一枚の絵が完成するまでの過程を、
作家本人が解説するシリーズの第3弾。
今回はピクセルアーティストの
maeさんに連載していただこうと思います。
延々とつづく無限ループの世界。
やさしく、なつかしく、
どこか夢の中のようなおぼろげな風景。
maeさんのピクセルアートは、
どのようにして生まれているのでしょうか。
テーマ探しから完成までの3ヶ月間、
毎週木曜日に更新します。

>maeさんのプロフィール

mae(まえ)

ピクセルアーティスト

1993年生まれ。
神奈川県出身。元小学校教諭。
現在は主にMV(CDジャケット)、
CM等で映像作品やループGIFを中心とした
ピクセルアートを制作している。
「Shibuya Pixel Art Contest 2020」最優秀賞受賞。
2022年にリリースされたゆずの『ALWAYS』では、
全編ピクセルアートのMVを制作して話題に。

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13 Rainy Day Ghost

 
子どもの頃から心のすみっこで、
「霊が見えるようになりたいなぁ」と
願い続けている気がします。

 
なんでだろう。
居ることを確かめたいだけなのか、
ご先祖さまに感謝を伝えたいのか、
交信して人助けでもしたいのか、
「霊になるってどんな感じなんですか」と尋ねたいのか、
はっきりした理由はわかりません。
でも、こんなこと全部できたらいいなと思います。
自分がなぜ生まれて、何のために努力して、
そしてバトンをつなぐのか。
ついそんなことを考えながら
絵を描いていることが多いので、
同時に霊的なことについても
いろいろと考えることがあります。
「霊」というのは、ぼくの中では
「どこにもいないけど、どこにでもいる、
いつでも接続できる意識のエネルギー」
というイメージです。
絵の話をしていないようですが、
じつはこれが絵にもつながっていると思っています。
こうした思いを抱きながら、
残りのアニメーションを仕上げていきます。
 
自分がもしも霊になったら、
大切にしていた人たちのこと、
そっと見守りたいなと思います。
でも、それって霊になってからじゃなくても、
いまできることでもあると気づきました。
自分が誰かのことを想うように、
誰かが自分のことを想ってくれている。
生きているか、死んでいるかに関わらず、
寄り添う想いそのものにエネルギーがある。
そして、霊には「たましい」という読み方もあるそうです。
そう考えると、
もっと自由に解釈していけるのかもしれません。
こんなことを考えながら、
「悲しいときに寄り添ってくれる存在」
という意味を込めて、
「Rainy Day Ghost」というタイトルを
絵に付けることにしました。
最後に虹を描き加え、
もう一度色を調節して、
長い時間見つめてきた絵がついに完成しました。

『Rainy Day Ghost』(270 × 480pix) 『Rainy Day Ghost』(270 × 480pix)

 
長い時間見つめすぎていたので、
いまはまだあまり客観視できていません。
でも、優しい絵を描けたのではないかなと思います。
いまは言葉があまり出てこないのですが、
少しほっとしているような、
何も考えたくないような気持ちというのが
正直なところです。
(さっきまであんなにいろいろ考えていたのに)
自分の中に漂っていた思い出のかけらが
「絵」としてかたちになって目の前に存在しているのが、
なんだか不思議な気分です。
いまは落ち着いてゆっくり絵を見つめながら、
連載を通しての感想を次回に書きたいと思います。
完成まで作品を見守っていただいて、
ほんとうにありがとうございました。
作品を見ていただいて、
みなさんはどんなことを思い浮かべるのでしょうか。
何か少しでも、絵がみなさんの心に
寄り添うことができたならうれしいです。
最終回もぜひよろしくお願いします。

(最終回は8月22日に更新します)

2024-08-15-THU

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