暮らしの中の小休止のように、
夢中になって没入できる編みものの時間。
ぎゅっと集中して、気がつけば
手の中にうつくしい作品のかけらが
生まれていることを発見すると、
満たされた気持ちになります。
編む理由も、編みたいものも、
編む場所も、人それぞれ。
編むことに夢中になった人たちの、
愛おしい時間とその暮らしぶりをお届けします。
- 京都に本社をおく、
糸の専門店「AVRIL(アヴリル)」。
ウールやシルク、コットンなど天然素材のほか、
個性的なオリジナル糸がそろっています。
京都・一乗寺の店舗をのぞけば、
そのカラフルな世界観にわくわく。
「編みたい!」という気持ちが
ほかほかあたたまってきます。
- 基本的に自社で糸を開発し、販売をするアヴリル。
井上さんは、仕入れやオリジナル糸の
商品開発などを担っています。
共同開発している「Miknitsアラン」にも、
長く関わってくださっています。
- アヴリルに就職したのをきっかけに、
広島から京都に移り住んだ井上さん。
「美術大学を卒業して就職先を探す中で、
母の「いつか京都旅行に行ってみたい」という
言葉を思い出したんです。
“いつか”と言うけれど、母は行かなそうだと、
何となく思ったんですよね。
それで、私が住めば来るきっかけになるだろう
と思って、京都で働く先を探し始めました。
以前来たときも、街の空気感が好きだったので、
京都なら楽しく生活できそうだな、
という期待もありました」
もう住み始めて13年、
街も会社もすっかり馴染みになりました。
- 会社から徒歩圏内にある
ご自宅の周りには高い建物がなく、
部屋にはたっぷり日差しが降り注ぎます。
「あったかい日差しの中で、
1、2時間編みものをするのが好きなんです」
と井上さん。
向かいにある立派なお庭には
四季折々の花が咲き、撮影時は寒桜が見頃に。
四季の匂いも感じられる京都らしい住まいです。
こじんまりとしたお部屋には
井上さんが大切に選んだ家具や雑貨が並び、
気持ちの良い空気が流れています。
- 打ち合わせでお会いするたびに、
新しい作品を編んで、着ていらした井上さん。
しかし、編みものをはじめるようになったのは、
うれしいことに
Miknitsの担当になった7年ほど前からだそうです。
- 「入社当初はかぎ針編みしかできず、
棒針編みなんてできると思っていませんでした。
だけど、Miknitsさんの詳細な編み図を見ていたら、
これなら編めるかもしれない、と思って。
編み図って、特殊な読み方がありますよね。
でも、Miknitsさんは手取り足取り説明してくれて、
一つ一つ手順をクリアしていけば形になるから、
“編む自信”みたいなものがついたんだと思います。
気がついたら、編みものが趣味になっていました」
- 基本的に、編むのは休日だけ。
「休みの日はあまり朝が早くないので、
朝昼兼用のごはんを食べて、
一息ついてから編みものをします。
2時間以上編むと、疲れてしまうんですよね(笑)。
好きなラジオ番組が2時間の放送なので、
タイマー代わりに聴いています。
「あ、終わった。じゃあ編みものも終わろう」と。
一時期は大物のキットを2つ同時に買って、
合間に小物を編む時期もありましたが、
最近は年に1、2着のペースで編んでいます。
そろそろニットを仕舞うところがなくなってしまって、
スローペースになったのかもしれません」
- 一番のお気に入りは、アランのカーディガン。
はじめて、外にも着ていけるものを
自分で編むことができた、
自信になったカーディガンです。
- 「それまでにも手芸本を参考に
カーディガンを編んだことがあるのですが、
外に着ていけないようなもので。
はじめて、自分の手で納得のいくものを編めて
達成感もありましたし、
私も編みものができるんだって思いました。
編んだ当初は嬉しくて、
しょっちゅう着ていた記憶があります」 - アランの作品を中心に、
ほかにもベビーアルパカのカーディガンやマフラー、
ニットのスカートなど
一つ一つ丁寧に編まれていて、
大切に着ている様子が目に浮かびます。
- 好きな糸は、アラン。
理想の風合いを追い求めて、
アヴリルさんとMiknitsが、
膨大な種類の羊毛から最適な組み合わせを選んだもの。
毛質の異なる4種類の羊毛をブレンドしました。
「やっぱりアランが好きですね。
糸次第で柄が綺麗に出るかどうか、
こんなにも左右されることをこの糸で知りました。
なんの変哲もないように見えるけれど、
すごく編みやすいし、
長く愛される理由がある頼もしい糸。
三國さんと弊社の先代・福井雅己が、
思いを込めてつくったことが伝わってくる気がします」
(次回は井上さんの可愛い道具や置きものをご紹介。)
写真・川村恵理
2022-03-16-WED
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キットのような編みものの本、
『Miknits TO GO』販売中です。おうちで、バスの中で、公園で。
どこでも、だれでも、気軽に編みものを楽しんでほしい。
そんな思いがつまったムック本「Miknits TO GO」。
三國さん監修の編み図と編み針、
オリジナルのアラン糸がセットになっているため、
この一冊で作品を編みはじめることができます。
no.3は葉っぱ柄のベレー帽「木の葉のタム・オシャンター」、
no.4は編み込み柄が素敵な「オーロラミトン」を編めます。