現代美術作家の加賀美健さんは、ヘンなものを買う。「お金を出してわざわざそれ買う?」というものばかり、買う。ショッピングのたのしみとか、そういうのとは、たぶん、ちがう。このお買い物も、アートか!?あのお買い物を突き動かすものは、いったい何だ。月に一回、見せていただきましょう。お相手は「ほぼ日」奥野です。

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加賀美健(かがみ・けん)

1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。

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instagram: @kenkagami

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買ったもの_その20

「キョンシーの帽子」

テンテン、かわいかったですよね。スイカ頭は愛すべきアホだった。キョンシーが流行ってた当時は小学生でしたが、みんなピョンピョン跳ねてましたよ。教室中を。絵の具で顔を真っ青に塗った本格派がいたりとか。この帽子は当時の貴重なデッドストック。おデコについてるのは、ごぞんじ黄色いおフダ。これを貼るとキョンシーが動けなくなっちゃうっていう、べんりなアイテムです。メルカリで2000円で見つけて、いわゆる「秒で」。一瞬たりとも迷いませんでした。なぜならキョンシーグッズって「いい値段」するんです、レア物だと。『霊幻道士キョンシーカラー図鑑』って本なんか、ウン万円とかしたはず。ともあれ、届いたら子ども用でちっちゃかったんだけど、家族にも「いいんじゃない」と言われて気に入ってます。ただ、だからといって、全身キョンシーでそろえるのはちがうじゃないですか。さすがにやりすぎですよね。全身ヴィトンとか、似合えばいいけど、それが許される人はなかなかいない。重要なのは、おしゃれ界隈で言うところのハズしテクです。そこで、トップスには100円で買った学ランを合わせました。どこかの中学生が着ていた、青春の忘れもの。内側に「桃井」とあるので、桃井くんのお母さんがリサイクルショップに出したのかな。365日履いてる無印デニムの足元は、最近、急に気になりはじめたピエロの靴。2タイプあるけど、どっちでもいいですね。その日の気分で。ただ、大きい方は階段の上り下りが不可能なレベルです。2023年の霊幻道士スタイルは、これくらいの感じでどうでしょう。今回は、タイトルこそ「キョンシーの帽子」ですが、コーディネイトで見てほしい。‥‥というか、じつは「キョンシーの帽子」が「最後」だったんです、スタイリング的には。大好きな学ランを着て、定番の無印デニムに真っ赤なピエロ靴をはいて、「帽子、何かないかな~?」と見回したら「キョンシーの帽子」があった。それを最後、頭に載せたんです。ショートケーキのいちごみたいに。そしたら、2023年の霊幻道士スタイルができちゃった。それくらい帽子って、すべてを決めてしまうところがありますね。ちなみに、よく聞かれるんですが、こういう格好で外には出ません。人には見せないんです、別に。家族だってもういちいち見に来ませんし。ほしいものを買って、それが届いて、身につけたときに「完成」する。それが、ぼくの買いもの。たまに袖を通して、鏡の前に立って「よし」。それだけのために、買う。相当イケてんなと思ったときにインスタに上げるくらい。そう思うと、何なんだろう、ぼくの買いものって。模索中です。

さすがは、スタイリストのアシスタントを6年もつとめた加賀美さん。キョンシーの帽子から、妙に含蓄のある話の展開でおどろきました。「すべてを決めるもの、それは帽子である」とか。ちなみに、サラリとしか触れられていませんが2023年の霊幻道士スタイル」のときでさえ「無印のデニム」なんですよね。筋金入りとは、まさにこのこと。まったくブレない。尊敬です。

加賀美さんの「カッコいい」

両腕におしぼりの袋fukuro

居酒屋で出てくるおしぼりの袋が腕についちゃってる人って、たまにいるじゃないですか。いや、ぼくも、ついちゃうんですよ。あれを、あえて「両腕につけちゃう」のはどうでしょうか。コンパのときに、自分の電話番号なんか書き込んで、目当ての女性にさりげなくメッセージを送るのもスマートです。

2023-10-16-MON

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