静岡県西部を南北に流れる、一級河川の天竜川。
その川の東側にコーデュロイの産地、
天龍社(てんりゅうしゃ)があります。
国内で流通する日本産のコーデュロイは1%未満。
そのうちの実に95%以上が、
天龍社産地で作られています。
明治中期、天龍社産地の人たちは
日本に入ってきたコーデュロイの生地を、
見よう見まねで作りはじめました。
そして、長い年月を経て、
よりやわらかく、よりしなやかに、
よりふっくらと、色あざやかに、
独自の進化をとげたのが、
MADE IN JAPANのコーデュロイです。
天龍社産地のみなさんは、できあがった生地を、
海外のコーデュロイとはクオリティが異なることから、
昔から親しまれてきた「コール天」という名前で
誇らしく呼んでいます。
ここ、天龍社産地の現場では、
シャトル織機で織り上がった生地が、
あっけにとられるほど過激な
水で、炎で、風で、
くたくたになるまでいじめられていました。
どうしてそんなことをするのか、
どのようにできあがるのか、
カネタ織物の太田充俊さんに教えていただきました。
- ──
- 今回、ほぼ日でご紹介するコーデュロイは、
4種類ありますよね。
それぞれどのような違いがありますか?
- 太田
- 畝の細さ、生地の薄さが違います。
薄いものから、
・微塵コール→26Wのコーデュロイ
・細コール→14Wのコーデュロイ
・太コール→9Wのコーデュロイ
・極太コール→5Wのコーデュロイ
の4種類です。
- ──
- 数字と「W」とはどういう意味ですか?
- 太田
- 「W」とは、WALE(ウェル)の意味です。
1インチ=2.54cmの中に、
何本の畝があるか、を表しています。
26Wだと、
1インチの中に26本もの畝があるということです。
- ──
- うわあ、一番細かいものは、
2.54cmのなかに、26本も畝があるんですか。
畝の太さによって作り方が違うのでしょうか?
- 太田
- 織り方は、細かいところでは違うんですが、
基本的によこにパイルを織る
という点では同じです。 - ただもちろん、生地によって、
糸が違ったりすることはあります。 - たとえば、26Wは細くて長い、
超長綿を使っているんですけど、
いい糸って表面がつるつるなんですね。 - つるつるの糸って、すべるんです。
糸そのものはとてもいいものなんだけど、
コール天にすると摩擦が少なくて、
毛羽が抜けやすくなってしまう。
なので、撚りを強くしたり、
あえて毛羽を軽く残した状態の糸に、
紡績してもらっています。
- ──
- コーデュロイは、どうやって作るんですか?
- 太田
- まずは、製織ですね。生地を織ります。
コール天は、地組織の上に、
よこにパイルが乗っかっているような生地です。
パイルというのは、
ループ状になった糸のことです。
- ──
- よこに糸が渡ってますね。
これをパイルと言うんですね。
- 太田
- その、まっすぐに連なったよこパイル糸を、
カットするのが、「カッチング」と呼ばれる次の工程です。
- ──
- パイル糸がカットされて、
コール天の畝(うね)になるわけですね。
- 太田
- 畝に1本1本、
カッター工具を入れて切っていきます。
もう職人さんも数名しか居ない、技術です。
- ──
- 生地とパイルの間って、
何ミリも隙間はないですよね。
- 太田
- そのギリギリのところを、カットします。
これ、ちょうど切ったばかりのところです。
- ──
- いつも見る生地とは違うような‥‥?
- 太田
- はい、カットされただけでは、
まだまだコール天にはならないんです。
毛が寝てますからね。
- ──
- ではここから、また違う加工に入るんですね。
- 太田
- 次は水洗いをしていきます。
まず水槽に入れて糊を落とします。
- 太田
- その後に、水車で徹底的に洗います。
- ──
- 水洗いするんですね。
- 太田
- 洗う=なにか汚れを落とす、
ということではないんです。
水で叩きながら洗うと、
生地がもみほぐされて、
ふっくらと仕上がるんです。
- ──
- すごい迫力‥‥!
水の量もすごいですし、圧倒されます。
あんなに高いところにまで、
生地を送るんですね?
- 太田
- はい。
ビル3階建てくらいの高さまで上げます。
これだけの勢いで水洗いすると、
どうしても生地が絡まっちゃうんですね。
それをほどくために、
あの高さまで上げてから生地を広げて、
重力で広がるようにして、整えているんです。
- 太田
- いちど整えたら、そこからローラーで乾かします。
- 太田
- そこから、毛焼きという工程に移ります。
- ──
- わぁ! 熱い!
- 太田
- そうなんです、摂氏800度もの高熱で、
生地を焼きます。
- 太田
- 高温で焼くことで、表面を整えます。
ざらつきが無くなめらかになるのと、
畝の奥まで焼かれることで、
細かい不要な毛羽なんかも落とせるんです。
- ──
- こんな火力で生地を焼いてしまって、
燃えてしまわないんですか?
- 太田
- 燃えないように、
職人さんが調節してくれるんです。
表面は焦げるので、
ここからまたもう1周、水洗いをします。
- 太田
- ここまで終わったら、
次はさらに空気の力で生地を揉むために、
エアータンブラーという機械にかけます。
- ──
- 風速300km/hの、もの勢いの風で生地を叩くと聞きました。
- 太田
- そうですね、ものすごい風で、
生地を壁に叩きつけて、
水だけでなく風の力でも
生地をやわらかくしています。
- ──
- 風の力でも!
さらに生地を叩くんですね。
- 太田
- 微塵コールと極太コールは、
最後のエアタンブラー加工は行ってないんです。 - 微塵コールは薄くてしなやかなので、
水洗いだけでじゅうぶんふっくらします。 - 極太コールは、エアタンブラーをやると、
畝がもこもこに、
ふっくらしすぎちゃうんですよ。
やりすぎると、
逆にしなやかさが失われちゃったりするので、
なので今回ご紹介する生地では、
エアタンブラーをやっているのは、
細コールと太コールの2種類です。
- 太田
- ここまでやって、ようやく生地ができあがります。
- ──
- 織られた後にこんなにも手間をかけて
加工するんですね。
ありがとうございました!
(明日は、カッチング加工の、 カネタカ石田さんのインタビューをお届けします。)
2024-10-30-WED
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販売日|2024年11月7日(木)午前11時より
販売方法|通常販売
出荷時期|1~3営業日以内