「まゆげ」の子、「マラソン」の子、
「政治に詳しい」子、「料理上手」な子、
彼女のことを思い浮かべたときに浮かんでくる、
彼女をカタチづくることばたちは
実に多種多様で、
一体彼女は何で出来ているのかわからない。
がんばりやさんの彼女が
本当は何をもとにつくられているのか、
どんなジャンルにもしばられない
「井上咲楽」のレシピを紐解く。
担当は「ほぼ日」下尾(しもー)です。

>井上咲楽さんプロフィール

井上咲楽(いのうえさくら)

1999年うまれ。栃木県益子町出身。
2015年、高校生の頃に「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で特別賞を受賞し、芸能界デビュー。
以来タレントとして幅広く活動。
『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)などレギュラー番組多数。
マラソン、選挙、ぬか漬けなどの多彩な趣味を持つ。
2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』(主婦の友社)を出版。

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第4回 「丁寧な暮らし」のレシピ

──
咲楽さんは「丁寧な暮らし」をされている
というイメージがあって。
今回、本の中にも出てくる欠けた食器も、
大切に使っていらっしゃって、いいなと思ったんです。
咲楽
あのお皿はあんまり割れてないから使っているだけなんです。
総面積に比べたら20分の1ぐらいしか、欠けてなくて。
これからも、あのお皿は大切に使って、
機会があれば金継ぎしてみたいなあと思っています。
──
きっと、得意ですよね。
益子出身ですが、あのお皿も益子焼ですか?
咲楽
そうですね。家の食器のほとんどは益子焼きです。
益子焼きは、これっていう定義は、今はないらしいですが、
わたしは触ったときに、
ちょっとザラザラしている感じとか、
重ためのものとかが、すごく好きです。
質感やぬくもりが感じられるからです。
──
小さい頃は、プラスチックのお皿を使っていましたか?
咲楽
割れない食器を使うことは、ダメでした。
食器を大切に使わないと割れちゃうんだよ、
というのを教えられていたんです。
益子焼のような、雑に扱ったら割れてしまうものを
小さい頃から使っていました。
──
大切にしようと思う心が育ちそうで、とても素敵ですね。
あと、だいぶ前だと思うんですけど
モンペを作っているときも、ありましたよね?
咲楽
もともと手を動かすことが、すごく好きで、
集めた端切れを縫い合わせてモンペを作っていました。
玉ねぎの皮を使って、布を染めたこともありました。
──
最近は何をつくっていますか?
咲楽
今は編み物をやっています。猫耳の帽子です。
でも普段は、かぶるのが恥ずかしいから、
寝るときだけかぶって安心しています。
──
自分が作ったものに囲まれているのが好きなんですね?
咲楽
そうですね。料理もそうなんですけど、
自分が手を加えたものの中で
暮らしができるっていうのは、楽しいなと思います。

──
他にも、10年手帳をつけられていると、お聞きして。
ほぼ日は手帳を作っているんですけど、
わたしは10年も、長く続けられる自信はなくて。
アドバイスをもらいたいです。
咲楽
わたしは中学1年生のときから日記をつけています。
コツとしては、毎日書こうとしないことです。
──
えー!? いいんですか?  毎日書かなくても。
咲楽
わたしは、いいと思っています。
できないことが続くと、
全部やめたくなる性格なんですけど、
日記は、書かないことも全部許しています。
なので、その10年の中で、
3か月くらい1回も書いていないときもあるんですよ。
──
へぇーーー!!!
咲楽
わたしは日記に、その日にあったことも書くけれど、
このとき、こう思ったということを
記さずにはいられないっていうときに書くんですよね。
──
書くことで想いを昇華させてるってことですか?
咲楽
そうですね。こんな気持ちになって
もうやばい、書きたいと思って、
それを全部、言語化してやりたいという気持ちで書きます。
あとは感情って結局自分の中だけにあって、
そのときの自分にしか感じられないものなので。
それを記しておかないと、
もう感じられない感情かもしれないということが、
もったいないから書いています。
でも書いていないときは
「あ、このとき、別に書かなくてもやっていけたんだな」
っていう風に捉えていますね。
この時期は、楽しく過ごしていたんだなーと。
そして、また書きたくなったらスタートします。
真っ白でも、全然気にしないっていうのが
続けるコツだと思います。
──
いや本当にありがとうございます。
空白が恐怖というか、書けなかったらどうしよう
と思って書かないという人もいると思うんですけど、
こんなに書かないことをポジティブに捉えられるのって、
すごくいいなと思いました。
咲楽
もう全然、気にしないことが大事だと思います。
──
ありがとうございます。
小さい頃から書くことが好きなんですか?
咲楽
書くことは、好きですね。
小学生の夏休みに、一日一行日記を渡されて
書いたことある人、多いと思うんですけど、
明日の日記を書きたくてしょうがない子でした。
今日なのに、明日の分まで、書いちゃいたい!
細い一行しか、書くところがないのがイヤで、
書くのが終わっちゃったから、
早く明日の日記を書きたい気持ちでいっぱいでした。
──
その頃から伝えたいことがたくさんあったんですね。
書くことで成長できてる感じですね。
咲楽
そうですね。やっぱり文字はいいなと思っています。
気持ちによって、筆跡もめちゃくちゃ変わるので。
筆記体みたいな文字ではなく、
ちゃんと紙からペンを一回一回
離して書いてるんだなっていうときは、
すごく穏やかに過ごせていたのかなと、
あとから感じられるのも楽しいです。

(つづきます)

2024-08-19-MON

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  • その人の「人となり」を知りたくて、
    料理本を買うという自分自身の経験をいかして、
    丁寧につくられた「井上咲楽のおまもりごはん」。
    彼女のあたたかい、ホッとできる一面が
    随所にあらわれている。
    特にそれぞれに書いてある「咲楽メモ」がオススメ。
    料理が下手な人でも、背伸びしなくて、
    ちょっとやってみたらできるかもと思える料理たち。
    盛り付け方にいたるまで、井上咲楽さん自身が、
    一生懸命こだわった一冊です。

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