ししなかったんです。
18歳で入った一人ぐらしの部屋と、
24歳でベルリンに旅立つ部屋が同じ部屋だった。
最初空っぽでね、ベッドと机だけがあったのが
徐々に物だらけになって。
それこそ、学生時代は建築模型だらけになるんですよ。
捨てないですから。図面や模型は。
「あー、将来もっとでかい本棚欲しいな」と思いながら
ギュウギュウにものだらけの部屋になって、
さあベルリンに行くぞと荷物をまとめ、
いっさいなにも無くなった瞬間に、
「え、なんだ? 俺の部屋じゃない」っていう。
積み重ねた6年間の思いみたいなものは、
あっという間に消えてしまった。
ベッドがあったところに寝転がってみても、
おんなじ天井、おんなじ風景が見えてるのに、
もう違う部屋なんですよ。
僕はもうヨーロッパに行くことにウキウキしてたから、
別に未練はないはずなんですけど、
「よっしゃ頑張るぞ」と思いつつも、
「あっさり終っちゃうんだな」っていう‥‥。
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あっ、あっさり終る感じですね。あっさりですね。
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そうなんです。
家っていうのは。人が住まなくなった瞬間、
廃墟になるんです。
家族っていう共同体のバトンみたいなものが、
これから、少子高齢化で回らなくなると、
一瞬にして廃墟となる家も増えていく。
そういうなかで、プライベートとパブリックの
境界線っていうか、
そういうことがテーマになっていくと思うんです。
奇しくも内田先生が、
パブリックな場所(凱風館=合気道道場=「みんなの家」)
として自邸をつくったように。 |
(つづきます) |