これからの自分の道のりを思うとき、
直面して困ることが、おそらくあるだろう。
いま話を聞いておきたい人は誰?
伊藤まさこさんの頭に浮かんだのは糸井重里でした。
大切な人を亡くしたとき、どうする?
からだが弱ってきたら、どうする?
なにをだいじにして仕事していく?
この連載では、伊藤さんが糸井に、
訊きたいことを好きなだけ訊いていきます。
読み手である私たちは、ここで話されたことが、
自分ごとになってスッと伝わってくるときに、
取り入れればいい。
そんな意味を入れたタイトルにしました。
長い連載になりそうです。
どうぞゆっくりおたのしみください。
おしゃべりの場所
ヨシカミ(浅草)
写真
平野太呂
伊藤まさこ(いとうまさこ)
スタイリスト。
おもな著作に
『おいしいってなんだろ?』(幻冬舎)、
『本日晴天 お片づけ』(筑摩書房)
『フルーツパトロール』(マガジンハウス)など。
「ほぼ日」でネットのお店
weeksdaysを開店中。
エッセイ、買物、対談など、
毎日おどろくような更新でたのしさ満載。
糸井重里(いといしげさと)
コピーライター。
WEBサイトほぼ日刊イトイ新聞主宰。
株式会社ほぼ日の社長。
おもなコピー作品に
「おいしい生活。」(西武百貨店)
「くうねるあそぶ。」(日産)など。
ゲーム作品「MOTHER」の生みの親。
- 伊藤
- あ、プリンが来た。
なんてかわいい。
- 糸井
- かわいいな。
俺も食べればよかったな。
次、来たときに。
- 伊藤
- はあぁ、これから糸井さんに
「御札」をたくさんもらえるのが
すっごくたのしみになってきました。
きっと、ご本人が知らないうちに
出す御札があるかもしれないですね。
受け取る人が勝手に
「あ、これは御札だ」と思ってしまうような。
- 糸井
- それで思い出したんだけどね。
ほぼ日にいただいたメールで、
学校で掃除してたら、
先生に「君はお掃除が上手だね」って
言われたことがある、
というものがありました。
「えらいね」「立派だね」というんじゃなくてね。
先生のその言い方が、
すごく励みになりました、と。
- 伊藤
- ああ。
- 糸井
- 先生はきっとほんとうに
「掃除が上手だ」と思ったのでしょう。
言われたほうも、
それがちゃんと聞こえていた。
- 伊藤
- 私はちいさいときに絵を習ってて、
その先生のことがすごく好きでした。
いまのお話とは逆の言い方なんですけど、
「上手に絵を描くね」じゃなくて
その先生は「いい絵、描くね」とだけ言うんです。
それが私にとってはすごくよかったです。
- 糸井
- 絵の教室で「上手に」というと、
そのまた上の技術がある、というふうにも
思ってしまうものね。
- 伊藤
- たとえば「幸せな結婚」という場合も、
団らんのような型を思い描いたりしますよね。
「上手な絵」も、なにかひとつの理想があって、
そこに向かって言ってるような気がする。
そういうのって、すごく不思議だと思います。
- 糸井
- ちいさい頃からそう思ってたの?
- 伊藤
- へんに褒められたりすると、
「ん?」と怪しんでました。
なにかもっと言いようがないのかな、と。
- 糸井
- (笑)そうだよね。
「幸せ」という言葉は特にそうだけど、
そこからはなにも進まないんですよ。
よく幼稚園の子たちが描く絵がありますよね、
チューリップが咲いていて、
お家があって、犬がいて。
幸せはおそらく、あれ以上は出ない。
- 伊藤
- それよりもさっき糸井さんがおっしゃった
退屈しないように、のほうがすごいと思います。
幸福になれ、と言われるよりも、
退屈しないようにしたら? と言われるほうが
私にはよくわかります。
- 糸井
- でも、まさこさんはぜんぜん退屈してないでしょう?
ほぼ日にもそういうスタッフが多くて、
それはいいことだと思う。
心が動いてるってことだもん。
- 伊藤
- そうですねぇ。
- 糸井
- 心が動くというのは、
けっこう重要なことでさ。
つまり、心って止まるからね。
- 伊藤
- どういうときに止まるんですか?
- 糸井
- どんよりしてるときかな。
どんよりしてるときは、
心が止まってるんだと思うよ。
- 伊藤
- そうかぁ。
- 糸井
- なんにも感じないようにしたい、
ということも、たまにはあると思う。
- 伊藤
- 皮膚が敏感になってて
さわってほしくない、ということはあります。
それが、心が動いてないときなのかも。
- 糸井
- 心が動いてるか、ってのがだいじだよ。
まさこさんがすごいと思うのは、
これだけ大人で、
やりたい仕事をやりたいだけやって、
みんなが憧れてるのに、ほら、
赤くなるじゃないですか。
- 伊藤
- いま炭水化物を食べたからですよ(笑)。
- 糸井
- 俺もうね、それが大好き。
みんなもまさこさんのそこが、
大好きだと思う。
男でも女でも。
- 伊藤
- そうなの? 赤くなったのはバレてる?
- 糸井
- それはやっぱり、
心が動いてるということだと思います。
- 伊藤
- 赤くなることが?
- 糸井
- うん。
心は本部だからさ。
心が動けば、血のまわりがよくなって、赤くなる。
すばらしいことです。
- 伊藤
- でも私のは、ただの体質ですよ。
- 糸井
- いいですよ、体質でも。
好かれる体質です。
糸井の体験と思い込んで編集していた部分があり、
公開後に修正いたしました。
(明日につづきます)
2019-08-13-TUE