旧石器、縄文、弥生、古墳時代。
帽子作家でイラストレーターのスソアキコさんは、
そんな時代の文化に、とても興味を抱いています。
いつでも、ふつうに、大昔のことを考えている人です。
だから気軽に「やあやあ」と、
まるで友だちに会いに行くように、
どこかの土偶やハニワを訪ねて歩くのです。
「やあやあハニワさん、なにかおもしろい話ある?」
いにしえの時代のあれやこれやを教えてくれる、
スソさんの、のんびりレポートを、どうぞ。

※これまでのスソさんのレポート、
「ひとり古墳部」はこちらからどうぞ。

>スソアキコ

スソアキコ

帽子作家/イラストレーター。

石川県生まれ。
金沢美術工芸大学 商業デザイン科卒業。
(株)資生堂入社 宣伝部(宣伝制作室)配属。
在籍中よりイラストレーターとして活動を始める。
同社を退社後、帽子作家として活動を始める。
ギャラリーでの帽子作品の発表と並行して、
雑誌・CM・書籍の挿し絵など、
イラストレーターとしても活躍中。

スソさんのウェブサイトはこちら。

〈スソさんのお仕事〉
・花椿 帽子制作(資生堂 1993-1997)
・ウインドウディスプレイデザイン
(エルメスジャポン 1988-2001)
・パリコレクション(タオコムデギャルソン 2011)
・CMスタイリング(JT.キリン.日清 他)
・イラストレーション・キャラクターデザイン
(資生堂.トヨタ. NTTドコモ.日立 他)

〈スソさんのほぼ日のコンテンツ〉

スソアキコの ひとり古墳部
古墳と山高帽展@TOBICHI②
スソさんのたのしい帽子教室。
スソさんのせかい

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前回に続き、譽田さんと私は、
古代メキシコ展(内覧会)を見学しています。

まだ、赤い壁のマヤ文明エリアにいます。

マヤの人々は、天体観測をし、
それに基づいた暦を作っていました。

暦に従って主食であるトウモロコシを育てることと同時に、
祭祀や儀式を行うことが、
マヤ世界の秩序を維持するために
必要不可欠だと考えていたようです。

これは、『星の記号の土器』。

太陽と月の他に、
星の中でも特に重要視されていたのが金星です。

お皿の中心にある十字形と4つの円が、
金星と星を表わしていると推定されています。

人のような姿ですが、金星の神さまということなのかな?

それにしても、とてもモダンな図案で、
8~9世紀のものということに驚いてしまいました。

マヤの都市チチェン・イツァで見つかった石彫です。
普通に見ると、
幾何学模様の装飾のようなんですが‥‥。

なんと、金星と太陽の動きを表しているんです。

左端は金星、その横の縦棒は、数字の5を表しています。

右の中心に太陽、
それを8個の丸=数字の8で囲んでいます。

つまり、金星が5=太陽が8

金星の周期は584日×5=2920

太陽の周期は365日×8=2920

すごーーい!
どうやってそれがわかったんでしょう?

前回、球技をご紹介しましたね。

トニナという都市で見つかった石彫で、
球技を表わしていて、
ボールを挟んで、二人の王さま(らしき人物)が
睨みあっています。

上の方に細かく刻まれているのが、マヤの文字。

この中には数字を表わす文字も含まれていて、
「7エブ5カンキン(727年11月4日)」
「トニナ王 キニチ・イチャーク・チャパト」
「ユクノーム・トーク・カウイール王」
などが読み取れるそうです。

マヤの文字って、
複雑な絵模様で構成されてますが、
漢字の「へん」と「つくり」「かんむり」
のような組み合わせでできていて、
日本語と似てるところもあるんですよ。

「顔」がなんだかキャラっぽいんですよね~。

こちららはマヤの都市パレンケで見つかった
「96文字の石板」で、783年に彫られたもの。

パカル王がつくった建物のことや、
建物にある王座で歴代の王が
即位したことなどが書かれています。

マヤでは紙に筆で文字が書かれていましたが、
それと同じように流れるような曲線で
石に彫られているのがすごいことです。

マヤの人々は1つの共通言語があったのではなくて、
マヤ諸語と呼ばれるのは20種類以上もあるんだとか。

でも、こうやって記されている文字は、
バリエーションなどはあるものの、
概ね共通の文字なんだそうです。

ちょっと、細かくて、ぼーっとしてきました。

この文字を解読した人たちって天才ですよね~。

図録によると、
最初に解読のきっかけを作ったのは、
旧ソ連の言語学者ユーリ・クノロゾフ氏で、
日本語との類似点に気がついたことからだった
ということです。

えー、すごい!  日本語が解読のキーだったなんて!!

本の中でも、数字についての頁がありますよー。

右頁は、棒と丸で書く場合、
左頁は、頭文字で書く場合です。

そして、ゼロがあったということもすごいことです。

ゼロは貝で表されています。

これも後で「そうか~」と唸ることが出てくるので、
覚えておいてくださいね。

ついに、この古代メキシコ展の目玉コーナーです!

マヤの「赤の女王」、
スペイン語でレイナ・ロハ。

パレンケの13号神殿のお墓から1994年に見つかった、
パレンケ王(在位616~683年)の妃とされています。

お名前はイシュ・ツァクブ・アハウさん。

埋葬された時の姿が復元されています。

見つかった時はガイコツ姿(ごめん!)で、
装飾品は滑り落ちて
真っ赤な辰砂(しんしゃ)に覆われていたようです。

ちなみに、辰砂とは、
硫化水銀からなる鉱物、水銀朱のことです。

日本では「丹(に)」と呼ばれ、
古墳でも使われていたり、
漢方薬や朱肉にも用いられているとか。
防腐剤としての効果もあるそうです。

頭はやはり、頭蓋変形で尖り頭!

頭飾りは、大きな鼻‥‥
雨の神チャック(チャフク)です。

農耕にとって重要な気象を司ることとや、
四方角を守護する神さまです。

てことは、冥界の四方角も守ってくれるのかな~?

胸には、クブと呼ばれるケープに、石がびっしり。

あ、一番下に猿の頭がちょこんとついてる!

横に置かれたウミギク貝とその中の小さな像。
図録によれば、これがとても重要なんだとか。

貝は水中を着想させ、
原初の世界を想起させるもの。
像は肉体が滅びた後も
姿を留めておくためのものだそう。

数字のゼロは貝で表わしていましたね。

貝は原初の何もない世界を
象徴するものなのかもしれません。
(あくまでもスソ個人の感想です)

死者を埋葬するときには、
思いや願い、世界観が表れますね。

それは古代も現代も、
どんな場所でも共通なのかな~と感じます。

(内覧会のレポートはつづきます)

〈お知らせ〉

TOBICHI東京にて、
『知られざる古代マヤ文明ライフ』発刊記念イベントが
はじまりました! 
この新刊に収録されているイラスト原画の展示と、
メキシコ雑貨の販売を行っています。
どうぞお気軽にお越しください! 

2023-07-13-THU

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