「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。
最初のゲスト唐池恒二さんは、
現在はJR九州の代表取締役会長で、
社長時代には、
走行開始から7年経った今も人気の高い
クルーズトレイン『ななつ星』を考案して
実際に成功させた方です。
大きな組織で働いてきた唐池さんが
なにを考え、どんなふうに仕事をしてきたのか。
どうやって「世界一の豪華な列車」を実現させたのか。
働くうえで必要だと考えているのは?
若い人に望むものは?
後半にいくにつれてどんどん熱を増し、
質疑応答も熱く繰り広げられたトークを
全8回、「ほぼ日曜日」からお届けします。
イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)
第6回
質疑応答①
- 糸井
- それでは、質問のある方はぜひお願いします。
はい、真ん中の黒いフードの方。
- 質問者
- 今日はありがとうございました。
非常に貴重なお話でした。 - 私は今ちょっと就職というか、
転職の部類に入るのですが、
「あれもしたい、これもしたい」
みたいなことで悩んでいまして。 - 今日は「本気」というキーワードが
非常に強く印象に残りました。
その中で、
自分自身が正直であるとか、
本気かどうかを確かめる術(すべ)
みたいなところがあれば、
お話しいただければと思うのですが。
- 糸井
- 自分が本気かどうかを確かめる術、ってすごいね。
これは、いい質問ですね。
- 唐池
- これは、考えるだけではわからんかもしれませんね。
自分の本気っていうのはわからないんですよ。
自分が何を得意なのかというのも
自分ではなかなかわからない。 - 禅の言葉で「冷暖自知」という言葉があるんですよ。
それはどういうことかというと、
目の前のコップに入っている水は、
見ただけでは、冷たいか暖かいかわからないわけです。
わからないときはどうするか。
それを飲んでみる、あるいは指を入れてみる。
要するに、
自ら行動しなくちゃわからないっちゅうことです。 - 禅というのは、教えによれば、
お経を読むだけじゃなしに、
修行という行動をしないと悟りが開かないそうです。
自分の本気が何なのか。
自分の得意技は何なのか。
やっぱりいくつかやってみないと
わからんと思うんですよね。
- 糸井
- ああ、なるほど。
たしかに、やってみるというのは
いちばんわかりやすい方法だと思いますね。
じゃあ、僕のやり方のひとつを教えますね。
お金で一回考えるんですよ。
そのために100万円捨ててもいいんだったら、
それは相当本気だと思うんです、若い人にとって。
でも、うーん、2万円までかなっていうのって、
どう考えても本気じゃないですよね。 - 「俺とおまえの友情は」というところでもそうで。
おまえどころか自分が困ってでも
100万円用意するっていうのは、本気ですよね。 - だから、一回お金にしてみたらどうだろう、
っていうのは、案外いい方法だと思いますね。
- 質問者
- ありがとうございました。
- 糸井
- 次の方。
- 質問者
- お話をありがとうございました。
私自身は新卒入社してもう9年ぐらいなので、
お若いみなさんとは少し違うかもしれないですが、
今日のお話で気になったのが、
「本気で語ったものに対してみんなが集まってくる」
というところでした。
事業なのでどうしても失敗することはありますね。
その失敗したタイミングで
人が会社を離れていったりすることは多いと思います。
それがあっても、
もう一回集まって新しくがんばっていける、
お互いに正直であり続けられる、
というのはどういった組織だと思いますか?
- 唐池
- うーん、難しい。
- 糸井
- おたくの会社は大きすぎて(笑)。
- 唐池
- いえいえ。うちは小さな組織ですよ。
- 糸井
- また(笑)。
でも、これもいい質問ですね。
やっぱり今日は、みんな本気だからね。 - さあ、唐池さんの答えを聞いてみたいよね。
つまり、事業をやるチームがあって、
失敗して離れざるを得なくて離れたんだけど、
また集まれることがありうるとしたら、
何を共通に持ってるんだろうってことですよね。
面白いね、それ。小説で読みたいね。
- 唐池
- 難しいですね、これは。
- 糸井
- 見たことありますかね、そういうの。
- 唐池
- いやあ、あまり身近にそんな事例はないですね。
- 糸井
- そのくらいの。
- 唐池
- もうちょっとわかりやすく
おっしゃっていただけますかね。
私の理解力がちょっと不足している。
- 質問者
- お互いに正直に意見を言い合いながら
切磋琢磨して進めるときには
やっぱり根底には、
夢を超えた信頼があるのかなと思っているんですね。
そういった信頼があるからこそ
強い組織に結果的になるのかなと思っているのですが、
じゃあ、仮に結果がよくなかったとしても、
正直でいられるくらいの信頼というのは、
どうやったら育つのか
っていうあたりをお伺いしたいです。
- 唐池
- ちょっと趣旨とはズレるんですけどね、
僕は常日頃、友達には、
「友達同士で起業をするな」と言っているんですよ。
仲良しどうしで会社を起こすなって。 - 最初、苦労してるときはね、
みんな助け合いながらやるんですよ。
ところがちょっと利益が出たり、
その後赤字になったりすると、
その分け方でもめるんです。
友達で仕事をやるとね、
ビジネスライクに交渉できなくなるんですよ。
だからそもそも信頼で集まったと
思ってるような組織は、
ちょっと浮き草のようなところを感じます。
- 糸井
- ‥‥(質問者に)面白いね?
- 唐池
- 僕の会社は
信頼で集まった組織じゃなしに
もともとある組織だから。
嫌だったら辞めて、
次に集まるという経験はないからね。
勝手なことを言ってるんですけど。 - 少なくとも友達には、
友達どうしでは一緒に会社をつくるなと。
もしどうしてもつくるなら、
きちっと契約をしてね、
お互いの配分も決めて、責任も決めて、契約しないと。
友達というものほどね、
なんちゅうか、壊れやすいものないですよ。
どうでしょう、糸井さん。
- 糸井
- 最高ですね、今の答えは。
僕は、やってみて、壊れれば壊れるし、
壊れたあとにまた集まるとしたら、
それは壊れていくプロセスにも
何か面白いことがあったから集まるんだろうな、
っていうふうに考えていました。 - つまり、なるほうになるんじゃないでしょうか、
っていうふうに考えていたんですけど。
唐池さんの答えのほうが面白かった。
いや、勉強になりました(笑)。 - 面白いです、今日は、質問が。
なんかみんなね、顔が真剣すぎるので、
どうなることかと思ったけど。
やっぱりちゃんと聞いててもらってる感が
すごくありますね。
(つづきます)
2020-04-18-SAT