「まゆげ」の子、「マラソン」の子、
「政治に詳しい」子、「料理上手」な子、
彼女のことを思い浮かべたときに浮かんでくる、
彼女をカタチづくることばたちは
実に多種多様で、
一体彼女は何で出来ているのかわからない。
がんばりやさんの彼女が
本当は何をもとにつくられているのか、
どんなジャンルにもしばられない
「井上咲楽」のレシピを紐解く。
担当は「ほぼ日」下尾(しもー)です。

>井上咲楽さんプロフィール

井上咲楽(いのうえさくら)

1999年うまれ。栃木県益子町出身。
2015年、高校生の頃に「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で特別賞を受賞し、芸能界デビュー。
以来タレントとして幅広く活動。
『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)などレギュラー番組多数。
マラソン、選挙、ぬか漬けなどの多彩な趣味を持つ。
2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』(主婦の友社)を出版。

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第3回 心のレシピ

──
スタイルが良くてグラビア撮影をされることも
あると思うんですけど、体型を保つコツはありますか?
咲楽
全然、保てていないんですけど、マラソンですかね。
今は大体、週3〜4回ぐらい、走っています。
あとはポイント練習をちょこちょこやっているくらいです。
──
どうしたら、そんなに続けることができるんですか?
咲楽
今は帰ってきて着替えて走ることが、
歯磨きをするみたいな感じで、
生活の流れの中にあるんです。
それが、ここまで続いている秘訣なのかなと思っています。
──
マラソンが、好きな理由はなんですか?
咲楽
自分で走った分しか進まないし、
どんなに周りが言っても、
結局自分が走らなかったら走れないっていう意味で、
マラソンってすごく好きです。
自分の中で、これは本当に自分の実力で
獲得したものなんだなっていう風に思えるところが、
いいところかなと思います。
仕事では、本当に誰かのおかげだなとか、
ラッキーだなとかっていうことが、すごくあって、
それもすごくありがたいんですけど、
ハッと気づくと、わたしの実力って、これくらいなのに、
なんでこんなに大きい仕事を
いただけるんだろうみたいなところが、
プレッシャーのような、申し訳なさのようなところに
繋がってきて、そこをこう埋めるように、
がんばるんだけれども、苦しいこともあって。
それがマラソンだと誰に何を言われようと、
走ったっていうタイムは、揺るがないっていうのが、
自分の心の支えでもあるかなと思います。
──
記録は嘘をつかないですもんね。
咲楽
そうですね。
もうやったことしか出てこないので、
奇跡も起こるかもしれないけれど、
がんばった分しか、
起こらないというところもいいなと思っています。

──
トレイルランニングも、やられてると聞いたんですけど。
どういうきっかけで始められたんですか?
咲楽
わたし、今まで6回フルマラソンに出て、
ずっと、全部、記録を更新し続けているんです。
──
すばらしいですね。
咲楽
ありがとうございます。
でも、いつか記録を切れなくなったときに、
自分の性格上、じゃあ、もういいやって、
パーンっと、やめちゃうんじゃないかなと思っていて。
そうなるのがちょっと怖くて。
タイムだけでやらないマラソンをしたいなと。
トレランって、ランニングという名前だけど、
山の中を走れるところは走って、あまりにも急なところとか、
ちょっと危ないところとかは歩くんですよ。
──
そうなんですね。
そして、トレランって略すんですね。
咲楽
そうです(笑)。
相当経験のある方でも歩く場所は歩くし、
無理して走るというよりも、自分を気遣って、
その後のことまで考えてやるスポーツです。
自分の状態を見ながら、
お腹が空いたらご飯を食べるし、
体温調節が必要なら細かくしてあげます。
自分の体調や感情を気遣いながらやるスポーツなので、
マラソンとはちょっと違うんですよね。
季節によって同じ山でも景色が違うし、
落ち葉を踏んだときの音や感触、匂いなど、
五感で感じられるのもいいです。
──
聞いていて、面白いなと思ったんですが、
すごくトレーニングしている人しか
トレランって、できないんでしょうか?
咲楽
いえいえ、初心者向けの山もあって、
そういうところに行って走る人も結構多いです。
山の中なんで、けがをしないように想定をして
道具を持っていくんです。そういうところも含めて、
単調じゃない感じも、いいなと思っています。
「疲れたから途中で電車に乗って帰ろう」なんてことは
できないので、いろんなものを準備して山に行きます。
──
トレランの魅力は、なんですか?
咲楽
マラソンをしているときって、わたしは
日々のいろんなことを考えて走るんですけど、
トレランは、そんなことをしてたら、こけちゃうんですよ! 
その次、足をどこに置くかっていうことで頭がいっぱいで、
それをやっているうちに、
だんだんと頭が真っ白になっていくっていうのも、
気持ちいいなあと思います。
次のことだけを考えればいいっていうのが
心地よいのかもしれません。
なかなかそうなれる状態ってないので。
目をつぶっていても、いろいろと考えてしまうわたしは、
心を使わない瞬間を作れるというところが好きです。

(つづきます)

2024-08-18-SUN

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  • その人の「人となり」を知りたくて、
    料理本を買うという自分自身の経験をいかして、
    丁寧につくられた「井上咲楽のおまもりごはん」。
    彼女のあたたかい、ホッとできる一面が
    随所にあらわれている。
    特にそれぞれに書いてある「咲楽メモ」がオススメ。
    料理が下手な人でも、背伸びしなくて、
    ちょっとやってみたらできるかもと思える料理たち。
    盛り付け方にいたるまで、井上咲楽さん自身が、
    一生懸命こだわった一冊です。

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