一枚の絵が完成するまでの過程を、
作家本人が解説するシリーズの第3弾。
今回はピクセルアーティストの
maeさんに連載していただこうと思います。
延々とつづく無限ループの世界。
やさしく、なつかしく、
どこか夢の中のようなおぼろげな風景。
maeさんのピクセルアートは、
どのようにして生まれているのでしょうか。
テーマ探しから完成までの3ヶ月間、
毎週木曜日に更新します。
- こんにちは。maeです。
今回はピクセルアートを描く前の準備として、
普段どんなことをしているのかをご紹介します。
- この作品のタイトルは「Drifter」です。
日本語で「漂流者」という意味なのですが、
まさにぼくが絵を描く前に
よくおこなっているのが「漂流」です。
自分の作品にとっては、
とても大事にしているテーマのひとつです。 - ぼくの作品の中に描かれる、
道路標識、給水タンク、コンビニ看板、
集合住宅、野良猫、処理場の煙‥‥。
これらは自分が世界を漂流する中で見てきた
「普遍的な温かさ」を感じるものです。
何が自分にそう思わせるのか、
言葉にするのは難しいのですが、
そんな感覚のかけらを拾い集めるために、
意識的に「漂流」する時間をとるようにしています。 - 実際の行為としては「散策」に近いですが、
自分や他人、人生について考えながら、
風や音をよく感じて、行き先を決めずに、
ぼんやりとまわりの風景を見るイメージというか‥‥。
それをぼくは勝手に「漂流」と呼んでいます。 - 漂流で向かう先は、
知っている場所でも知らない場所でも、
どちらでもかまいません。
普段の感覚と切り分けて、
素直なほんとうの自分に戻った状態で見ると、
そこにある「良さ」が見えてくるような気がします。 - また、何気ないものの良さに気づけるように、
自分自身も意味や理由にあまりとらわれず、
偶然存在しているイメージでいます。
(逆にそれ自体に思考がとらわれないようにもします) - そんな漂流の途中で
何気なく撮った最近の写真をいくつか、
フォルダの中から紹介します。
- こんな風に何気なく記録しています。
「普通に写真撮ってるだけじゃない?」と言われたら、
その通りかもしれませんが‥‥。 - そして後になって、
自分の中で咀嚼された風景がふと思い浮かんだら、
忘れないうちにノートにささっと走り描きします。
細かい部分が削がれて、
自分の中で何が印象に残っているのか、
何を描きたいと思っているのかが、
そのときになんとなく見えてきます。
- 最近は手のひらサイズのノートを使っています。
「ポケットに入れて持ち運べる」
「いつでもすぐ取り出せる」
「小さくてそんなに描き込めない」など、
そんなあたりが気に入っています。
こうしたラフの段階までは、
アナログな方法で考えることが多いです。 - 写真の最後に出てきたぼくの祖母の家は、
小さな路地を入ったところに玄関があって、
そこから見える細い空の向こうに、
昔はツタだらけの大きな建物がありました。
それが子供のころはとても印象的でした。 - 最近撮影している写真を見ても、
日陰から日向を見ているものが多いので、
なんとなくそういう陰影が、
いまいちばん描いてみたいものなのかもしれません。 - まだいろいろアイデアを練っているところですが、
そのあたりの「陰影」というモチーフが、
今回の絵のテーマになりそうな気がします。 - ということで、
このつづきはまた次回。
次からはデジタル上で作業をすすめます。 - それではまた!
(つづきます)
2024-05-23-THU