僕はいま、山手線に乗っている。
正確には乗りはじめてまだ2分も経たない。
秋葉原から隣の神田に着く2分間、
車窓から流れる神田を知りたくなった。
だからいま、カメラを構えている。

元々は総武線に乗っていて、
山手線に乗り換える予定もなかった。
それなのに、秋葉原に到着する直前、
ご一緒していた先輩に
「すみません、やっぱり秋葉原で降ります。
お疲れさまでした！」と、ドタキャンならぬ
ドタ降り解散をしてしまったのは、夕日のせいだ。
新小岩や錦糸町で、車窓からチラチラと、
眩しい橙色の光が街を照らしているのが分かって、
気になってしまったせいだ。

秋葉原で山手線に乗り換えて、神田へ向かう。
この時間帯に電車から眺める神田はどんな景色だろうか。
そもそも電車から神田を撮ったこともなかったな。
11両編成の11号車に乗った。
人があまり乗っていなくてホッとした。

今日の１枚は、その2分間のうち2秒ほどの景色だ。
場所は神田須田町、道路は靖国通り、
目の前には中央線が走っていた。
ただ、意図して撮ったのではなく、
偶然撮れたというニュアンスの方が正しい。
具体的には「夕日だ！夕日だ！」の感情しか
脳内には存在しておらず、道路も電車も偶然写ったのだ。
あとから写真を振り返って、
ああ、ここは靖国通りで、この電車は中央線か、と。

偶然あたらしい景色と出会えることが、僕はうれしい。
同じ写真は、意外と撮れないかもしれないから。
ただ、その代償として、ご一緒していた先輩からすれば、
僕は急に慌てて秋葉原で降りた、変なヤツだったと思う。