けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。

>けんすうさんプロフィール

けんすう

起業家、エンジェル投資家、
アル株式会社代表取締役。

1981年生まれ。
学生時代に「ミルクカフェ」という
大学受験サービスを立ち上げたあと、
レンタル掲示板の「したらば」を運営。
その後リクルートに新卒で入社した後、
起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリース。
2014年にKDDIグループにM&Aされる。

現在は「クリエイティブ活動を加速させる」ために、
きせかえできるNFT「sloth」、
成長するNFT「marimo」などを手掛けている。

Twitter:@kensuu
note:kensuu

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第6回

情報はみんなのもの。

糸井
お金の話ってみんな興味があるし、
数字でも表しやすいけど、
使い方がわからなかった人が、
とうとうお金を配りはじめたじゃないですか。
「いっそ配るでいいんじゃない?」っていう。
けんすう
はいはい(笑)。
糸井
それはそれで価値だと思うんです。
「ほんとにやったやついるの?」っていったら、
いままでいなかったわけだから。
彼はそこで名を残しましたよね。
けんすう
ほんとにお金を配る人がいたら、
どうなるかっていう社会実験が見られて、
ちょっとおもしろかったですよね。
糸井
そういう多様性みたいなのは、
まったくひっくり返していうと、
「俺をなめるなよ」になるんだけど。
それと同時に「認められたらうれしい」とか
「ああ、わかってくれたのか」とかもあるし、
それはもしかしたら親子間で
交わしてる流通かもしれないですね。
けんすう
そういえば最近読んだ本で、
愛情空間と貨幣空間を分けるって話があって。
糸井
ほう。
けんすう
ビジネスは貨幣空間だけど、
家族や恋人の関係は愛情空間というもので、
ようは家事をやってくれた奥さんに
1万円渡したらそれって家政婦さんだよね、
みたいな話なんですけど。
その貨幣空間の損得勘定の話が、
ここ数十年きちんと分かれていたのが、
いまごっちゃになってる印象はあります。
糸井
アマチュアリズムの話も、
いまの話もほとんど同じことを
いってるような気がしますよね。
けんすうさんのいまの会社だって、
儲かることをやるだけのベンチャーじゃないし、
儲からなかったらつぶれちゃうし。
けんすう
そうですね。
糸井
ぼくもそうなんだけど、
やっぱりスタッフがいて、
いっしょに同じ何かを作ってる以上、
みんな食いっぱぐれなくて、
豊かでやりたいっていうのが当たり前の話で、
もしそれを守れていたら、
あとは何があるのが一番うれしいんだろうね。
けんすうさんだったら、
何かヒントをつかんでるのかなと思って。
けんすう
うーん、なんだろう。

糸井
けんすうさんいま、
人に伝えるための言葉を、
いっぱいひねり出したりしてますよね。
けんすう
ああ、はい。
糸井
あれほど親切になった理由はなんですか。
けんすう
ぼくは運がいいというか、
例えば、糸井さんとお会いして、
こうやって話をしていただいた情報が、
地方にいるっていう一点だけで、
直接手に入らない人っていうのは、
けっこうたくさんいると思っているんです。
なので、そういう質問が来たときは、
なるべく答えていこうみたいな、
そういう意識はちょっとあります。
こういう考え方があるとか、
こういう知識があるっていうだけで、
すごい差が出るのに知らないっていうのが
ぼくはよくないなと思っていて。
もうちょっと抽象度高くいうと、
格差があるのよくないっていうのが
なんとなくあるんでしょうね、お金も知識も。
糸井
その倫理は何がつくったんだろう。
マンガ?
けんすう
なんだろう、マンガなのかな‥‥。
糸井
親は?
けんすう
親は特別そういうタイプでもないですね。
普通の人です。
糸井
けっこう強い意志を持ってないと、
そこって守れないと思うんですよね。
つまり、俺が獲得したものは、
俺のものだからゴールまで持ってくよっていう。
けんすう
いまちょっと思ったのは、
さっきの大学受験のサイトと同じで、
たくさん知識があってよかった、
というのと似てるのかもしれないです。
糸井
あ、なるほど。
けんすう
実際に学校の授業よりも、
100倍くらい効率的だったという衝撃があって。
でも、それを知らないだけで、
勉強ができないのはもったいないなっていう。
そういう感覚はありますね。
糸井
最初からそういうスタートだったんだ、思えば。
けんすう
そうかもしれないです。
糸井
俺のためは「みんなのため」になるっていう。
それ、俺も同じかも。
けんすう
たぶん近いと思います。
「ほぼ日の學校」もそうだと思いますし。
ただのニッチな学校じゃなく、
ちゃんと1000万人に使われるようなものを
やりましょうっていうのでやっていて、
しかもちゃんと蓄積していこうっていうのは、
なんか近い感覚な気もします。

糸井
このタイミングで
けんすうさんに声をかけようと思ったのは、
ひとつきっかけがあって。
けんすう
そうなんですか?
糸井
「ビジネス書って案外役に立つよ」
っていう原稿をnoteに書いたじゃないですか。
けんすう
ああ、はいはい。
ビジネス書の読み方」について
書いたものですね。
糸井
ビジネス書って縁のない人にはないし、
スーツ着た人が読むみたいな印象があるけど、
それってもったいないと思っていたんです。
ビジネス書っていうジャンルの中には、
それこそ行動経済学が入っていたり、
「へぇーー」っていうものがいっぱいあるんで、
それをああいうふうに紹介してくれて、
ほんとにありがたいなあと思って。
けんすう
ぼく、前職でハウツーサイトをやっていて、
例えば、ハンバーグ作るってときに、
じぶんの発想でなんとなく作る人って、
まずいないと思うんです。
みんなレシピを見るからおいしくできるわけで。
糸井
うん、うん。
けんすう
なのに「アイデアが出ません」って悩んでる人は、
意外とアイデアの本とか読んでいないなって。
「それだとやっぱり難しくないですか?」
ってところがもともとのスタートなんです。
糸井
そうなんですよね。
けんすう
だからアイデアの出し方でいうと、
だいたい20冊読んでみたら、
もうほとんど解決しちゃうと思います。
こういうやり方あるんだとかを
知ってるだけでもぜんぜん違いますし。
そういうのをまったくやらずに、
ハンバーグがおいしくないから
じぶんは料理の才能がないんだって
決めつけちゃう人がいるのは、
なんかちょっともったいないですよね。
糸井
そういう発想は、ぼくとそっくりです。
けんすう
あ、そうですか。
糸井
フードスタイリストの飯島奈美さんと作った
『LIFE』っていう料理本は、
書いてあるとおりにやったら、
絶対にうまくできますっていう本なんです。
ほんとうは適当なものもウェルカムなんですけど、
まずはおいしいのが絶対できるっていう、
そういう経験をしようよっていうもので。
けんすう
めっちゃわかります。
そういうのを知らずに、
みんな最初からアレンジしちゃうんですよね。
糸井
そうそう、最初からね。
直感ってそこで使うもんじゃないんだよね。
けんすう
すごくわかります。
むしろそこで節約してるからこそ、
あとで使えるみたいな。

(つづきます)

2023-06-17-SAT

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  • けんすうさんが選ぶ、
    インターネットのいまとこれからを
    考えるための本。

    ふだんからビジネス本を
    たくさん読まれているけんすうさん。
    インターネット関連のおすすめ本を、
    解説付きで5冊教えていただきました。
    もっと深く知りたい方は、
    ぜひ参考にしてみてください。

    『ツイッター創業物語 
    金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP) 
    著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃

    ツイッターは歴史的にみても、
    かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
    トラブルつづきの企業です。
    それは、いまもつづいているとも言えます。

    経営、運用、技術、どれをとっても、
    極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
    サービスが魅力的であるために、
    世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
    とてもおもしろいなと思っています。

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    『ソーシャルメディア・プリズム 
    SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房) 
    著:クリス・ベイル 訳:松井信彦

    ソーシャルメディアによる
    影響について書かれている本です。
    短い書籍ではありますが、
    ソーシャルメディアによる
    社会の分断についての問題から、
    インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。

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    『ネットは社会を分断しない』
    (KADOKAWA/角川新書) 
    著:田中辰雄、浜屋敏

    10万人規模の調査をして、
    いまのインターネットと
    社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
    インターネットによって
    社会が分断されているように感じたりしますが、
    実はそんなことないよ、
    という内容が書かれています。

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    『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) 
    著:アダム・オルター 訳:上原裕美子

    依存症ビジネスについて書かれた本です。
    現在のインターネットの主流である
    ソーシャルメディアやゲームなどで、
    依存症ビジネスの仕組みは
    良くも悪くも活用されています。
    ここを知っておくことで、
    いまのインターネットについてより理解できるかなと。

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    『イーサリアム 
    若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP) 
    著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー 
    訳:高橋聡

    歴史に名を残すであろう
    ヴィタリック氏のコラム集です。
    暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
    極めて頭がいいんだろうな、というのと、
    それをわかりやすく美しい文章で
    表現できる稀有な存在です。
    インターネットを次の段階に
    引き上げた人の名文がたっぷり読めます。

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