身近にある食べものを本物そっくりに
木で作っちゃう木彫りアーティスト
「キボリノコンノ」さんを知ってますか。
SNSで新作を披露するたびに、
つい参加したくなっちゃう木彫りクイズは
どんなひとが作っているんでしょう。
1月26日(金)から渋谷PARCO「ほぼ日曜日」で
企画展がはじまるキボリノコンノさんのもとへ、
お話をうかがいに行ってきました。
木彫りをしながらも、コンノさんの根っこには
「おくりもの」という気持ちがあるそうですよ。
聞き手は、ほぼ日の平野です。

>キボリノコンノさんプロフィール

キボリノコンノ

木彫りアーティスト。1988年生まれ。
2021年に趣味で木彫りを始め、
「あっと驚くもの」をテーマに作品を制作し、
SNSで発表し続けている。
「溶けかけの氷」をはじめ、
「注がれるコーヒー」や「シガールの袋」など、
数多くの作品がTVやインターネットで話題となり、
2023年からプロの木彫りアーティストとして
本格的に活動を開始。
全国各地で展覧会やワークショップなどの
イベントを開催。

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(2)シゼンノコンノ

──
ぼく、コンノさんとほぼ同世代なんですが、
当時の小学生はゲームやミニ四駆に夢中で、
自然の遊びをしている子のほうが
珍しかったんじゃないかなと思うんです。
友達の反応はどうでしたか。
コンノ
友達はよく遊びに来てましたね。
東京に住んでいた頃ってカエルがレアだったんです。
父親がカエルを捕まえてきたときなんて、
動物園みたいな感じで遊びに来てくれました。
──
そうか。東京の子にはカエルが珍しいんだ。
田舎の夜なんて、うるさいぐらい鳴いてるのに。
コンノ
ね、そうですよね。
東京って、カエルが少ないんですよ。
カエルもヘビも捕まえて飼ってました。
──
怖いとか気持ち悪いとかはなくて、
とにかく観察したいんですかね。
コンノ
むしろ、ペットが怖かったです。犬とか猫とか。
飼われている動物が自然に思えなかったんです。
人間みたいな暮らしをしていることに
なんだか違和感を覚えてしまって。
犬だって本来は野生動物なんだから、
襲ってくる可能性もあるじゃないですか。
それなのに、人が飼っているものだから、
襲われたとしてもぼくは抵抗できなくて、
噛まれるしかないんだなってすごく怖くて。
ずっと自然の中で生きていたせいなのか、
犬とか猫は今でも苦手ですね。
──
ああ、コンノさん自身が、
自然界の生き物の気持ちになってるんですね。
幼少期は東京で育って、
どこかで静岡県にお引っ越しされるんですよね。
静岡のほうが自然が豊かなのでは?
コンノ
小学5年生のときに、父の仕事の関係で
静岡県の島田市に越してきたんですが、
島田の同級生は自然で遊んでいませんでした。
公園でも、河川敷でも遊んでないし。
サッカーをやったりしていましたね。
──
静岡はサッカー王国だし、
世の中がサッカーブームだったから
しょうがない気もします。
コンノ
だから、自然遊びが好きなのはぼくぐらい。
でも、そこから周りを巻き込んで、
みんなにザリガニ釣りをやらせましたね。
──
ザリガニ釣りも経験したことのない
子たちだったんですね。
コンノさんは友達みたいに、
スポーツにはいかなかったんですか。
コンノ
スポーツは、けっこうヘタクソで。
中学で卓球をはじめてから
そこそこ好きになったんですけど、
それまでは、かけっこでもビリ争いでした。
──
自然を駆け回るけれど、その足は遅かった。
コンノ
そう、平地では走っていないから(笑)。
ゴツゴツしたところだったら、
めちゃくちゃ速いんですよ、山とか。
まっすぐ走るのは苦手でした。
──
思えば、まっすぐって
自然界では不自然なんだ。
コンノ
そう、平らな場所ってあまりないんで。
だから走るのは得意じゃなかったですね。
──
小学5年生で静岡に引っ越してきて、
自然の遊びが続いていました。
木彫りにたどりつくのは、まだ先でしょうか。
コンノ
あっ、そういえば小学6年生のときに
木で何かを作ることの転機がありましたよ。
夏休みの自由研究で木の飛行機を作ったんです。
こちらなんですけど。

──
おーっ、すごい。これを小学生がひとりで。
これって木工のキットとかではなくて
オリジナル作品ですよね。
このプロペラも回るんですか。
コンノ
プロペラも、タイヤも回りますよ。
ホームセンターで買ってきた板と角材を
のこぎりで切って、彫刻刀で彫るんです。
ただ、彫刻刀だとコックピットのくぼみが
うまく彫れないんですよ。
彫刻刀だと狭くて、えぐれないんです。
これをどうにかしたいって父親に相談したら、
ミニルーターを買ってきてくれました。
この先端が回転して、木が彫れる機械です。
──
へえーっ、こんな機械があるんだ。
グリグリって穴を開けるんですね。
ミニルーターってはじめて見ましたが、
歯医者さんが歯を削る機械に似てますね。
コンノ
そうです、そうです。
ミニルーターを買ってくれたおかげで、
木ってこんなに自由に扱えるんだって
知ることができたんですよね。
今でも、ぼくの木彫りは彫刻刀を使うよりも、
ほとんどミニルーターで作ってるんですよ。
先端が丸くなったやすりみたいなもので、
削りながら形をつくっていくんです。
先端にもいろんな形があって、
それを使い分けて質感を表現しています。
──
これ、学校で習っていたら
図工もたのしかっただろうなあ。
お父さんも、何か作るんですか。
コンノ
父親はDIYが好きだったんです。
うちの両親、ぼくがやりたいと思ったことは
のびのびとやらせてくれたんですよね。
勉強をやりなさい、とか強制されたこともなくて。
──
強制をすることはないけれど、
手助けはしてくれるんですよね。
コンノ
ぼくがやりたそうなことがあったら、
いろいろ買って後押しをしてくれましたね。
いろんな色の折り紙のセットとか、
木の端材の詰め合わせとか。
──
コンノさんも今年、お父さんになったばかりですが、
そういう父親になりたいですか。
コンノ
なりたいですね。
可能性は親があげるけれど、
自分が探していくようになってくれたらなあ。
──
木彫りを継がせたいわけではなく。
コンノ
なんでもいいんですよ。
でも、サポートはしてあげたいですね。
ぼくも、このプロペラ飛行機の羽根を作ったら、
「後ろが狭くならないと飛ばないよ」って言われて、
そこをやすって飛ぶような形にしたんです。
ぼくも、娘が何かを作りたいとなったら
フォローはしてあげたいですね。
──
うん、コンノさんのお話を聞いていると、
自分の子育てを見直さないといけない‥‥。
コンノ
いろんな家庭がありますから(笑)。
──
折り紙を使い過ぎて、もったいないとか
言わない方がいいなあって。
コンノ
ぼく、怒られた記憶がないんですよ。
この間、イベントに行ったときに、
遊びたくてしょうがなくなっちゃった子がいて、
親に怒られていたのを見たんです。
「ここでは静かにしてなさい!」って。
ぼくが子どものときにはどうしてたのかなって、
正しい注意の仕方がわからなくて。
母に聞いてみたら「遊べるところに連れて行く」って。
本当に、ぼくのやりたいことを
なんでもやらせてくれていたんですよね。
──
子どもの興味を満たすことを優先していたんですね。
コンノ
ぼく、家族と行ったディズニーランドでも、
アトラクションに乗っていなくて、
岩のモニュメントに登ったり、
アリさんを見て遊んでいたらしいんですよ。
──
「せっかく来たのに」とは
言わないんですね、お母さん。
コンノ
それがなかったんですよね。
そういう育て方だったから、
今ものびのびと好きなことを
やれているんだろうなあって思います。

(つづきます)

2023-12-27-WED

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  • 「本物か、木物か?」
    だまされたくて、何度も見ちゃう絵本だよ。
                 ——糸井重里

    キボリノコンノさんの最新のクイズ絵本、
    『どっち?』(講談社)が
    発売からまもなく大人気です。
    おいしそうな食べものと
    木でできた「偽物」はどっち?
    フランスパンやチーズ、コーヒー、
    カヌレにマカロン、お弁当も!?
    ひとりでも、親子でも、ともだちとでも、
    本物はどっち? と交流もたのしい絵本です。
    (講談社の『どっち?』特設サイトはこちら
    Amazonの販売ページはこちら。)

    渋谷PARCO8階、ほぼ日曜日では
    『どっち?』の出版を記念して、
    年明け1月26日(金)~3月10日(日)に
    クイズ形式の展覧会、
    「どっち?展」を開催します!
    詳細は「ほぼ日曜日」のページでおしらせします。