
突然大きな音が鳴ったり、
緊張すると痛くなったり、
日常にありがちな「おなか」のトラブルですが、
そのとき私たちの体内では
どんなことが起こっているんだろう?
そんな疑問を抱いていた乗組員が、
ほぼ日コンテンツでも
なにかとお世話になっている
「けいゆう先生」こと、消化器外科医の
山本健人先生に聞いてみることにしました。
さすがのけいゆう先生、
素朴な「なぜ?」を正面から受け止めて、
とってもわかりやすく解説してくれたんです。
けいゆう先生(山本健人さん)
博士(医学)。外科医専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。「けいゆう先生」として情報を発信しているX(旧twitter)が人気を博す。著書に『すばらしい人体』『すばらしい医学』(ダイヤモンド社)など多数。
- ──
- 消化の話と関連するか
ちょっと自信がないんですけど、
おなかが鳴るタイミングと理由について質問です。
おなかいっぱいのときも、
空腹のときも鳴るんですけど、
何か消化のシステムと関係しているんですか。
- けいゆう
- 腸って常に蠕動(ぜんどう)運動といって、
下流に食べたものの中味を
送り出すという動きをしているんですね。
だから、腸っていつも鳴っているんですよ。
私たちが聴診器をつけて、
おなかに聴診器に当てると、
健常な状態なら常に絶対に音が聞こえるんです。
- ──
- 休むことなく、ずっと動いてるんですか。
- けいゆう
- そうなんです。
音が聞こえないってことは、
何か腸の病気の可能性があります。
腸の動きが悪くなっていると、
聴診器を当てても、音が聞こえなかったり、
小さかったりするんです。
だって、この模型で見ても、
小腸って、下に下りているところもあるけど、
逆に重力に逆らって
上に向かっているところもありますよね。
- けいゆう
- つまり、頑張って下流に送り出す力がないと
途中で停滞してしまうので、
しっかり蠕動しているんですよ。
で、ものを食べた後は、
当然その強さは強くなるというか、
速く内容物を送り出さないといけないので、
蠕動運動が激しくなるから
音も大きくなります。 - おなかがすいたときというのは、
たくさんのものをこれから
迎え入れないといけないので、
残っているものをまず下に
送り出しておかないといけないですよね。
だから、そこでも蠕動が激しくなります。
ですから、常に蠕動しているけれど、
必要時に蠕動の強さが強くなるから、
聴診器を当てなくても聞こえる音量になる、
というわけです。
- ──
- なるほど‥‥そういう仕組みだったんですね。
- けいゆう
- そうそう、音量が違うだけで、
いつも鳴っている。
そういうことです(笑)。
- ──
- 驚きです。
先生は外科医として、
おなかの中を見るわけですけども、
そのときも絶えず動いているんですか。
- けいゆう
- そうです。動いてますよ、目の前で。
- ──
- 麻酔が効いていても動くんですか。
- けいゆう
- 動いてます。
腸は常に蠕動してます。
- ──
- じゃあ動いてる腸を手術してるんですか。
- けいゆう
- そうですね。
- ──
- すごい。
それは外科医の先生でしか
見ることができない光景ですね。
- けいゆう
- 生きてる人のおなかの中を見るって、
ないですもんね、なかなか。
- ──
- ありませんね。
動いているものを手術するのって、
とても難しそうですね。
- けいゆう
- そうですね。
まあ、動き過ぎて捕らえるのが難しい
小動物ほどには激しく動いてないですから(笑)。
ゆっくり、ウネウネって動いてます。
- ──
- なんかもう、驚きだらけです。
(つづきます)
2025-03-21-FRI