こんにちは。ほぼ日の永田泰大です。
オリンピックのたびに、
たくさんの投稿を編集して更新する
「観たぞ、オリンピック」という
コンテンツをつくっていました。
東京オリンピックでそれもひと区切りして、
この北京オリンピックはものすごく久しぶりに
ひとりでのんびり観戦しようと思っていたのですが、
なにもしないのも、なんだかちょっと落ち着かない。
そこで、このオリンピックの期間中、
自由に更新できる場所をつくっておくことにしました。
いつ、なにを、どのくらい書くか、決めてません。
一日に何度も更新するかもしれません。
意外にあんまり書かないかもしれません。
観ながら「 #mitazo 」のハッシュタグで、
あれこれTweetはすると思います。
とりあえず、やっぱりたのしみです、オリンピック。
◆永田のTwitterアカウントはこちらです。
Twitter:@1101_nagata
◆投稿フォームはありませんが、
感想のメールはこちらからどうぞ。
>メールを送る
16 カーリング
1点取らせるスポーツ。
- たいていのスポーツは、たくさん点をとったほうが勝つ。
芸術点やスコアを競うスポーツも、
数字がいいほうが勝つ、と思えばいいと思う。 - だから、スポーツを観ながら応援するときは、
「勝て!」「点をとれ!」というのが
まずは第一段階としてのおもしろがり方だ。 - ここまではいいじゃん?
問題はこのつぎだとぼくは思っている。 - 勝つために、つまり点をとるためになにをしているか。
あるいは、点をとらせないためになにをしているか。
これがわかるとスポーツはもっとおもしろい。
この第二段階のおもしろがり方ができるかどうかが、
その競技をたのしむ大きなカギだとぼくは思う。 - たとえば、蹴ったシュートが入るかどうかとか、
投げたボールで三振がとれるかどうかとか、
7メートルのバーディパットが入るかどうかとか、
そういうフィジカルな部分での決定率は
いったん運に任せると考える。 - 練習によってその確率は安定させることができるけど、
いったんそれは考えないようにする。 - ぎりぎりのところのフィジカルなラストショットが
決まるかどうかが運だとすると、
勝つためにできることは、
「いかに多くのラストショットを打つか」だ。
つまり、母数を増やすことが、
いずれ点が入ることにつながる。 - 逆に、守備的にいえば、
「いかに多くのラストショットを打たせないか」、
つまり、いかにクジを引かせないかが、
自分たちの勝利の確率を高めるということになる。 - そのようにして、
勝つために、あるいは勝たせないために、
なにをしているかが理解できると、
スポーツ観戦のセカンドギアがガチャンと音をたてて入る。 - どこをどう発見しておもしろがるかは、
人によって好みが違うと思うけど、
ぼくにとってカーリングという競技を観るうえでの
セカンドギアは「1点取らせる」ということだった。 - 点を取るスポーツなのに、相手に1点取らせるんだよ?
そんな構造ある? - 説明すると、カーリングというスポーツは、
10のエンドに分かれていて、
ひとつのエンドごとに
両チームが8個ずつストーンを投げる。 - そのとき、どっちのチームが先に投げるかによって、
そのエンドの有利不利が変わってくる。
具体的にいえば「後攻が有利」だ。
これはジンクスではなく、はっきりと、
カーリングは「後攻が有利」なスポーツなのである。 - そして、どちらかが点を取ると、
点をとったほうがつぎのエンドで先攻となる。
このあたりのルールが絶妙だ。 - 後攻のチームに点が入りやすいスポーツだけど、
点が入ると先攻と後攻が入れ替わってしまう。 - 「ゲームとはジレンマのことである」というのは
名作『ダービースタリオン』の生みの親である
薗部博之さんのことばだが、
おもしろいスポーツのルールには
絶妙なジレンマが組み込まれている。 - 後攻のチームに点が入りやすいが
点を取ると相手が後攻になってしまう。 - だとすると、カーリングという競技では、
自分が後攻のときに2点以上取り、
相手が後攻のときに1点でおさえていくと、
勝つ確率が高くなるということになる - これを覚えておくと、
カーリング観戦がきっとたのしくなる。
「自分が後攻のときは、2点以上取りたい。」
「相手が後攻のときは、1点だけで抑えたい。」 - 北京2022オリンピック、女子カーリング準決勝、
日本対スイスは熱戦だった。
全体に両チームの守備がすぐれていて、
ともに最低限の得点を「取らせながら」進んでいった。 - 個人的なクライマックスは第9エンドだった。
そこまで、7対5と日本がリード。
第9エンドはスイスが後攻。 - だとすると、日本はスイスに1点を取らせて、
7対6にして最終エンドを後攻でむかえたい。
最悪、スイスに2点取られたとしても、
7対7の同点という状態で、
有利な後攻で最終エンドをむかえられることになる。 - しかし、ストーンを6個投げ合った状態で、
日本はかなりまずい状態に陥っていた。 - ハウスのなかにはスイスのストーンが4個。
一方、日本はゼロ。 - 残されたストーンは
藤沢五月選手の投じる2個しかなかった。
大量失点の可能性が高いことは、
にわかファンにもよくわかった。 - しかし、藤沢選手は1投目で
スイスの3つの石を動かして2個を外に出し、
自分のストーンもファーストストーンにした。
そして最後の1投で相手の石をふたつ外へ弾き出し、
スイスのラストストーンが決まらなかったこともあって、
大事な大事な第9エンドを、
まさに「1点だけ取らせる」ことに成功した。 - その流れのまま、最終エンドは大きな波乱なく
(最後のショットはめちゃくちゃどきどきしたが)、
後攻の日本が1点を取って試合が終わった。 - 決勝進出。
平昌オリンピックの銅メダルを上回った。 - ロコ・ソラーレはここまでいつも
ぎりぎりの戦いを勝ち上がってきた。 - 先に3勝したほうが日本代表となる
北海道銀行との決定戦ではいきなり2連敗。
そこから開き直って3連勝して、
ぎりぎりで日本代表となった。 - 北京2022オリンピック出場枠をかけて戦う
世界最終予選では一位通過での決定ののがしたが、
2〜4位で2枠をかけて戦うプレーオフで勝利して
ぎりぎりでオリンピック出場を果たした。 - そしてご存知のように、昨日まで行われていた
北京2022オリンピックの総当りの予選リーグでは、
最後の試合を勝ちきることができず、
敗退したと思いこんでいたところから、
他国の結果によって思いがけず
ぎりぎりで準決勝へ出られることになった。 - そして今日、強豪スイスをやぶり堂々の決勝進出。
そんなドラマの完結が、オリンピックの最終日に
残されているだなんて、なんて幸せなことだろう。 - 準決勝を突破したロコ・ソラーレ。
勝った瞬間にメダルが確定するから、
観ているぼくらにとって準決勝の勝利は
ある意味ゴールだったりする。 - ところが、オリンピックに出ている人たちは、
準決勝に勝ったときよろこびはするものの、
すぐに静かなモードに入る。 - 夢にまで観てきた金メダルへの
具体的な挑戦がすでに始まっているからだろう。
(つづきます)
2022-02-19-SAT
-
ハッシュタグ「#mitazo」をつけてTweetしよう!
北京2022オリンピックを観ながら「#mitazo」を読んだり
「#mitazo」をつけてTweetしたりすると最高にたのしいです。
Twitterのアカウントを持ってない人は、
もういっそ、この機会にはじめちゃいましょうよ。
この下には最近のTweetがいくつか自動で表示されています。これまでの「観たぞ!」シリーズ
2004年 アテネオリンピック
『昨夜、オレは観た!』2006年 トリノオリンピック
『観たぞ、トリノオリンピック!』2008年 北京オリンピック
『観たぞ、北京オリンピック!』2010年 バンクーバーオリンピック
『観たぞ、バンクーバーオリンピック!』2012年 ロンドンオリンピック
『観たぞ、ロンドンオリンピック!』2014年 ソチオリンピック
『観たぞ、ソチオリンピック!』2016年 リオデジャネイロオリンピック
『観たぞ、リオデジャネイロオリンピック!』2018年 平昌オリンピック
『観たぞ、平昌オリンピック!』2021年 東京オリンピック
『観たぞ、東京オリンピック!』オリンピックじゃないけど
2005年 全国高校野球選手権大会
『おらが夏の甲子園。』2007年 大阪世界陸上
『観たぞ、大阪世界陸上!』wiki 読者がつくる「観たぞ」用語集・ミタゾペディアはこちら。
https://w.atwiki.jp/mitazo/Twitter 担当・永田のTwitterはこちら。
https://twitter.com/1101_nagata