JAXA+PARCO+ほぼ日でお届けする
地球観測衛星の大特集ですが、
大変ながらくおまたせしました!
これまで幾多のガンダムシリーズを
プロデュースしてきた、
バンダイナムコフィルムワークスの
小形尚弘さんの登場です!
ガンダム好きがたくさん集まる
JAXAさんの中でも
ガンダム好きが嵩じて入社したという
「筋金入り」の重藤真由美さん、
いつもの明るいコーディネイト役・
安部眞史さんと、
ガンダムについて、人工衛星について、
さらには「地球」について、
アツく語り合っていただきました。
全5回、担当は「ほぼ日」奥野です。

>小形尚弘さんのプロフィール

小形尚弘(おがたなおひろ)

『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』『機動戦士ガンダムNT』『Gのレコンギスタ』など多くの作品でプロデュ―サーをつとめ、近年のガンダムシリーズ劇場作品『閃光のハサウェイ』『ククルス・ドアンの島』ではエグゼクティブプロデューサーをつとめる。現バンダイナムコフィルムワークス執行役員。

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第2回 ガンダムの話、人工衛星の話。

重藤
わたくしごとで申しわけないのですが、
入社したら種子島に配属されたんです。
小形
あ、ロケット打ち上げの。

H-IIAロケット40号機/温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)及び観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」の打ち上げ ©三菱重工/JAXA H-IIAロケット40号機/温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)及び観測衛星「ハリーファサット(KhalifaSat)」の打ち上げ ©三菱重工/JAXA

重藤
そのときに一度だけ、
打ち上げを外で見ることができたんですが、
あのときの体験とくらべても、
轟音上映で見た
『閃光のハサウェイ』の打ち上げシーンは、
すごい臨場感で‥‥本当によかったです。
──
おお、宇宙関係者のお墨付き!
小形
ありがとうございます(笑)。
あの作品は音にこだわってつくったので、
そう言っていただけると、うれしいです。
安部
打ち上げは、生の音を録ってるんですか。

小形
あの場面に関しては、
おそらく生音を使ってると思いますけど、
基本的には、アニメーションの音って、
リアルな音であればいい、
というわけでもなかったりするんですよ。
安部
そうなんですか。
小形
音から「想像してもらう」ほうが重要です。
生音だけじゃなく、
そこに何か別の音をミックスしたりして、
実際に聞いたときに、
そのシーンを想像できるような音づくりを
心がけているんです。
安部
リアルな音ならいいというわけじゃなくて、
頭の中に「リアル」を描くための音。
小形
そもそも「絵」も実写とはちがうので、
「頭の中で完成させる」のが、
いちばんベストなかたちなのかな、と。
──
以前に、実写映画の「フォーリー」つまり
映像につける音を録音するスタジオを
取材したことがあるんですが、
その作業が、めちゃめちゃおもしろくって。
小形
あ、そうですよね。
──
時代劇だったんですけど、
パタパタパタという足音を録音するのにも、
町人、農民、お侍と登場人物に合わせて、
下駄、わらじ、草履‥‥って履き替えて、
音響技師の方が、実際に足踏みするんです。
土の上を歩く場面は、土を敷いて、
板の上を歩く場面は、板を敷いて。
小形
ええ、ええ。
──
その音を、どんな場面にしたいかに沿って、
他の音とミックスしたり、
大きくしたり、ちっちゃくしたり‥‥。
音でそんなに変わるのかと思ったんですが、
めちゃくちゃ変わりました、場面の印象が。
小形
そうですよね。フォーリー的な考え方って、
アニメにも導入されているんです。
『閃光のハサウェイ』でもかなりこだわっていて、
市街地に
モビルスーツが落ちてくるシーンなんかは、
画面の外側にも、
逃げ惑っている人を想定していたり、
周囲の環境からつくりこんで録っています。
安部
おおー。
小形
そうすることでリアルな感覚が高まります。
劇場作品だと、追求できるんですよね。
テレビだとそこまで追い込めないですけど。
──
劇場の「5.1ch」みたいな環境があれば。
小形
いまはもう「7.1ch」ですね。
安部
考えてみれば、ガンダムのビームサーベル、
あれも「バヒューン!」って出ますけど、
実際は、ビームって音はしないですもんね。
──
たしかに。
安部
でも、音がないと物足りないんでしょうね。
ヒートホークの「ブワーン」がなかったら。
──
ヒートホーク。
それは、ザクが持ってるオノ‥‥。
小形
みなさんのまえで釈迦に説法なんですけど、
そもそも宇宙空間では音はしませんし。
重藤
はい(笑)。
小形
ただ、『閃光のハサウェイ』のなかでは、
落下してくるΞ(クスィー)ガンダムの入った
カーゴピサとランデブーするシーン、
あそこだけは、音を無くしているんです。
重藤
ああ‥‥たしかに。
小形
リアルさや臨場感を、表現したかったので。
それ以外の主なガンダム作品の宇宙シーンでは、
物語のわかりやすさを第一に考えて、
ビームの音や爆発音なども入れていますが、
よりグッと演出を入れたいところは
無音でいこうとか、
そういう判断をしながらつくっていますね。
重藤
たしかに、無音の場面では、
宇宙空間の緊張感が、すごく伝わりました。
──
おお。
重藤
はい‥‥国際宇宙ステーションなんかでの
実際の船外活動なんかは、
こういう緊張感の中でやってるんだろうな、
みたいなことも感じましたし。

小形
国際宇宙ステーションの船外活動の動画も
見たことあるんですけど、
宇宙飛行士の呼吸音とか
機器の発信音、
ウーンとか唸ってる音が鳴っているだけで、
あとは「無音」なんですよね。
あれ、ものすごい臨場感ですよね。
隔絶された空間という感じが、すごいです。
──
やはり、いろいろお詳しいんですね‥‥!
宇宙のことについて。
小形
いえいえ、そんなことないです。
安部
あの、ぼくと重藤は「いぶき2号」という、
地球全体の温室効果ガスの濃度を測定する
人工衛星のプロジェクトで、
ずっといっしょにやってきたんですけれど。
小形
ええ。
安部
初代である「いぶき1号」は
2009年からデータを取り続けていまして、
測定結果をグラフにしてみると、
こうして、濃度が上がり続けているんです。
人工衛星のよさって、こうやって、
長期安定的にデータが取れることなんです。
そのために、わざわざ
あんなにもお金と時間と手間ひまをかけて、
人工衛星を飛ばしているんですね。
小形
なるほど。
安部
あるいは「だいち2号」という衛星の場合、
レーダーを使って、
地球上の森林の減少具合などを見ているんです。
アマゾンなどでは、JICAと協力して
森林の違法伐採の警報システムをつくって、
アラートが出たら
現地の警察が急行するみたいなシステムを
開発したりしてきたんですが、
「地球観測衛星」って、
もう‥‥めちゃくちゃ認知度が低いんです。
小形
え、そうなんですか?
安部
JAXAの人工衛星でも、
映画にもなった人気の「はやぶさ」なんて
認知度65パーセントくらいあるし、
宇宙飛行士とかも、
壮大な夢やロマンを感じるということもあってか、
人気なんですけど、
われわれの「地球観測衛星」の仕事って、
夢もへったくれもないっていうか、
むしろ、厳しい現実を見せられるわけです。
小形
ああ、なるほど。
安部
そんなこともあって、
なかなか認知度も高まらずに‥‥というか、
めちゃくちゃ低くて。
実際に調べたら、3パーセントとかくらい。
小形
へえ!
安部
もちろん小形さんも、はじめて聞いた‥‥
という感じだと思うんですが。
小形
お名前は知ってます。「いぶき2号」とか。
重藤
えっ、すごい!
安部
うれしい!
──
つまり、「3パーセント」に入ってるんだ。
小形さん。
小形
はい、具体的なデータを拝見したのは
はじめてですが、知ってますよ。
安部
それは、本当に、うれしいです(笑)。
ありがとうございます。

温室効果ガス観測技術衛星2号「GOSAT-2」軌道上外観図 ©JAXA 温室効果ガス観測技術衛星2号「GOSAT-2」軌道上外観図 ©JAXA

重藤
わたしたちの部署自体が
地球の周囲の、けっこう高度の低いところ、
だいたい500キロから700キロくらいを
まわっている衛星ばかりを扱っていまして。
安部
宇宙といっても、かなり「近所」なんです。
重藤
その点「はやぶさ」なんかは、
もう、遠く遠くの宇宙まで旅をしますから、
ドラマ性があるんですが‥‥。
──
高度の違いが、認知度の違い‥‥深い。
小形
『Gのレコンギスタ』という作品は、
宇宙エレベーターがテーマなんです。
なので、物語をつくるときに富野監督が、
地球儀の表面から「タコ糸」をひっぱって、
月がこのへんだとしたら、
人工衛星はこのあたりに回っているのか、
ISSはこのへんか、とか‥‥。
安部
おお‥‥。
小形
いろいろやっていたんで、わかります。
重藤
そういう、徹底的に実証的な物語づくりに、
しびれるんです‥‥!

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』より ©創通・サンライズ 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』より ©創通・サンライズ

(つづきます)

2022-10-04-TUE

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