いよいよ、福岡・大濠公園能楽堂での
ほぼ日の学校スペシャルが本番を迎えます。
目玉は、カクシンハンのメンバーによる、
ダイジェスト版「マクベス」。
そしてほぼ日の学校は、
春には大宰府への修学旅行も計画しています。
起業が多く、人口も増加中で、勢いのある福岡。
そこに新たな仲間を求めて出かけるのを前に、
深町さんと糸井、河野が意見を交換しました。
深町健二郎(ふかまちけんじろう)
音楽プロデューサー。
小さい頃ビートルズの音楽に出会って
ミュージシャンを目指す。
学生時代は陣内孝則のバンド「ザ・ロッカーズ」と
親交を深める。
ロッカーズ解散後、ギタリスト谷信雄と友に
「ネルソープ」を結成。
解散後、福岡に戻り、
ソラリアプラザの
イベントプロデューサーなどを経て、現職。
テレビやラジオの出演も多い。
日本経済大学芸能マネジメントコース教授。
蔵田隆秀(くらたたかひで)
1975年生まれ 宮崎県出身。
大学卒業後、西日本鉄道㈱入社。
鉄道事業本部、広報室、都市開発事業本部などを経て
2017年7月から現職(We Love 天神協議会事務局長)。
天神‘’まちづくり‘’の要 We Love 天神協議会
事務局長の蔵田隆秀さんと
天神まちあるき
9月のある日、学校チームが訪れた福岡では
まちのいたるところに音楽があふれていました。
その日開催されていたのはFukuoka Music Monthという
音楽の祭典のうちのひとつ、Music City Tenjin。
天神のまちぜんぶが音楽フェス会場に!
「天神ビッグバン」という
おおきなプロジェクトも進んでいくなか
ますます魅力的に変わりつつある天神。
点在するステージをめぐりながら、
天神のまちづくりをしている蔵田さんに
このまちのことを聞きました。
- ──
- 今日はごあんないをよろしくお願いします。
- 蔵田
- 天神のこと、なんでも聞いてください。
- ──
- この週末、天神のまちじゅうに
音楽ステージができているんですね。
- 蔵田
- 会場はぜんぶで9カ所あります。
そこで朝から夜まで、いろんな出演者による
音楽ステージやトークイベントが行われてます。
- ──
- さっきステージを見せてもらいましたが、
たくさんのひとでおどろきました。
おとしよりや、子どもたちもたくさんいる。
おとうさんの肩車の上で
ノリノリの子どももいてかわいかったです。
福岡のまちのよさが感じられますね。
- 蔵田
- ありがとうございます。
- ──
- 天神というまちはどうやってできたんですか?
- 蔵田
- 「天神」というまちの名前は、
われわれWe Love 天神協議会事務所のすぐよこにある、
水鏡神社(すいきょうじんじゃ)からきています。
- ──
- さきほど行ったところですね。
こじんまりとした神社で
都会のなかですが、気持ちのよい場所でした。
- 蔵田
- 901年に、太宰府に赴任してきた
菅原道真が川を水鏡にして自分のすがたをうつし
その場所に社殿をたてて、それを水鏡天神や
容見(すがたみ)天神と呼びました。
それがのちにこの地に移されて、
まちの名前の由来になったんです。
- ──
- へぇ!
- 蔵田
- まちの発展のはじまりは
今から約100年前、
今の西鉄福岡駅ができたところです。
当時はこの天神地区も、
畑と田んぼしかなかったようですが
そこに、とある実業家が私財を投げ打って
土地を買い、道路を引いて路面電車を走らせた。
これからは天神というまちが
福岡の肝になるんじゃないかと、
天神を起点に福岡県を南北に縦断する
天神大牟田線という線路を引いたのが1924年です。
- 蔵田
- その後、1936年になって、
岩田屋というデパートが開店します。
戦後すぐの1946年には新天町商店街が
ほぼ今の形でオープンしました。
福岡駅が高架化によって新しくなって、
その中に西鉄名店街という駅ナカができたのが
1961年です。
ずっと商業のまちとして発展してきました。
- ──
- 100年も先を見据えていたんですね。
- 蔵田
- 長崎県壱岐出身の実業家、
「電力の鬼」とよばれた
松永安左ヱ門(やすざえもん)というひとです。
14歳で福沢諭吉の門下にはいって
先を見据えてものごとを考える姿勢を
学んでいきます。
日本の国づくりの重要人物のひとりでした。 - そうやって交通インフラを整えることで
まちが発展してきたというのが天神地区の特徴です。
天神地区へのアクセスが
どんどんよくなっていくということと、
商業施設がたくさん進出してくるながれは
ほぼ重なっています。
- ──
- さっきいっしょに歩いてきましたが、
戦後すぐにできた新天町商店街も
空き店舗がひとつもないんですよね。
- 蔵田
- 天神地区は小さな商業施設の集積でした。
そのひとつひとつが、
おたがい商売敵ではあるけど
いっしょに天神地区を盛り上げていこうと
共同販促をはじめたのが戦後すぐ。
そして、福岡は支店経済で発展してきたところもあり
天神にある企業が
一緒にまちを盛りたてようと
支店長会のようなものもはじまります。
なので、天神地区は昔から
いざとなったら一蓮托生、
協力してやっていこうという
土壌ができていたんです。
そういうところが、何かあるとすぐに協力しあう
DNAに繋がっているんだと思います。
- ──
- We Love天神協議会にも
そのDNAは受け継がれていますね。
- 蔵田
- そうですね。
このWe Love天神協議会ができたのが2006年。
天神のまちの課題を解決し、
戦略的なまちづくりを行うために生まれました。 - その当時、もうすぐ九州新幹線が博多まで延伸され
山陽新幹線と直通運転がはじまる
と言われている時期でした。
そうすると博多駅ビルも大きく新しく生まれ変わって
博多の競争力が高まる。
そんななか、自分たちも一枚岩になって
天神の将来を考えなくてはいけない!ということで
この協議会ができました。
- ──
- 博多と天神はライバルなのですか?
- 蔵田
- 博多エリアは、「博多まちづくり推進協議会」さんが
まちづくりをしているのですが、
お互いに情報交換や、時には連携して
いい刺激の与えあいをしています。
- ──
- ちかくにいい競争相手がいることで
まちの発展にもなるということですね。
天神のまちの強みはなんですか?
- 蔵田
- 駅ビル中心の博多エリアに比べて、
天神は面的な広がりがあるので、
町歩きのたのしさは
より感じてもらえると思います。 - そんななか協議会は
季節に応じた賑わいづくりをやっています。
春はファッション、夏は夏祭り、
秋は音楽、冬はまち全体のイルミネーションなど。 - あと、140以上の協議会会員にむけての取り組みにも
最近は力を入れていますね。
この協議会内の会員同士の横のつながりから
なにかあたらしいビジネスや
イノベーションが生まれるといいなと思い、
会員企業に勤める方たちに向けた
お酒をのみながらの勉強会や
面識を広げられるランチの会など
場の創出をしています。
- ──
- お酒のコミュニケーション!
たしかに天神の夜のまちはとてもたのしくにぎわってますね。
会員の方たちはどんなメンバーなのですか?
- 蔵田
- おおくの商業施設をはじめ、
福岡市や小・中学校などの教育機関も入っています。
そして福岡県中央警察署。
エリアマネジメントという組織に
警察署がメンバーに入っているのは
福岡くらいではないでしょうか。 - 自分たちのまちなので、
自分たちでよくしていきましょうね、
という考え方をベースに
今日まで活動を続けさせてもらっています。
- ──
- こうして蔵田さんとまちを歩いていても
東京に比べて、すごく横のつながりの強さを感じます。
- 蔵田
- 人の顔が見えやすいのは福岡の特徴です。
天神は特にそうだと思います。
たとえば、困った時は、警察ならこの方、
市役所や区役所ならこの方と話せばいいということが
すぐに思い浮かびます。
まちづくりのために
月に何度も顔を合わせますし。 - あとは、やっぱりお酒をよく飲みます(笑)
なにかあるごとに
「とりあえず飲みに行きましょうか」ってなって
そのなかでいろんなことができ上がっていったりします。
- ──
- そんなふうに協力しあえるのはなぜなんですか?
- 蔵田さん
- ひとつには、
福岡には年に2回全国的に知名度のあるイベント
5月の博多どんたく、7月の博多祇園山笠があって
そのお祭りを昔から福岡市と警察と民間が
一緒になってやってきたという背景がありますね。
山笠にいたっては、もう800年続くイベントなので
昔からひとつのことをいっしょに作り上げていくなかで
距離の近さは培われてきたんのではないでしょうか。
- ──
- まちがコンパクトだし、
住む場所でもあり、働く場所でもある。
だから「自分のまち」という感覚も強い気がします。
- 蔵田さん
- 福岡は職住近接ですね。
電車で1時間半や2時間もかけて通勤する
東京の方を見ていておどろきますもん。
福岡だとありえない。
たとえば仕事帰りにお酒飲んで遅くなっても
3000円もあればタクシーで帰れる距離です。 - あとは、商業のまちといっているように
もともと木造の商店街だったところもたくさんあり
そのほとんどが1階が店舗、
2階が住居という形が多かったので
むかしから住んでいる方もいらっしゃいます。 - むかしは天神のいろんなところで
夏祭りや盆踊りをやっていたんですが
いつのまにか商業ビル・オフィスビルが増えて
いつしか子供の数も減ってしまいました。
でも地域の方たちからは
また天神の祭りをやりたいというお声をいただき
「じゃあ、一緒にやりましょう!」ということで
昨年からはじめて、大好評でした。
これもこの先何十年続く
お祭りにしていきたいなと思っています。
それが結果的に天神の企業にも
よろこんでもらえることにつながりますしね。
- ──
- 協議会がまちづくりの実行部隊なんですね。
- 蔵田
- もしかしたら効率が悪いと言われるかもしれませんね。
こういうイベントって企画だけして
あとは業者に丸投げというパターンも多いんです。
でもわれわれは基本的に全て自分たちでやります。
任せてしまうのは簡単なんですが
そうするとなにもノウハウが残らない。
自分たちで汗をかいて主体的にやる、
泥臭くやるということは
大切にしているところです。
- ──
- 規模は全然違いますが、ほぼ日も自前主義です(笑)。
- 蔵田さん
- 軌道にのるまでが大変ですよね。
夏祭りも最初は「だいじょうぶかな?」
という感じではじめたんですけど
やる気があればなんとかできるものですね(笑)。
自分たちで汗かいて苦労しないと
お客さんにほんとうに
よろこんでもらえないものですよね。
- ──
- 地域のなかでのつながりがとても強いんですね。
反対に、外から入ってくる人たちには
ウェルカムなんですか?
- 蔵田
- もちろんです!
2010年にパルコさんが天神に進出されました。
その時はWe Love天神協議会で旗をふり、
当時の天神のすべての商業施設に
「パルコさん、ようこそ天神へ!」
という懸垂幕を出したことがあるんですよ。
- 蔵田
- その時パルコさんは
「天神の人たちってちょっとおかしい!?」
と思ったそうです(笑)
普通なら、パルコが進出するとなると
周りの商業施設は戦々恐々としてしまって
なかなか歓迎ムードにはならないですよね。
でも天神はそうじゃない。
もちろん内心は穏やかじゃない部分もあったと思います。
それでも天神にとっては話題にもなるし
天神を選んでくれたことはうれしいことだから
町全体で歓迎しよう、と。
- ──
- すごい太っ腹!
福岡のおおらかさをとても感じます。
これからのまちづくりはどんなふうに進むのですか?
- 蔵田
- 商業で大きくなってきた街ですが
今はやっぱり物が店頭で売れない時代で、
そのうえ少子高齢化で若い方が
お金を使わない傾向もあります。
商業にたよってきたまちの限界が
近い将来くるかもしれないなとは思っています。 - なので、商業以外での天神の過ごし方、
イベントなどコト消費、
時間消費をしてもらうまちづくりを
これからはさらにしなくてはならないですね。
- ──
- これからのたのしみな企画などはあるんですか?
- 蔵田
- 今、福岡市主導の「天神ビッグバン」という
プロジェクトが動いています。
多くのビルが新しくなって
その1階部分に空間がたくさん生まれるので
そこをうまくつかって
まち全体の仕掛けをつくりたいです。
例えば音楽の街にするために
路上ライブやっている人に
町中どこでもライブしていいよ、とか。
見るひとが五感で楽しめて、
自由度たかくイベントができるまちにしたいと思います。
- ──
- 商業だけではきびしくなるのではとおっしゃってましたが
文化面は?
- 蔵田さん
- 実は文化的な発信をする施設が
天神には全然足りていないんです。
映画館やミュージアムなんかが少ない。
天神地区を歩いていただくとわかるんですが
商業施設の休憩ベンチで
お父さんとお子さんが手持ち無沙汰に
過ごしたているのを目にしたりします。
そういうお父さんたちが
「ちょっと映画観ようか」とか
「展覧会行ってみよう」といって
楽しめるような要素がほとんどないんです。
- ——
- イキイキとお買いものしているのは
女性が多いですよね。
- 蔵田
- ただ、「天神ビッグバン」の建て替えに合わせて
文化施設も増えていくと思います。
市民会館や福岡県立美術館がある須崎エリアや
北側のベイエリアの開発もこれから進むので
それぞれのエリアが繋がっていきます。
須崎公園のエリアはアートなど
福岡の文化的発信の中心になるので
そこと連動しながら天神も
文化の要素を入れていけたらと思ってます。
- ──
- 「ほぼ日の学校」は「学び」もエンターテイメントの
ひとつだと考えているので、
いずれなにかごいっしょできたらいいですね。
- 蔵田さん
- ぜひ天神を舞台になにかやりましょう!
12月のイベントをたのしみにしています。
- ──
- ありがとうございました。
(おわります。)
2019-11-14-THU
-
チケット販売のお知らせ
※椅子席は完売していますが、
好評につき、桟敷席を開放いたしました。日時:
2019年12月17日(火)
17:00開場、18:30開演、20:30終演
大濠公園能楽堂
(福岡県福岡市中央区大濠公園1番5号)出演:
木村龍之介、河内大和、真以美、岩崎MARK雄大
(以上カクシンハン)、
鶴澤寛也(三味線)、
深町健二郎(ミュージックプロデューサー)、
河野通和(ほぼ日の学校長)料金:
桟敷席:3,000円(税込)購入方法:
福岡市の「ブックスキューブリック」の
けやき通り店、箱崎店にてお買い求めください。