みなさま、お久しぶりです!
最近、ほぼ日を読みはじめたという方は、
はじめまして、どうぞよろしく!
かつてテレビのドラマを雑談80%で、
ドラマ好きの3人が徹底的に語り合うという
「ほぼ日連ドラチェック」という読み物がありまして、
それなりに、いや、けっこう人気だったのですが、
10年以上続いたので、もういいだろう、
ということであっさりばっさり終了しました。
それが今回、久々に復活です。
なぜなら、連ドラチェックメンバーのひとりだった、
森下佳子さんが脚本を手掛ける、
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が
スタートするからです! パチパチパチ!
森下さんが最初に手掛けた大河ドラマ、
『おんな城主 直虎』がはじまるときもやりましたが、
今回もNHKに行ってきました!
メンバーはもちろん不動の3人、
ほぼ日の超弩級テレビっ子、あややと、
漫画家の荒井清和さん、そして森下佳子さんです!
物語の舞台は文化繚乱の江戸中期、
主人公は蔦屋重三郎ということで、
めちゃめちゃおもしろそうな『べらぼう』を、
放送直前に大プッシュしますよー。
魂と味わいのイラスト/サユミ
ほぼ日随一のテレビッ子。
どんなに忙しくても録画したドラマは必ずチェック。
幼少期から蓄積されたテレビの知識は無尽蔵。
最近はネット配信ドラマが増えてたいへん。
漫画家・イラストレーター。高品質な似顔絵には定評が。
ドラマ、スポーツ、バラエティー番組などが好き。
キャラクターデザインを手がけたゲームの最新作は
『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ
~追憶の流氷・涙のニポポ人形~』(Nintendo Switch)
脚本家。2000年デビュー。
代表作に『世界の中心で、愛をさけぶ』『JIN -仁-』
『義母と娘のブルース』『天国と地獄~サイコな2人~』
連続テレビ小説『ごちそうさん』
大河ドラマ『おんな城主 直虎』ドラマ10『大奥』など。
第32回向田邦子賞、第22回橋田賞受賞。
- あやや
- いま続々とキャストが発表されてますけど、
みなさん、魅力的ですよねー。
資料から読み上げると‥‥。
喜多川歌麿が染谷将太さん、
田沼意次が渡辺謙さん、平賀源内が安田顕さん。
横浜流星さんに本づくりを
指南するのが片岡愛之助さん。
解体新書を出版するのが里見浩太朗さん
石坂浩二さんは老中首座‥‥。
- 荒井
- 吉原界隈の女郎、花魁たちのキャストも華やかです。
小芝風花さん、福原遥さん、安達祐実さん、
飯島直子さん、水野美紀さん、かたせ梨乃さん‥‥。
- あやや
- いやあ、さすが大河、
登場人物、多いですねー!
- 森下
- 多いのよー。
しかも、この時代って戦がないでしょ?
だからみんな、なかなか死ななくて‥‥。
- 荒井
- あ、はい(笑)。
- あやや
- それはあれですか、
書き続けるのがたいへんなんですか。
- 森下
- いや、まあ、なんというか、
ひとりひとりの登場人物みんなに
愛しい気持ちを持って、なんとかして、
その人らしく書いてあげたいなと思ってるし、
それはもうやらなきゃいけないことだと
もちろん思ってるんだけど、
正直、これだけ増えてくると‥‥
ひとり死ぬと、ほっとするという感覚に。
- 荒井
- 大河ドラマの脚本家ならではの
コメントですね(笑)。
- ──
- それは、死んでよかったというのではなく、
きちんとひとりを書き終えた、と。
- 森下
- 言い方悪かったね(笑)。
ちゃんと「しまえてホッ」っていうか。
あ、念の為「生きててもドラマの舞台からは退場」
も概念的に含みます。
- あやや
- たしかに江戸時代中期って、大きな戦もなく、
いろんな文化が花開いていく時代ですもんね。
- 荒井
- でも、まるっきり平和かというとそうでもなく、
政治的な圧力とか、改革とか、いろいろあって、
なかなかたいへん時代なんですよね。
- あやや
- それってなんかちょっと、
我々の暮らすいまの時代にも重なりますね。
景気とか、商売の大きな変化とか。
だって、蔦屋重三郎がやってることって、
ベンチャー的な動きだったり。
- 森下
- もうね、まったくそうなの。
調べれば調べるほど、この時代といまって似てて。
そもそもこのオファーがあったときは、
蔦屋重三郎の時代に特別詳しいわけでもない
私が書いてもいいのかなって迷ったんですよ。
でも、いざ調べはじめてみたら、
蔦屋重三郎のやり口って、
これ、リクルートじゃないか、って思って。
- あやや
- ああ、たしかに。
- 荒井
- なるほど。
- 森下
- つまり、情報誌をつくって、
一般人が情報を比較検討できるように
しちゃえばいいじゃん、とか。
吉原遊郭のガイドブックともいえる
「吉原細見」自体は、
蔦屋重三郎がつくったわけじゃないんですけど、
彼はそれを薄く、平たくして、
情報を正確にわかりやすくして、っていう発想は、
すごくリクルート的で。だからこれは、
私が書いてもいい人なんじゃないかなと。
- 荒井
- なるほど、森下さんの経歴的にも。
- ──
- 注釈です。
森下佳子さんは元リクルートなのです。
- 森下
- そう。だから、つながりを感じたというか、
蔦屋重三郎のお話をいただいて、
さてどうするかって考えたとき、
「この人に私は共感できるんじゃないかな、
あんまり詳しくないけど、私が書いても
許される人なんじゃないかな」
と思ったんです。
- 荒井
- おもしろい動機ですねぇ、それは。
- あやや
- 森下佳子作品のファンとして言わせてもらうと、
このテーマは森下さんに合ってるというか、
森下さんにぜひ書いてほしいと思えるんですよ。
というのも、森下さんの作品って、
どの時代のどんなテーマのものでも、
現代の私たちが暮らす
「いま」を感じさせるじゃないですか。
- 森下
- ああ、そうなのかな。
- あやや
- そう思うんですよ。
私、ちょっと前の森下さんの、
奈緒ちゃんの漁港のドラマも大好きで。
- 荒井
- 『ファーストペンギン』。
- あやや
- そうそうそう。あのドラマも、
いまの時代に暮らす私たちに必要なことを
しっかりテーマにしてたと思うんです。
だから、きっと『べらぼう』もそうなんですよ。
- 森下
- ありがとう、ホッとするよ。
ん? 思えば私、既得権益と戦う人の話ばかり
書いてるかもしれない(笑)。
- 荒井
- あー、言われてみればそうかも。
- あやや
- 主人公の蔦屋重三郎も、
いまの時代に求められてる人物像だと思うんです。
要するに、人が求めてるものと自分の楽しみとを
見事に合致させながら事業をつくる人ですよね。
すごく柔軟で、でもちゃんと芯はあって、
戦いながらも変化していく。
- 荒井
- 私はあんまり深く知らないんですけど、
蔦屋重三郎って、基本は、編集者なんですか?
- 森下
- いろいろやるんですけど、
いちばんコアになってる仕事は
現代でいうと編集者かもしれないですね。
でも、最後には出版社をつくるから。
- 荒井
- じゃあ、経営者でもあるんだ。
- あやや
- 編集者であり、経営者であり。
お店を運営したりもしますよね。
事業のかたちも、いまでいう
芸能事務所みたいな感じでもあるし、
そういう意味ではプロデューサーなのかな。
- 森下
- そうそう、いま蔦屋重三郎がいたら、
もう、大プロデューサーだよね。
だからおたくの社長とかとも、
ちょっと似てるんじゃない?
- 荒井
- あ、糸井さん。
仕掛けるとか、仕組みをつくるとか、
イメージは重なりますね。
- あやや
- あああ、なるほどー。
いや、でも、横浜流星さんが
糸井を演じるのはありえない!
- ──
- そういう話じゃないでしょう。
- あやや
- でも、これ、ビジネスの物語として考えると、
後半はどんどんおもしろくなりますね。
だって、お店を拡大したり、
拠点を動かしたりするわけでしょう?
いまは若々しいあの横浜流星さんが、
「この本屋、買収しちゃおう」とか、
「日本橋に移って勝負しよう」とか
決断していくわけでしょ?
- 荒井
- ああ、それは、おもしろそうですね。
- あやや
- 絶対、おもしろいですよね!
- 森下
- 言っちゃうと、いままさに
「日本橋に移る」あたりを書いてるよ。
- あやや
- そうなんだ! ひゃあ、たのしみ!
私ね、このドラマがあるから言うんじゃなくて、
ほんとに蔦屋重三郎って興味があって。
ちゃんと知っときたいなあと思ってたんですよ。
だから今回、『べらぼう』で勉強できるなと思って。
蔦屋重三郎のやったことって、いま仕事してる人は
絶対みんな一回勉強した方がいいと思うんですよね。
- 森下
- そうなんですよね、江戸時代の話なんですけど、
けっこうビジネスもの、というか。
戦はないけど、ビジネスの戦いはある。
- 荒井
- しかし、それで1年ってけっこう長いですね。
戦国時代とか幕末だと、
みんながしっている合戦や事件が
ところどころに組み込まれるから
構成しやすそうですけど、
蔦屋重三郎の時代だけで1年は、
なかなか難しいんじゃないですか?
- 森下
- あ、でもね、あるっちゃあるんですよ。
たとえば、通史的に言うと、天明の大飢饉。
浅間山が噴火して大飢饉が起こる。
そこから一連の米騒動、政権の転覆。
- あやや
- ああ、たしかに、知ってる、知ってる。
- 森下
- あとは出版統制がありますし、
平賀源内がおかしなことをやらかしたり、
いろんな人が逮捕されたり。
だから、事件をどこまでを事件ととらえるか、
っていうことだと思いますね。
蔦屋重三郎の周囲に起こること、
吉原とかも含めて、江戸の街に起こる
さまざまなことを事件として数えるなら、
めちゃくちゃ事件は多いんですよ。
- 荒井
- 意外とネタには困らないというか。
- 森下
- だから、歴史の教科書に出てくるような
大きな出来事を基準に考えると、
平坦に見える時代なのかもしれないけど、
市井でなにが起きていたのか?
っていうふうに解像度を上げると、
蔦屋重三郎は、めちゃめちゃ忙しい。
とくに出版をはじめてからは、
史実と照らし合わせてみると、
「こんなに何冊もの本を、
いつどうやってつくってたんだろう?」
って不思議に思えるくらい。
- あやや
- うわあ、そうですね。
だって、江戸時代ですものね、
江戸時代に本をつくるのって、たいへんですよ!
歩いて移動ですよ、どこに行くにも!
- ──
- そこ?
- あやや
- 誰かの本をつくろうとするでしょ?
本を書いてくださいってお願いに行くでしょ?
そのとき、歩きなんですよ!
日本橋から新宿まで歩くのだってたいへんですよ?
もう、えらいことですよ!
- 森下
- あと、電気がないから、すぐ暗くなるよ。
- あやや
- ほんとだ! たいへん!
12月とか5時には真っ暗ですよ!
本とかつくってられないですよ!
- 荒井
- そういうドラマなのか?
- 森下
- だから、暗くなると、あの人たちは、
吉原に遊びに行くのか‥‥。
- あやや
- 暗くて本がつくれないから、吉原に!
そうかそこで「吉原細見」をつくるんだ!
つながってきましたね。
- ──
- 勝手につなげるんじゃありません。
(つづきます)
2024-12-31-TUE