「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。
最終回のゲスト中竹竜二さんは、
早稲田大学ラグビー蹴球部監督を経て、
ラグビーU20日本代表ヘッドコーチを
3期にわたって務めたスペシャリスト。
また、ラグビーだけでなく、
企業のリーダー育成トレーニングを行う会社や
コーチの学びの場を促進する団体を設立するなど、
ジャンルを超えて人を導いてこられた方です。
そんな中竹さんが話してくださったのは、
「行動」から「考え方」、「ものの見方」まで、
今すぐ挑戦できそうなことの数々。
そしてそれは、
これから就活をする人にも、
何十年も働いている人にも、
届くようなものばかりです。
出席者全員が体験した空気の変化や、
昨年のラグビーワールドカップで日本が強かった理由など、
糸井も何度も感心したお話を
全8回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。
第7回
質疑応答①
- 糸井
- 結構たっぷりいい話を聞いたでしょ?
じゃあ、質問を受けつけましょうか。
- 質問者
- 小学校の教員をしています。
教員を始めて半年、
僕が今働いている職場は
かなり心理的安全性が低いなと思っています。
僕はそこまで人の評価を気にするほうではないのですが、
一緒に働いている先生たちが、
すごく周りを見ながら働いてるという現状に、
すごく違和感を抱いています。
僕みたいな新人が、
その組織の心理的安全性を高めるために
実際にできることはありますか。
- 中竹
- 自分が見本を見せる、というのが一番だと思います。
人に意見したり命令したりするのって難しいですし、
ご本人が自分らしくやっていることを、
やり続けることだと思いますね。 - あと、そういうことって、
黙ってやると意外に広がらない。
日本だと不言実行って美徳とされてるじゃないですか。
でもこれは組織論で言うと、もったいないです。
良いことをやるなら、言いましょう。
言い方はちょっと難しいですが、
「僕、そうしますね」ってやったほうが絶対いい。
- 糸井
- 先生になって半年って、難しい時期ですよね。
これは良くないぞと思えても、なかなか言えない。
針のむしろだろうなって思います。
- 質問者
- そうですね(笑)。
今日うかがったような良い組織は理想的ですが、
子どもたちが育っていく環境がこういう状況で‥‥。
これから日本も変わっていくのかな、
でもなんかこのままの気もするな、
と、半年経って思っています。
- 糸井
- 気づいた人が行動で見せていくしかないですよね。
僕はおじいさんを説得するから、
君は若い人を説得したまえ(笑)。
- 中竹
- 役割分担ですね!
- 糸井
- (質問者に)ご苦労さんです、先生。
それでは、次の質問を。
- 質問者
- どういうことをしていけば
心理的安全性が保てるグループが作れるのかな
という話が聞きたいです。 - 実は今日、入口で名前の確認をしたときに、
僕はクボタっていうんですけど、
「コブタ」になっていたんですよ(笑)、
紙に書いてある名前が。
打ち間違いだと思うんですけど。
それを「いやあ、面白いですね」って言ったんですけど、
後で、ちょっとばかにした感じもあって
失礼だったかなと思ったんです。
そこで本当に言いたかったことは、
「めっちゃ面白いあだ名つけてくれたし、
名前と顔も覚えてもらえるし、最高じゃないですか!」
ってことだったんですけど。 - そういうことの線引きを知りたいです。
やり過ぎたら、ばかにし過ぎて
マウント取ってる感じになってしまうのかな
と思っちゃうんですけど。
その線引きとか、心理的安全性が気になったので、
考えを教えて頂きたいです。
- 糸井
- ああ、いい質問ですね。
- 中竹
- どこまで言っていいかわからないですもんね。
あなたが質問されたら、どう答えますか?
- 質問者
- 相手がそれをすごく嫌に感じちゃう人だったら
やめたほうがいいなと思うし、
笑ってくれるんだったら
どこまでも言っていいかなというふうに思っていて。
でも自分は親とか姉とかに
「人のことをばかにしてる」って言われていて。
「お前は偉そうぶるな」みたいな、
そういうフシはあるなと自覚しています。
そこが難しい。
自分はばかにしてるつもりはなくて、
その場を面白くしたいなという気しかないんですけど。
- 中竹
- そうなんですよね、
やってみないとわからないんですよ。
あ、この人、ここまで言ってもいけるなと思えば、
どんどん言えばいいです。
失敗したなと思ったら
「ごめんね。ちょっと失礼だったよね」と謝ればいい。
誤解されるなと思ったら、
「昔からばかにしたような態度を取ると言われていて。
もし失礼だったらごめんね。
けど、俺、そういうヤツだから」って。
これこそオーセンティックですよ。
「面白くしようと思ってるんだけど。
面白くないならごめんね」
って一言付け加えればもっといいです。
- 糸井
- たぶんそれは中竹さんがやってきたんだろうね。
案外失礼なことも言うタイプの人だと思うし(笑)。
- 中竹
- そうですね(笑)。やってきました。
- 糸井
- 僕が今、発明のように思いついたのはね、
「何秒、僕にもらえるんだろう」
って発想をするんですよ。 - つまり、例えば「コブタです」って言って、
それでおしまいになれば、言ってOKじゃないですか。
つまり「3秒ぐらいだったらもらえる」は、わかるわけ。
そこで「つい出過ぎた真似を」とかって喋ってると、
もう相手にとってはうるさいんですよ。
つまり10秒はくれないんですよね。
友達だったら結構20秒、30秒くれるじゃないですか。
それで長くなると「うるさいな!」って言って
やめさせてくれるじゃない。
だから、秒数で考えることを一回やってみたらどうかな。
- 中竹
- いいですね、具体的に秒数で。
- 糸井
- つまんない冗談をいつまでも言ってる人って、
やっぱり「つまんないけど」ってなるじゃない?
- 質問者
- それですね、自分。
- 糸井
- 僕もね、
昔から「人を小ばかにしているようだ」というのは、
ものすごく言われてたんですよ。
子どものときから言われてた(笑)。
その答えは、小ばかにしてるんですよ、正直言って。
- 中竹
- ははははは!
それが糸井さんらしさですね。
- 糸井
- それを面白がる人と付き合ってきたので、
秒数をもらってる気がしますね。
それは今日発明したんで、あげる。
- 質問者
- ありがとうございます。いただきました。
(つづきます)
2020-05-18-MON