なにかすっごいドラマがあったという
わけでもないのです。
とはいえ、担当のほぼ日乗組員たちが
力を合わせてがんばった。
そして海外のお客さんや社内のみんなにとって
「ほぼ日ストア」の使い勝手が、
前よりちょっとよくなった。
「これ、仲間のみんながよかったんですよ」
という話を、すこしさせてください。
いわゆる「越境EC」、つまり海外販売にまつわる
ほぼ日というチームの一側面の記録。
開発リーダーの多田さんを中心に追いかけます。
レポート担当は、ほぼ日編集部の田中です。
- さて、「ほぼ日ストア」の
海外配送プロジェクトのレポート、
ここからは少し違う雰囲気でお届けします。 - 2023年夏、無事に新しいしくみへの移行が
完了した、「ほぼ日ストア」の海外配送のしくみ。 - ‥‥と、このプロジェクトは実際のところ、
どんなふうに進んでいったのだろう?
導入から約1ヶ月後の9月26日、
関わったメンバーに集まってもらい、
くわしい話を聞いてみました。
そのときの様子をご紹介します。
プロジェクトはどうはじまったのか。
- ──
- 集まっていただき、ありがとうございます。
まずは「ほぼ日ストア」の切り替え、
本当におつかれさまでした!
- 全員
- おつかれさまでした!!!
- ──
- 今日はプロジェクトが具体的にどう進んだかを
聞かせてもらえたらと思っているのですが、
まず、この話はそもそもどう始まったんでしょう?
- 川上
- そもそもで言うと、「ほぼ日ストア」の
海外への出荷が増えているなかで、
納税まわりのコンプライアンス(法令遵守)を
きちんとしておきたいという課題があったんです。
- ベイ
- つまり、いろんな国で、現地の消費税の支払いとかを
どんどんやらなきゃいけなくなってきたときに、
うち(ほぼ日)が単独でそれをやるのは難しい。
だから、代行してくれる会社をずっと探してて。
- ──
- ああ、なるほど。
- 川上
- また、これまでの「ほぼ日ストア」だと、
発生する関税を配達した人に払う必要があったり、
クレジットカード決済しかできなかったり、
お客さんのほうに負担をかけている部分もあって。 - そのあたりを解消できたらという思いもあって、
サービスを提供しているいろんな会社に話を聞いて、
検討するところからはじまったんですね。
- ──
- つまり、Global-eのサービスを
導入しようと決める前に、まずは検討期間があって。
- ベイ
- そうですね。そしていろんな会社ごとに
サービス内容がけっこう違うので、
うちと噛み合うかどうかの検討に
けっこう時間がかかったんです。 - たとえば、フルサポートだけど、
いま「ほぼ日ストア」に登録してくれている
海外のお客さんが、全員アカウントを
引っ越さなきゃならないとか。 - 販売する全商品について、
「毎回すべての原稿を
英語で準備しなきゃいけない」とか。
- 多田
- それはもう「現実的に無理ですね」みたいな(笑)。
- ベイ
- あるいは、決済部分の課題だけを解決してくれる
シンプルなサービスで導入しやすいけど、
「税金の支払いはほぼ日側でやってね」
みたいなところもありましたし。 - その場合は、入れるのは簡単でも、
あとで別にコストや手間がかかりそうだったり。
- ──
- たしかに。
- 川上
- そのなかでGlobal-eのサービスは、
いまのフルサポートのサービスと、
ごくごくシンプルなサービスの、
ちょうど中間くらいの立ち位置なんですね。
- 多田
- フルサポートではないけれども、
貿易に関するいろんなことはGlobal-eが全部やってくれる。
導入してしまえば、うちはすべて
Global-eの国内法人とのやりとりになるので、
いろいろ気にしなくて良くなるんですね。
- 川上
- それで「このサービスを選べば結果的に楽だし、
うちにちょうどいいかもしれないね」
と決めた記憶がありますね。
契約書を理解するだけで、1ヶ月。
- ──
- じゃあ、Global-eさんのサービスでいくことに決めて。
- 川上
- そうですね。とはいえ実は、
いま言ったGlobal-eに決める段階でも、
ずいぶん時間がかかっているんです。 - というのも、彼らのサービスの内容を
我々が理解するまでに、
かなりの時間がかかったんですよ。
契約書を読むのに1か月とか(笑)。
- ──
- 契約書を読むだけで、1か月!
- 樋口
- 非常に分厚い英語の契約書と、
それを翻訳したものがあって、
いろいろ調べながら読む必要があって。
なんだか本当に時間がかかりました(笑)。
- 川上
- そこは英語が難しいというより、
彼らの立ち位置と、サービスの内容が難しいんですよ。
我々が経験したことのない仕組みなので
「これが自分たちに扱えるんだろうか?」って。 - 海外の方がお買いものするときって、
送料・消費税・関税といった金額が生じるわけですけど、
それらの金額をお客さんに
どう見せるかの種類がいくつもあって。
それぞれ誰がどう費用を払って、どう決済をするのか。
パターンがみんな違うわけです。
- 樋口
- これがもう本当に複雑で。
「このケースはこう、このケースはこう」と
整理していくのが、あまりに大変だったという。 - だけどそこは経理処理に関わる重要なところなので、
絶対にきちんと理解しておかなければいけないし。
ほぼ日の他のシステムともつながる話だから、
「導入後データがうまく流れるか」
あたりのことも考えておく必要があって。
- 川上
- だから最初にGlobal-eのサービスを知ってから、
内容を理解して導入を決めるまで、
半年くらいかかった記憶がありますね。
- ──
- 半年! 相当ですね。
- 樋口
- そして導入が決まって動きはじめたら、
こんどは「価格決め」のところで
また壁にぶつかって(笑)。
- ──
- 「価格決め」というのは?
- 樋口
- いままでは「ほぼ日ストア」では
「日本円でいくらで売ります」だけで
よかったんですけど、
今回、各国の通貨のまま買えるようにしたので、
通貨ごとに価格のルールを決める必要が出てきたんです。 - それぞれの国での条件を加味しつつ、
「この場合は価格を105%にしないと、
利益が出ないね」みたいな調整が必要で。 - 税率って国ごとに15%、10%、0%とかバラバラだし、
関税も「800ドル以下はかかりません」とか、
いろんなルールがあるんですね。
そのあたりをひっくるめて、
きちんと利益が出るように
「この国ではこういうルールで売りましょう」
みたいなことを、
全部決めていかなきゃいけなかったんです。
- ──
- あ、なるほど。
- 樋口
- そこがほんとにいろんな要素が絡むので、
何度ミーティングしても決まらない時期があって、
ぐったりしていた記憶がありますね。
- 多田
- しかもこの1年で、為替が大きく変わりましたから。
- 樋口
- そうなんです。その影響もありました。
ものすごく忙しかったシステム部。
- ──
- そうやって経理側でお金まわりのことを
整理していく一方で、
システム側の準備もあったわけですよね?
- 多田
- はい。何人ものメンバーでやっていたんですけど、
今回いちばんプログラムを書いたのが
山縣さんだと思いますね。
- 山縣
- そうですね、けっこういろいろやりました(笑)。
- つばさ
- たしかプロジェクトの途中で、
山縣さんが死んでた記憶があります(笑)。
- 山縣
- やることが多すぎて「チーン‥‥」みたいな。
リリース直前とかはとくに
社内のあちこちで合宿的にやってたんですけど、
いろんな人から「印象的だった」と言われました(笑)。
- 多田
- Global-eさんとしても、こんなふうにサービスを
直に導入した日本の会社はほぼ日が初めてで、
初体験のことがいっぱいあったんだと思うんですよ。 - だから「この日本語は変かも?」みたいなところも
あったりして、そういうのも直したりとか。
- 山縣
- 「ここって直せますか?」という確認からはじめて、
ひとつひとつ一緒に直していって。
けっこうGlobal-eのみなさんと共同作業で
作っていった感じがありますね。
- ベイ
- 調整はいろいろありましたね(笑)。
- 樋口
- だけど今回、経理の私からすると、
システムチームとのやりとりがすごいスムーズで、
本当に楽だったんですよ。
- 多田
- 山縣さんがいて助かったのが、
もともと経理の知識があるから、
「ここは会計的に飲める誤差だ」
とかの肌感があるんですよね。 - ぼくとか、システムの頭だけで考えてると
「数字が完全にぴったり一致する」とかを
目指してしまうんです。
だけど山縣さんは
「これはどうしてもずれるものだ」とかを知ってて、
ぼくが突っ込んでいこうとすると
「多田さん、それもういいんで」って。
- ベイ
- 言ってる山縣さんが目に浮かぶ(笑)。
- 山縣
- ええっ(笑)。いやいや。
「そこは樋口さんがうまく処理してくれるから
考えなくていいんだよ」みたいに、優しく伝えて。
- 多田
- あとは、ベイさんは「ほぼ日ストア」の立ち上げから
全部知っている生き字引みたいな人なんで(笑)、
なにか聞いたときに、解決までが早かったり。 - そんなふうに、それぞれが得意分野を活かしつつ、
進んでいった感覚がありますね。
ここまでたどり着いた「ほぼ日ストア」。
- ──
- 「ほぼ日ストア」のシステム部分を
ずっと見てきているベイさんは、
今回のプロジェクトはどんな気分ですか?
- ベイ
- 「ほぼ日、海外での税金のこととかまで、
先回りして考えられるようになったの?」
っていうのは、やっぱりすごいよね。 - 昔は海外に発送してるだけで珍しかったんですよ。
だけどいまってそれだけでは珍しくなくて、
法令遵守とかをぜんぶやった上で、
ようやく「うちは越境ECやってます」って
言える時代になってるから。
「ほぼ日ストア」がそういう場所に
ちゃんとたどり着けてるのは嬉しいです。
- ──
- 現場でバリバリプログラムを書いていた
山縣さんとしては、今回どうでしたか?
- 山縣
- 「越境EC」ということば自体は、
EC業界(インターネット通販業界)では
何年も前から話題にはなってたんです。
だけどいろいろ難しくて、
ずっと「SFの話」みたいなイメージで(笑)。 - だけど今回こうやって関わらせてもらえたことで、
ようやくいろいろ
「ああ、越境ECってこういうことなんだな」
という感覚が掴めてきた気がしています。
- ──
- 「ほぼ日ストア」は今回の切り替えで、
だいぶグローバルスタンダードに
近づいた感じなんでしょうか。
- 川上
- 機能的にはけっこう先端を走ってるよね。
関税とかを計算してくれて、ものが届いたときに
FedExに支払わなくてもいいわけで。
- ──
- へぇーっ、先端!
- 山縣
- そう思います。現地のお客さんが、
現地のサイトで買うのと同じ感覚で
買えるようになっていますから。
- ベイ
- 自分で個人輸入とかすると、
郵便局の人に関税を払うもんね。
それよりいい体験を届けられてるかなとは思いますね。
(つづきます)
2023-12-26-TUE