一枚の絵が完成するまでの過程を、
作家本人が解説するシリーズの第3弾。
今回はピクセルアーティストの
maeさんに連載していただこうと思います。
延々とつづく無限ループの世界。
やさしく、なつかしく、
どこか夢の中のようなおぼろげな風景。
maeさんのピクセルアートは、
どのようにして生まれているのでしょうか。
テーマ探しから完成までの3ヶ月間、
毎週木曜日に更新します。

>maeさんのプロフィール

mae(まえ)

ピクセルアーティスト

1993年生まれ。
神奈川県出身。元小学校教諭。
現在は主にMV(CDジャケット)、
CM等で映像作品やループGIFを中心とした
ピクセルアートを制作している。
「Shibuya Pixel Art Contest 2020」最優秀賞受賞。
2022年にリリースされたゆずの『ALWAYS』では、
全編ピクセルアートのMVを制作して話題に。

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07 晴れた空の呼び方

 
こんにちは、maeです。
絵が進むにつれて、
だんだん心や身体のコンディションが
良くなってきている気がします。
「どうなるかなぁ‥‥」という不安が、
「どうなるかなぁ‥‥!」という期待に
だんだん変わってきているのかな。
この「!」が重要なんですね、きっと。
今回は、絵の土台をすべて描き上げたいと思います。
いままで後ろの方に見えていた
ラフな部分とはここでお別れになります。
 
けっこう絵の雰囲気が出てきました。
いつのまにか、だいぶピクセルアートらしく
なってきたかなと思います。

 
一気に進んだ気がするので、
自分の中でポイントになっている部分を
いくつか紹介します。

 
ひとつめ。
このトタンのような屋根は自分の中でけっこう重要で、
路地を暗くするために、
そしてそこにぽつぽつと光を落とすために設置しました。
色付きの透明のトタンにして、
影に色をまとわせるのもいいなと思っています。
奥の砂利道も、あとから少しキラキラさせる予定です。

 
ふたつめ。
この辺りに物干し竿があったら、
路地に抜けができて、
窮屈すぎない感じが出るかなと思って描きました。
日当たりは悪そうですけど。

 
みっつめ。
最後まで残すかわかりませんが、
浮かんでいる幽霊を描きました。
高いところから何かを見守っているイメージです。
そういえば、絵のタイトルを、
どういうタイミングで決めるかですが、
ぼくの場合は最初から考えていることが多いです。
じつはタイトルを考えるのがけっこう好きで、
絵を描くのと同じように、
最初はぼんやりとしたイメージを仮でつけて、
だんだんブラッシュアップしていきます。
今回は「日陰から見た日向」「陰影」「青空」などの
イメージがあったので、
明るさや空にまつわる言葉が入りそうだな、
と思っていました。
「sky」だと普通すぎる、
「blue」だと他にも青い絵はいっぱいあるし、
と考えながら、
晴れた空の他の表現がないかなと探しているうちに
「fairweather」という言葉に出合いました。
「晴天」という意味ですが、
和訳したときに出てくるシンプルな
「clear sky」よりも少しひねった、
一枚挟んだような呼び方が好きです。
なので、いまのところは、
この言葉を入れたいなと思っています。
それに関連して
「fair-weather friend」という言葉も
おもしろいなと思いました。
「いい順境のときだけ寄ってくる友達」
という意味だそうです。
調子のいいときだけ擦り寄ってくる人っていますよね。
そうではなく、
「rainy-day friend」でありたいものです。(対義語)
こんな流れでタイトルについても考えています。
どんな絵に、タイトルになるか、
少しずつ見えてきている気がします。
また来週もよろしくお願いします!
今回もお読みいただきありがとうございました。

(つづきます)

2024-06-27-THU

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