一枚の絵が完成するまでの過程を、
作家本人が解説するシリーズの第3弾。
今回はピクセルアーティストの
maeさんに連載していただこうと思います。
延々とつづく無限ループの世界。
やさしく、なつかしく、
どこか夢の中のようなおぼろげな風景。
maeさんのピクセルアートは、
どのようにして生まれているのでしょうか。
テーマ探しから完成までの3ヶ月間、
毎週木曜日に更新します。

>maeさんのプロフィール

mae(まえ)

ピクセルアーティスト

1993年生まれ。
神奈川県出身。元小学校教諭。
現在は主にMV(CDジャケット)、
CM等で映像作品やループGIFを中心とした
ピクセルアートを制作している。
「Shibuya Pixel Art Contest 2020」最優秀賞受賞。
2022年にリリースされたゆずの『ALWAYS』では、
全編ピクセルアートのMVを制作して話題に。

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05 絵手紙

 
こんにちは。maeです。
前回はサクサク描き進めていたのですが、
なんだか急に、とっても苦戦しはじめました。
「キャンバスがもっと広いほうがいいのかな?」と、
ぐーっと引き伸ばして描いてみたり、
しばらくして「やっぱり広すぎるか‥‥」と、
また縮めてみたり。
そのたびに描き直しては、
「さっきからあんまり進んでないな‥‥
いったい何が正解なんだ?」と
考え込んでしまう時間が増えてきました。
スムーズでかっこいい制作過程を
お見せしたいところでしたが、
せっかくなので、苦悩を見てください。
 
自分自身のイメージなのに、
見失ったり、わからなくなったりすることがあります。
そんなときはいろいろやって、
ひとつずつ確かめていきます。
自分が描きたくて描いているのですから、
「こんなもんでいいか‥‥」と妥協せず、
とことんまでこだわりたいです。
そのこだわりが微々たる差でも、
きっと絵を見る人には伝わると思いますし、
何より後から見返したとき自分自身に伝わります。
「こだわって描く=心を込めて描く」と言える気がします。
ぼくには年に数回、
手紙を書いて送ってくれる人がいるのですが、
忘れた頃に届くその便りが、
いつもなんだかうれしくて、
ささやかな心の支えになっています。
便箋を買って、文字を書いて、
切手を貼って、ポストまで歩いて‥‥、
少しの言葉を伝えるだけでけっこうな手間です。
でも、そういう手順を経て届いたものを手に取ると、
不思議なぬくもりを感じます。
差し出す相手のことを思って、
きれいな便箋を選ぶことも、
できるだけ字を丁寧に書くことも、
真っ直ぐに切手を貼ることも、多分愛情で。
書いてある内容だけが手紙じゃないんだなと思います。
そこから教わって、
手紙を送るようなつもりで
絵を描くのをいつも意識しています。
インターネットのポストの向こうで誰かに届いたときに、
手紙を受け取ったときのようなうれしい気持ちを
少しでも感じてもらえたらいいなと思いながら。

 
そして、ちょっと考えがまとまってきました。
路地をサイドに広く見せようと思い、
キャンバスを横長にして描いていたのですが、
やっぱり路地はせまいほうがよかったです。
(横幅を320pxから、270pxにしました)
せまいからこそ、
その隙間に見える空との対比がよかったんだな、と、
どちらも確かめてみてわかりました。
そういえば、子どもの頃、
せまい隙間にはさまるのが
好きだったのを思い出しました。
ソファの生地と生地のあいだとか、
クローゼットの中とか、
消火器を置くような凹んだ壁とか。
みんなそうだったのかな。
その頃から感覚が
たいして変わってないのかもしれません。
次回はこの続きをコツコツ進めていきたいと思います。
また来週もよろしくお願いします!

(つづきます)

2024-06-13-THU

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