けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。
第6回
情報はみんなのもの。
- 糸井
- お金の話ってみんな興味があるし、
数字でも表しやすいけど、
使い方がわからなかった人が、
とうとうお金を配りはじめたじゃないですか。
「いっそ配るでいいんじゃない?」っていう。
- けんすう
- はいはい(笑)。
- 糸井
- それはそれで価値だと思うんです。
「ほんとにやったやついるの?」っていったら、
いままでいなかったわけだから。
彼はそこで名を残しましたよね。
- けんすう
- ほんとにお金を配る人がいたら、
どうなるかっていう社会実験が見られて、
ちょっとおもしろかったですよね。
- 糸井
- そういう多様性みたいなのは、
まったくひっくり返していうと、
「俺をなめるなよ」になるんだけど。
それと同時に「認められたらうれしい」とか
「ああ、わかってくれたのか」とかもあるし、
それはもしかしたら親子間で
交わしてる流通かもしれないですね。
- けんすう
- そういえば最近読んだ本で、
愛情空間と貨幣空間を分けるって話があって。
- 糸井
- ほう。
- けんすう
- ビジネスは貨幣空間だけど、
家族や恋人の関係は愛情空間というもので、
ようは家事をやってくれた奥さんに
1万円渡したらそれって家政婦さんだよね、
みたいな話なんですけど。
その貨幣空間の損得勘定の話が、
ここ数十年きちんと分かれていたのが、
いまごっちゃになってる印象はあります。
- 糸井
- アマチュアリズムの話も、
いまの話もほとんど同じことを
いってるような気がしますよね。
けんすうさんのいまの会社だって、
儲かることをやるだけのベンチャーじゃないし、
儲からなかったらつぶれちゃうし。
- けんすう
- そうですね。
- 糸井
- ぼくもそうなんだけど、
やっぱりスタッフがいて、
いっしょに同じ何かを作ってる以上、
みんな食いっぱぐれなくて、
豊かでやりたいっていうのが当たり前の話で、
もしそれを守れていたら、
あとは何があるのが一番うれしいんだろうね。
けんすうさんだったら、
何かヒントをつかんでるのかなと思って。
- けんすう
- うーん、なんだろう。
- 糸井
- けんすうさんいま、
人に伝えるための言葉を、
いっぱいひねり出したりしてますよね。
- けんすう
- ああ、はい。
- 糸井
- あれほど親切になった理由はなんですか。
- けんすう
- ぼくは運がいいというか、
例えば、糸井さんとお会いして、
こうやって話をしていただいた情報が、
地方にいるっていう一点だけで、
直接手に入らない人っていうのは、
けっこうたくさんいると思っているんです。
なので、そういう質問が来たときは、
なるべく答えていこうみたいな、
そういう意識はちょっとあります。 - こういう考え方があるとか、
こういう知識があるっていうだけで、
すごい差が出るのに知らないっていうのが
ぼくはよくないなと思っていて。
もうちょっと抽象度高くいうと、
格差があるのよくないっていうのが
なんとなくあるんでしょうね、お金も知識も。
- 糸井
- その倫理は何がつくったんだろう。
マンガ?
- けんすう
- なんだろう、マンガなのかな‥‥。
- 糸井
- 親は?
- けんすう
- 親は特別そういうタイプでもないですね。
普通の人です。
- 糸井
- けっこう強い意志を持ってないと、
そこって守れないと思うんですよね。
つまり、俺が獲得したものは、
俺のものだからゴールまで持ってくよっていう。
- けんすう
- いまちょっと思ったのは、
さっきの大学受験のサイトと同じで、
たくさん知識があってよかった、
というのと似てるのかもしれないです。
- 糸井
- あ、なるほど。
- けんすう
- 実際に学校の授業よりも、
100倍くらい効率的だったという衝撃があって。
でも、それを知らないだけで、
勉強ができないのはもったいないなっていう。
そういう感覚はありますね。
- 糸井
- 最初からそういうスタートだったんだ、思えば。
- けんすう
- そうかもしれないです。
- 糸井
- 俺のためは「みんなのため」になるっていう。
それ、俺も同じかも。
- けんすう
- たぶん近いと思います。
「ほぼ日の學校」もそうだと思いますし。
ただのニッチな学校じゃなく、
ちゃんと1000万人に使われるようなものを
やりましょうっていうのでやっていて、
しかもちゃんと蓄積していこうっていうのは、
なんか近い感覚な気もします。
- 糸井
- このタイミングで
けんすうさんに声をかけようと思ったのは、
ひとつきっかけがあって。
- けんすう
- そうなんですか?
- 糸井
- 「ビジネス書って案外役に立つよ」
っていう原稿をnoteに書いたじゃないですか。
- けんすう
- ああ、はいはい。
「ビジネス書の読み方」について
書いたものですね。
- 糸井
- ビジネス書って縁のない人にはないし、
スーツ着た人が読むみたいな印象があるけど、
それってもったいないと思っていたんです。 - ビジネス書っていうジャンルの中には、
それこそ行動経済学が入っていたり、
「へぇーー」っていうものがいっぱいあるんで、
それをああいうふうに紹介してくれて、
ほんとにありがたいなあと思って。
- けんすう
- ぼく、前職でハウツーサイトをやっていて、
例えば、ハンバーグ作るってときに、
じぶんの発想でなんとなく作る人って、
まずいないと思うんです。
みんなレシピを見るからおいしくできるわけで。
- 糸井
- うん、うん。
- けんすう
- なのに「アイデアが出ません」って悩んでる人は、
意外とアイデアの本とか読んでいないなって。
「それだとやっぱり難しくないですか?」
ってところがもともとのスタートなんです。
- 糸井
- そうなんですよね。
- けんすう
- だからアイデアの出し方でいうと、
だいたい20冊読んでみたら、
もうほとんど解決しちゃうと思います。
こういうやり方あるんだとかを
知ってるだけでもぜんぜん違いますし。 - そういうのをまったくやらずに、
ハンバーグがおいしくないから
じぶんは料理の才能がないんだって
決めつけちゃう人がいるのは、
なんかちょっともったいないですよね。
- 糸井
- そういう発想は、ぼくとそっくりです。
- けんすう
- あ、そうですか。
- 糸井
- フードスタイリストの飯島奈美さんと作った
『LIFE』っていう料理本は、
書いてあるとおりにやったら、
絶対にうまくできますっていう本なんです。
ほんとうは適当なものもウェルカムなんですけど、
まずはおいしいのが絶対できるっていう、
そういう経験をしようよっていうもので。
- けんすう
- めっちゃわかります。
そういうのを知らずに、
みんな最初からアレンジしちゃうんですよね。
- 糸井
- そうそう、最初からね。
直感ってそこで使うもんじゃないんだよね。
- けんすう
- すごくわかります。
むしろそこで節約してるからこそ、
あとで使えるみたいな。
(つづきます)
2023-06-17-SAT
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けんすうさんが選ぶ、
インターネットのいまとこれからを
考えるための本。ふだんからビジネス本を
たくさん読まれているけんすうさん。
インターネット関連のおすすめ本を、
解説付きで5冊教えていただきました。
もっと深く知りたい方は、
ぜひ参考にしてみてください。『ツイッター創業物語
金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP)
著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃ツイッターは歴史的にみても、
かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
トラブルつづきの企業です。
それは、いまもつづいているとも言えます。経営、運用、技術、どれをとっても、
極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
サービスが魅力的であるために、
世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
とてもおもしろいなと思っています。『ソーシャルメディア・プリズム
SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房)
著:クリス・ベイル 訳:松井信彦ソーシャルメディアによる
影響について書かれている本です。
短い書籍ではありますが、
ソーシャルメディアによる
社会の分断についての問題から、
インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。『ネットは社会を分断しない』
(KADOKAWA/角川新書)
著:田中辰雄、浜屋敏10万人規模の調査をして、
いまのインターネットと
社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
インターネットによって
社会が分断されているように感じたりしますが、
実はそんなことないよ、
という内容が書かれています。『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社)
著:アダム・オルター 訳:上原裕美子依存症ビジネスについて書かれた本です。
現在のインターネットの主流である
ソーシャルメディアやゲームなどで、
依存症ビジネスの仕組みは
良くも悪くも活用されています。
ここを知っておくことで、
いまのインターネットについてより理解できるかなと。『イーサリアム
若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP)
著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー
訳:高橋聡歴史に名を残すであろう
ヴィタリック氏のコラム集です。
暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
極めて頭がいいんだろうな、というのと、
それをわかりやすく美しい文章で
表現できる稀有な存在です。
インターネットを次の段階に
引き上げた人の名文がたっぷり読めます。