オリンピックやワールドカップの試合後には、
快挙をたたえる新聞の「号外」が配られます。
ついさっきまでプレーしていたはずなのに、
駅前でもらった号外を見てみると、
「優勝」「金メダル」「世界新」という
華々しい見出しが踊っているじゃありませんか。
ウェブと違って紙を刷る手間があるのに、
どうしてそんなに早く配れるのか聞いてみました。
工夫や、努力や、技術や、からくりについて、
『スポーツ報知』の相沢拡さん、山本理さん、
解説をどうぞおねがいします！
- ほぼ日
- この部屋に入ったときから
ずーっと気になっていたのですが、
おふたりの背景で笑っていらっしゃる
長嶋茂雄さんと松井秀喜さんについて
伺ってもいいでしょうか。
時代を彩った大スターのおふたりなので、
印象に残っている号外もあったのでは？
- 相沢
- この二人の師弟関係といえば、
まずはドラフトですよね。
ちょっと古いものですがこちらです。
- ほぼ日
- おおーっ、「当てた長島」！
ここ何年も巨人はドラフトの
当たりくじを引けていませんもんね。
- 山本
- 一応、今年も用意はしていたんですよ。
- ほぼ日
- えーっ！？
- 山本
- 誰を狙うかはその時まで知りませんでしたが、
最初に入札した人の指名権がとれたら、
号外を出そうって話していたんです。
- ほぼ日
- あとは、原監督が
当たりくじさえ引いていたら‥‥。
- 相沢
- 社内の配布要員も確保して、
みんなで構えながらテレビを観ていたんです。
- 山本
- まさか２回もクジを外すとはね（笑）。
- ほぼ日
- 「当てたぞ、原！」
みたいな号外の記事が
読めるはずだったんですね。
- 山本
- まさに、ミスターのような
ガッツポーズを狙っていたんです（笑）。
- ほぼ日
- あらら‥‥。
- 山本
- 松井選手以降、ジャイアンツは
３球団以上の競合で当たっていませんから。
- ほぼ日
- 来年こそ、号外をたのしみにしています。
長嶋監督と松井選手といえば、
国民栄誉賞関連でも号外は出ていたのでは？
- 山本
- あっ、えーっと、ありました。
2013年です。
- ほぼ日
- やっぱり！
- 山本
- これは発表された日の号外ですね。
官房長官が発表してすぐに号外を出しました。
まさに当日対応で、
社内でもみんながビックリして、
「これは号外を出さなきゃ」と。
- ほぼ日
- 特にスポーツ報知としては
絶対に出さなきゃいけませんよね？
- 山本
- よその新聞社が巨人の号外を出して、
うちが出さないってわけにいきませんから。
- ほぼ日
- たしかに、報知さんの使命だと思います。
2019年のジャイアンツといえば
５年ぶりのセ・リーグ優勝をはじめ、
原監督の復帰や丸選手の新加入、
そして阿部慎之助選手の引退が
大きなニュースになりましたよね。
- 山本
- 原監督の就任に関して言えば、
確定するまでは号外も出せませんでした。
- ほぼ日
- 「就任か？」ではダメだと。
- 相沢
- 号外で誤報するわけにはいかないんで。
発表されるまで待たないと。
- ほぼ日
- 号外にはなっていないでしょうけど、
阿部慎之助選手が引退して
２軍監督に就任した報道は、
日本シリーズが終わってから、すぐでした。
さすがに事前に決まっていたわけですよね。
- 山本
- 決まってます、決まってます。
- ほぼ日
- プロ野球のシーズンが終わっても、
スポーツ新聞のシーズンは終わりませんね。
- 相沢
- スポーツ新聞の野球記者というのは、
極論すると試合がない時のために
雇われているようなものです。
試合を見て書くだけなら
訓練すればできるようになるけれど、
表面上何も起きていないところで
ネタを出してくるのは、
１年間張り付いている
担当記者の腕の見せ所ですよ。
- ほぼ日
- 余談に人柄が出たりしますもんね。
- 相沢
- 余談にあたる部分を拾ってこられる人が
記者になれるんじゃないかなあ。
- 山本
- 巨人選手の球場内外での日常を紹介する
「ジャイアンツ日記」も人気でして。
巨人のオーナーだった正力亨さんは、
そこから必ず読んでいたと言われています。
- ほぼ日
- この小さなコーナーに、
記者の実力が試されているんですね。
あっ、2019年の野球といえば、
イチロー選手の現役引退から
シーズンがはじまったのでした。
- 相沢
- 日本で引退することになって、
あの会見もよかったですよね。
- 山本
- 試合が終わってから公式な発表があって、
引退会見が終わったのは深夜１時20分。
朝刊に入れるので精一杯という時間帯でしたね。
- ほぼ日
- たしかに、あれだけ長い会見でしたし。
- 相沢
- アメリカで試合をやっていたら、
朝刊が出たあとになるので、
号外を出していたでしょうね。
- ほぼ日
- なるほど、時間帯によって
号外になるかどうかは大きいと。
- 山本
- イチロー選手の号外は、
メジャー時代だけでもたくさん出ています。
- ほぼ日
- わっ、号外の中に号外が並んでいる！
まさに「イチ伝説」ですね。
イチロー選手の記録だけで
こんなに号外が出ていたんだ。
- 山本
- そうですね。
こちらがピート・ローズの記録を抜いて
世界最多安打を塗り替えたときの号外です。
- ほぼ日
- ヒットを打ってから、
観客席に向かっての礼ですよね。
個人の通算記録は積み重ねていくものだから、
比較的準備がしやすいタイプの号外ですよね。
- 山本
- たしかに、そう言えますね。
- 相沢
- 日本記録の3085本を打って
号外を出したんですけど、
翌日に3086本目を打って、
また出していますからね。
- ほぼ日
- 並んで、抜いた記録。
今さら言うまでもありませんが、
本当にすごい選手ですね。
- 山本
- これだけ号外が多く出ているのは、
社内にメジャーオタクの記者が
いるからなんです。
- ほぼ日
- 熱意がある人のおかげだったんだ。
（つづきます）
2019-12-19-THU
