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板尾創路さんは、旬の秋だけでなく春も夏も、
365日毎朝、りんごを食べています。
好きなのか? と問われれば
「そういうわけではなく」と返します。
なぜなら無意識で食べているからです。
渋谷PARCO8階の「ほぼ日曜日」で、
さまざまな種類のりんごが登場する
イベントが開催されます。
りんごは世界中に1万を超す品種があるそうです。
私たちはそのうちの何種類を一生に食べるのでしょう。
自分が歩くりんごの道すじを、
今年はちょっとはみ出してみませんか。
Mr.りんごナチュラルフレンドリーの板尾創路さんが
いろんなりんごを、つぎつぎにあじみします。
(聞き手:ほぼ日 菅野綾子)
板尾創路(いたお いつじ)
1963年大阪生まれ。
お笑い芸人として
テレビ番組で活躍する一方、
俳優としてドラマや舞台、映画など
数多くの作品にかかわる。
映画監督作品に「板尾創路の脱獄王」
「月光ノ仮面」「火花」などがある。
『板尾日記』をはじめとする著作も多数。
板尾さんの「あじみ」がはじまります。りんごを食べるときの板尾さんの「自然さ」に、ご注目ください。
- ──
- 今日は、いまの時季に手に入るりんごを
数種類持ってきました。
どれか、めしあがってみますか?
- 板尾
- あじみするとしたら、
こういう、ふだんなかなか
手ぇ出せへんやつにしましょう。
青いりんごはあんまり食べたことないからね。
- ──
- それは、ブラムリーですね。
これまたすごい極端なところに目をつけましたね。
▲すっぱいりんごの代表格、ブラムリー。
- 板尾
- こういう機会やから、
いつもと正反対のやつを
食べてみたいです。
あとはそうやな、
こういう、おっきいのも食べてみたい。
これは「さんたろう」ですね。
- ──
- 板尾さん、
りんごには生食用と加熱用が
あるんですよ。
- 板尾
- ああ、よう知らんわ。
- ──
- それはべつに
りんごが言っているわけではなくて、
味で、人間が決めているだけなんです。
- 板尾
- はいはい、なるほどね、
人間が勝手にね。
- ──
- 加熱用は「クッキングアップル」とも呼ばれます。
お菓子にするには香り高くてパンチもあるけど、
生でそのまま食べたらすっぱいです。
ここにはそれが混じっています。
見かけでは味はわかりません
赤なら甘い、青ならすっぱい、
というわけでもないのです。
- 板尾
- ま、そやろな。
柿かて、見かけで
甘いか渋いか、わからんもんな。
- ──
- 例えば昔からある、この「紅玉」ですが。
- 板尾
- あ、皮が硬めで薄めの、小さいやつ。
これ、すっぱいよね。
「お菓子に使うねんで」って、
嫁さんが言うてた。
- ──
- そうです、
アップルパイや焼きりんごは、
「紅玉」でやるとすごくおいしいです。
青い「ブラムリー」も「紅玉」も、
クッキングアップルとしてメジャーです。
- 板尾
- ふむふむ。
でも「紅玉」はきっと
食べたことあるからなぁ。
- ──
- では、まずは、板尾さんが
ふだん食べない大きいりんご、
「さんたろう」いってみましょう。
- 板尾
- さんたろう。
- ──
- 「さんたろう」は、
「はつあき」と「スターキングデリシャス」の
かけあわせです。
甘味はありますが、酸味がやや強めです。
- 板尾
- どうやって食べる?
- ──
- 切ります。
- 板尾
- 皮ごと切る?
- ──
- もちろんです。
▲板尾さんの好きな「皮ごと」で切ります。
▲「さんたろう」を試食。
- 板尾
- ははは、切っても、
「さんたろう」はでっかいな、やっぱり。
ああ、なるほどね、うんうん、
たしかに酸味がある。
これ、なんか昔、よう食べてた
昭和のりんごの味するわ。
いまのって、品種改良されてて、
けっこう甘いのが多いよなぁ。
昔はりんごはすっぱくて、
おかんに「食べ、食べ」言われたり
よう弁当に入ってたりしたけど、
あまり好きやなかった。
でもいま食べたら、懐かしいな。
- ──
- 毎日食べてるだけあって、
板尾さんはすいすいとためらいなく、
りんごをめしあがりますね。
- 板尾
- いまの日本のりんご、
蜜がたくさん入ってるやつも、
けっこうあるやん?
ああいうのを毎日食べるのも、
「ちょっと違うかな」と思ってしまうな。
- ──
- そうですね、
たまのデザートならいいですが。
- 板尾
- 立派な綺麗な贈答品みたいなりんご、
ああいうのは、ぼくはほとんど食べないです。
- ──
- 板尾さんはデイリー派ですから、
ちょっと大きいけど
「さんたろう」のようなあっさりした味の
りんごもいいですね。
では次に、クッキングアップルの代表、
「ブラムリー」に行ってみましょう。
すっぱいりんごは香りに力があって、
お菓子にすると味が際立っておいしいです。
- 板尾
- すっぱいりんごは
逆にケーキにいいとか、聞くわ。
でも、りんごの入ってるケーキは
あまり食べないかな。
- ──
- やっぱりりんごは‥‥
- 板尾
- 皮ごと、まるごと。
こうして洗ってあんのを、
手にもって食べるのが、いちばん楽やん?
べつになんもフォークもいらんし、
忙しいときでも。
- ──
- 「ブラムリー」は
生ではあまり食べませんが‥‥。
- 板尾
- いやぁ、これ、
柿の「なりたて」みたいな色してるやん。
まぁ、せっかくやし、いってみましょう。
- ──
- 「ブラムリー」は本場イギリスでは人気です。
青りんごのうち、
「ブラムリー」のシェアは半分以上です。
- 板尾
- 青りんごと赤りんごって、
違いはなにかあるの?
栄養価の違いとか、成分とか。
- ──
- うーん、赤いほうが、
アントシアニンが多いのかもしれません。
あとは、すっぱいりんごは
リンゴ酸がたくさん含まれていることが多いので
疲れたときにいいと、
このりんごを送ってくださった
サンファームの吉田さんがおっしゃってました。
- 板尾
- これ、野菜みたい。
りんごって感じ、せぇへんな。
あ。けっこうすっぱいわ、これ。
▲板尾さん、初ブラムリー。
- ──
- それ、今日並んでいるなかで
おそらく最強にすっぱいと思います。
- 板尾
- いま、目の前で切ってもろたからわかるけど、
違う感じで出されたら、
りんごと思えへんかもな。
すごい、すっぱい。
- ──
- ブラムリーはジュースもあって、
一気に飲むとおなかをいたくする人も
いるほどだそうです。
▲けっこう「すっぱみ」がきいている。
- 板尾
- それくらい酸味がきついってことやね。
これはおっしゃるとおり、
疲れてるときに元気になる感じやね。
- ──
- でも、ジャムにすると、こうなるんです。
ブラムリーは加熱するとすぐに
やわらかくなる性質があって、
レンジ6分でジャムにできます。
▲ブラムリージャムを食べてみる。
- 板尾
- うわ、ほんまや。
あまずっぱい。
- ──
- お菓子用だというのはこういうことなんですね。
香りが加熱後も持続するし、味も強いです。
- 板尾
- はぁああ、もうひとつくらいいってみよか。
これはなんや、マスカット‥‥
- ──
- マスカットオブレネットですね。
- 板尾
- マスカットいうくらいやから。
- ──
- マスカットのような香りがするそうです。
▲マスカットオブレネットも皮ごと切ります。
- 板尾
- もう、これは。だって匂いが。ああ、ほんとやね。
ぶどうのマスカットの甘さみたいなんがあって、
いままでのりんごとぜんぜん違います。
ああ、なるほどね。
噛んでいくと甘味が後から来て、
それがちょっとマスカットを食べたときに似てる。
うん、おいしいよ。
(板尾さん、りんごあじみの ウェイブに乗ってきたかも。 明日につづきます)
2022-11-16-WED