一枚の絵が完成するまでの過程を、
作家本人が解説するシリーズの第3弾。
今回はピクセルアーティストの
maeさんに連載していただこうと思います。
延々とつづく無限ループの世界。
やさしく、なつかしく、
どこか夢の中のようなおぼろげな風景。
maeさんのピクセルアートは、
どのようにして生まれているのでしょうか。
テーマ探しから完成までの3ヶ月間、
毎週木曜日に更新します。
- こんにちは、maeです。
すっかり暑い季節になりました。
ぼくの絵を描いている部屋にはエアコンがなく、
最近は扇風機に直にあたりながら
アイスコーヒーを飲んで暑さをしのいでいます。
今のところ、それでなんとか対処できています。 - 窓はありますが、
以前そこから巨大なクモが入ってきたことがあって、
それ以来怖くて一度も開けられません。
虫が入る(かもしれない)か暑さかなら、
迷わず暑さを選びます。
その結果、部屋は密室状態となっています。
間近にせまった8月の到来が恐ろしいです。
(熱中症には気をつけます。)
- さて、今回は左手前にある
祖母の家(あーちゃんの家)を
描き込んでいこうと思います。 - 自分にとって一番思い入れのある建物なので、
「どう進めていったらいいかな‥‥」と
だいぶ悩みました。 - 思い入れが強ければ強いほど、
「本当に形にしていいんだろうか」と
不思議な迷いが生まれるんです。 - たぶん、絵として定着させるときに、
自分のイメージを自分自身で言い得ている絵でなければ、
そのイメージの純粋さが
損なわれてしまうような気がしてしまって
躊躇するのだと思います。 - でも、その思い入れと向き合うために
絵を描いているのだとも思います。 - 心の中だけにある「メメント」が、
いつの間にか薄れて消えてしまわないように、
見落としたまま離れて
自分を失ってしまわないように、絵に残す。
つまり、希望をもって歩むために、
なくてはならない感覚を絵として刻み込んでいるのです。 - ぼくの場合、それが風景だったのだと思います。
風景の中には、その時の純粋な気持ち、
育んでくれたものの温もり、出会えたことへの感謝など、
さまざまな感情が詰まっています。
絵を描いているときは、そんな世界の中を旅しています。 - では、描いていきます。
- だいぶ苦労しましたが、
いいバランスで描けたと思います。
子どもの頃のことを思い出しながら描いたので、
「#02漂流」の資料の写真の様子とは
かなり違っていますね。 - 今回は、アンテナ、風車、郵便受け、
ステッカー、植物、チョークの落書き、
クモの巣などが彩りを加えています。
クモは苦手ですが、クモの巣を描くのは好きです。
- 描きながら考えていたのですが、自分の絵は、
他のどこにも記録されていない心の中の風景を保存し、
いつでもその記憶や感情に
触れるための手段なのだと思います。 - その記憶が薄れてしまったとしても、
絵に触れることでその瞬間を再び思い出すことができる。 - そして、それは個人的な感覚の中にとどまらず、
大人も子どももそれぞれもっている
大切な記憶や感情を思い出すための
「メメント」となり得るのだと思っています。
- そういえば、こんな写真が残されていました。
祖母の家の車庫の前で
水遊びをして楽しそうにしているぼくです。
この時の細かいことは忘れてしまっていますが、
ここにいた感覚は覚えています。 - ということで最後に、
車庫の中に黄色いバケツも描き加えてみました。
- 今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もお読みいただけたらうれしいです。
(つづきます)
2024-07-25-THU