テレビでひっぱりだこの滝沢カレンさんが、
ちょっと変わったレシピ本を出しました。
おいしそうな料理が並んでいるけれど、
文章を読んでみると、あれ? あれれ?
「何も知らない鶏肉」「目つぶし覚悟の玉ねぎ」
すべて、カレンさん流の言葉で解説された
独特な世界観の“レシピ文学”になっています。
そんなカレンさんから糸井重里に、
この本『カレンの台所』の帯に添える
コメントのご依頼をいただきました。
「この人は、日本語をこわしているのではない。
あたらしい日本語をデザインしているのだ。」
と書いた糸井が、滝沢カレンさんの日本語は
どうできあがったのか対談しながら探ります。
滝沢カレン(たきざわかれん)
1992年東京生まれ。
2008年、モデルデビュー。
現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。
主なレギュラー出演番組に
『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、
『沸騰ワード10』(日本テレビ)、
『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、
『ソクラテスのため息
~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』
(テレビ東京)など。
Instagram @takizawakarenofficial
- 糸井
- カレンさんは、どういうふうに
今の日本語を身につけてきたんだろう。
生まれてこのかた、
ずっと日本語をしゃべっているの?
- 滝沢
- そうです。
- 糸井
- 日本語以外は?
- 滝沢
- 日本語だけです。
- 糸井
- あ、日本語だけなんだ。
それで今の不思議な練られ方をしているのは、
うーん‥‥、なんでだろう。
- 滝沢
- ひとりっ子というのがすごく強くて、
すぐに友だちを作るタイプじゃなかったんです。
まずは虫と友だちになってみたり、
そのうちに植物と友だちになったり。
友だちができるまで、
庭から友だちを探していました。
- 糸井
- 無人の友だちだね。
- 滝沢
- 池に向かって話しかけていました、
向こうは会話を返してくれないけれど。
今では大嫌いなオタマジャクシとか、
アリとかを集めるのが好きだったんです。
なんであんなに触れたのか、
今では考えられないんですけど。
小学生の最初の頃は、
友だちづくりができないじゃないですか。
なので、ひとりの時間が
めっちゃめちゃ多かったのもあるんですけど。
- 糸井
- 育ったのは日本?
- 滝沢
- 日本です、下北沢です。
- 糸井
- 下北沢なんだ。
外国の子に見えるような姿を
子どもの頃からしていたの?
- 滝沢
- 「ハーフだ、ハーフだ」って言われました。
ただ、私は日本が入っているとも
思われないハーフだったんで、
外国の人だって言われていました。
- 糸井
- まわりの子たちが話しかけようにも、
日本語で話しかけちゃダメだって思ったのかね。
- 滝沢
- そうですね。
センキュー、センキュー言われてました。
でも私は日本人だと思われたかったから、
センキューを無視していたんです。
そうしたら、友だちができなかった。
でも、小2から友だちができて。
小1の時は、ぎりぎり隣の家の子ぐらい。
小2から、全部の家の友だちと
遊べるようになりました。
- 糸井
- 他の国の言葉はしゃべれないんですか。
- 滝沢
- しゃべれないです。
- 糸井
- まったく?
- 滝沢
- はい。そういう関係性がないので。
でも、日本語だけで生きている人も
多いと思いますよ。
今は、すぐにアメリカの言葉を
しゃべる人もいると思うんですけど。
- 糸井
- カレンさんの外見だと、
外国語がしゃべれると思われやすいよね。
- 滝沢
- 道もよく聞かれますね、
ありがたいことに。
- 糸井
- それ、困らない?
- 滝沢
- それは全然、チャンスだと思って
しゃべらせてもらってます。
- 糸井
- ということは日本に育って、
日本で習うのと同じ英語を習ったんだ。
- 滝沢
- 私も小学校から高校まで行っているので、
英会話、英語という授業は受けました。
- 糸井
- みんなといっしょに、This is a pen.だ。
- 滝沢
- This is a pen.やってます。
- 糸井
- カレンさんとおなじ育ち方をした人が
まわりにもたくさんいるはずなのに、
「滝沢カレン」の日本語が、
どうしておもしろいことになったんだろうね。
- 滝沢
- いやいや、そんなことは絶対ないと思います。
- 糸井
- 絶対ないと思いますか(笑)。
- 滝沢
- 私の言葉を分析するテレビの企画も
よくやってもらっていたんですけど、
結局誰も分析できなくてモヤモヤしています。
勝手に探られるのはどうぞどうぞなんですけど、
自分は気にしたことがなかったんです。
テレビに出るようになって、
探りたいですって言われるんですけど、
わかりませんでしたってなるので。
- 糸井
- まわりにいた日本人の少女と、
日本語を覚える材料は同じはずなんだよね。
となると、本かもしれない。
- 滝沢
- 本、好きでした。
- 糸井
- どんな本を読むの。
- 滝沢
- 昔は『霧のむこうのふしぎな町』っていう本とか、
『さいごのまほう』という魔女の本を読んでいました。
人に薦められた本というよりは、
本屋さんに行って、いいなと思った本を買います。
- 糸井
- 直感的に?
- 滝沢
- はい。
- 糸井
- ぼくね、どうしてカレンさんの
文章ができるのかをわかりたくて、
あなたが書いた短い文章を
タイピングして、翻訳にかけてみたの。
- 滝沢
- すごい、ありがとうございます(笑)
- 糸井
- そうやって翻訳された英語を、
今度はもう一度、
日本語に翻訳しなおしたんだよ。
そうしたら、すごくわかりやすくなった。
- 滝沢
- へっ?
- 糸井
- というか、普通になったんです。
- 滝沢
- 三軒回ってちゃんとなった。
- 糸井
- もしかしたら、英語を経由すれば
カレンさんの文章を
真似できるのかなって思ったんだけど、
どうやら違うんだよね。
(つづきます)
2020-04-16-THU
-
滝沢カレンさん初の料理本、
『カレンの台所』ができました!