前回の連載のなかで、
「ご実家などに眠っている
ファンシーなグッズはありませんか?」
と、呼びかけたところ、
メールやツイッターで
たくさんの投稿をいただきました。
どうもありがとうございます!
なんとメロさん、ほぼ全ての方の
投稿写真を鑑定してくださったんです。
ぱっと見ただけで、「あ、これはですね~」と
あらゆる方向に話が進んだ鑑定の様子を、
そのまま、こってりとお伝えします。
レアで貴重な「ファンシー絵みやげ」の数々、
その当時の時事ネタもおたのしみください。
担当はほぼ日のフジタです。
- メロ
- どんどんいきましょう。
- ーー
- はい、お願いします。
私が子どもの頃から今でも現役で使っている
ファンシー絵みやげと思われる
ミニ裁縫セットとキーフォルダーです。
(智美)
- メロ
- 送ってくださった画像、
背景が畳なのでサイズ感がわかりますが、
かなり小さい裁縫セットですね。
こういうもの、当時はいっぱい売られていました。
ファンシー絵みやげは
実用的なものに印刷して売る、というのが基本なので。
(※写真2枚目)
- ーー
- まさに実用的なものですね。
そして、スプーンの写真も2枚あります。
(※写真3枚目)
(※写真4枚目)
- メロ
- これは「箱根」ですね‥‥。
スプーンの裏のシールを見てください。
箱根は寄木細工で有名で、
他の地域で売る木工民芸品を作っていたりもします。
個人的には、本拠地なんだから
「箱根」という焼印を押してくれてもいいのに、
と思います。
というか、シールというのは逆にめずらしい。
逆にこっちのほうがレアかもしれないです。
箱根なのにシール!
- ーー
- 逆にレア。ありがとうございます。
あ、次は、ファンシー絵みやげ界で多いという
キツネですね。
来年年女のアラフィフです。
おそらく私たち世代の頃が一番、
タレントショップだのファンシー土産だのが
全盛期だったのではないかしら‥‥
と思っています。
キツネは言わずと知れた北海道土産です。
中学校の修学旅行で北海道に行った時、
自宅用と叔母へ買ってきたものです。木の葉型の温度計は、確か下に地名が
ぶら下がっていたのですが、
取れたか取ったか定かではありません。
洞爺湖か、猪苗代湖か、
湖の名前が付いてた気がします。
(モリヤン)
- メロ
- こういうものとか木彫りのクマは、
アイヌの木彫りとされているんですけど、
アイヌは伝統的には動物や人は彫らなかったので、
わりと近年に作られたものなんですね。
技術的には伝統技術ですけど、
もともとこういうものを作っていたわけではない。
もっとリアルに彫れるのに、
ファンシー絵みやげの影響を受けて、
ちょこんと座って2頭身、というふうに
あえてファンシーにしていたりするわけですよ。
初期のファンシー絵みやげは
こういうものと互いに影響を受けあった上に
成り立っている、といえます。
- ーー
- そういう意味で、すごく貴重なものですね。
先日第一弾のメールを送った後、
押入れの中に沢山眠ってるハズ!と
正月休み中探しました‥‥が、全く出てこない。
辛うじて見つかったのは小学生の時、
つくば万博の臨時列車が来た際に買った、
コスモ星丸のクリップと、
姉が高校の時の京都修学旅行で買って来た、
未だ現役のネーム入り湯呑み茶碗。
案外こういう陶器って
丈夫でなかなか割れないんですよね(笑)。
(モリヤン)
- メロ
- これもモリヤンさん。
「辛うじてみつかった」とありますね。
これは筑波のつくば万博、科学博で
公募で募集したキャラクターです。
つまり企業がイラストレーターを雇って作ったものじゃなくて、
公募で、たしか中学生だったかな――が描いた絵を
先日亡くなった和田誠さんが審査委員長で、
仕上げたものです。
- ーー
- え、なんと、和田誠さん!
すごいです。
そう言われると和田さんのタッチですね、たしかに。
- メロ
- 「コスモ星丸」という名前なんですけど、
85年に大量に商品がつくられたんですよ。
だからファンシー絵みやげと
同じ仕様のものがたくさんあります。
おみやげグッズを作れる会社に頼んで、
いっぱい作ったので。
(モリヤン)
- メロ
- そして湯のみ。
これはファンシー絵みやげです。
ここで重要なのが、
実はここに名前が彫ってあるんですね。
(モリヤン)
- ーー
- ああ、なるほど。
- メロ
- 送られてきたお写真に加工がしてあるので、
たぶん名前を隠していらっしゃるんだと思います。
当時、修学旅行先のみやげ店で、
買ったその場で名前を彫ってくれるサービスがありました。
よく見ると街灯の下に影みたいなものがあって、
黒い縁どりもない線でベタッと塗られてますよね。
これは字を彫るためのスペースなんです。
普通はただ地面を描くというのは
意味がわからないですけど、
これは「彫る場所」としてデザインされているんです。
他には、地名が書かれていない汎用的な商品を出荷して、
現地でここに「地名」を彫るパターンもあります。
当時のそういう文化がわかる、貴重なものです。
32年程前に、姉が修学旅行のお土産にくれた
キーホルダーです。
(hoppu)
- メロ
- 「ドキドキ白虎隊」!
こちらもまさに「ザ・ファンシー絵みやげ」と言えましょう。
32年前というと、つまり1988年ごろに
お姉さんが会津若松に修学旅行に行かれたんですね。
これまた文字に注目なんですが、
イラストに添えられたセリフが
そのまま贈り主からのメッセージになる商品ですね。
「ユー・アー・マイ・オンリー・フレンド」。
お姉さんから「友だち」と言われてます。
- ーー
- あ、そうですね(笑)。
- メロ
- そして、これ2人しかいないですけど、
白虎隊は本当はもっとたくさん人数がいるんです。
ここから読み取れるのは、たぶん2人は
もともと白虎隊の絵じゃなかったと思います。
最初はふつうの男の子2人か、あるいは男女の絵だったのを、
無理やり白虎隊にした絵という感じがします。
というのも、左右のハチマキの位置が
おかしいんですよ。
おでこがずれているし、
フワッとした髪の上にハチマキがあって、
ちょっと違和感がありますよね。
たぶん元の絵があって、それを
「会津だから白虎隊風にしましょう」となって、
描いたのじゃないかな、と。
推測でしかありませんが、そういう時代だったので。
- ーー
- これもまた、おおらかな時代。
- メロ
- 背景の、キラッとした感じもいいですね。
こういう砂嵐みたいな背景は、
最近あんまりないんですよ。
だからすごくいいです。
しかも、今まさに鍵を付けて使っているんですね。
この輪っかのパーツって普通はもっと太くて、
鍵をつけるのも大変なので、
付け替えやすいものに変えたのかもしれませんね。
- ーー
- パーツまで見てわかる。さすがです。
もういつからそこにあるかも分からない
木製のカレンダーです。
実家のトイレのドアに掛けられて
何十年も現役です。
数字部分を外すと、そこだけ色が違っているほど。
数字は一番早起きの母が変えているらしく
日付は常に正確です。
おかげで毎日、今日は何日だっけと迷わずにすみます。
姉妹に一つずつ、お揃いで買った
記憶があるのですが
もう一個はどこへ行ったやら。
(おちゅん)
- メロ
- 素晴らしい。
一緒に行って買ったのかな。
- ーー
- 「KUMAMOTO」(熊本)と書いています。
- メロ
- この地名部分は、
薄いコルクにいっぱい印刷してあるものですね。
裏に最初から糊が付いているコルクで、
それを貼り付けています。木工品に多い付け方です。
これ、おもしろいんですよ。
数字の部分、右3枚、左3枚の、
計6枚のみで全日付のパターンが
できるように作られています。
パッと見、足りないようで、計算すると、
実はなんとかなるようになっているんですね。
- ーー
- お母さまが毎朝替えている、
というのもいいですね。
家族の歴史を感じさせられます。
小学生の頃、奈良県天理市に行ったとき
父へのお土産として買ったものです。灰皿です。
(ナイスミドル)
- メロ
- 小学生が好きそうな絵を描いて、
父親用に買わせるタイプのおみやげですね。
「鹿のフンフンフン踊りだよ」と書いてあります。
「FUN(ファン)」にかけているのかもしれない。
なぜ鹿のフンか。
奈良は「鹿のふん」というお菓子が有名ですが、
それだけではなく、昔、吉永小百合さんの
『奈良の春日野』という歌がありました。
「フンフンフーン、黒豆よ」という、
鹿のふんのことを歌った、
いわゆるコミックソングみたいな歌なんです。
当時バラエティー番組で、
明石家さんまさんが、
吉永小百合さんを好きなタモリさんをからかいつつ、
その歌をよく歌っていたんです。
その『奈良の春日野』がヒットしたのを受けて、
「フンフンフン」を商品に取り入れている
パターンが散見されるんです。
勝手にさんまさんの似顔絵を
描いちゃっているものも実は見つけています。
関係ないかもしれませんが、
さんまさんも奈良育ちですから。
- ーー
- なんと、詳しい。
この灰皿、色もきれいですね。
- メロ
- これはパール加工といって、
虹色に光る、まるで貝殻の裏側です。
今でもティーカップなどに使われています。
使うと、ド派手になるから、
当時やたらと使われていたんです。
さあ、どんどんいきましょう。
実家にて発見しました。
男子と女子とてるてる坊主が
ぶら下がっていました。
驚いたのは裏面に「青森」と書いてあるところです。
青森には一度も行ったことがありません。
いったい何処で「青森みやげ」を
買ってしまったんでしょうか。
(まっちー)
- メロ
- 「ラブ・アンブレラ」。
相合傘でも、右側にはカップルがいて、
左側はてるてる坊主。
- ーー
- そうですね。
重さのバランスがとれています。
(※写真2枚目)
- メロ
- 裏側は青森とリンゴ、
「メモリー・オブ・青森」とあります。
裏側の平面にちょっと模様があるんですけど、
このてるてる坊主の裏は、しわかな。
メッセージにある
「青森には1度も行ったことがありません」
というのは怖い話ですね。
もちろんいろんなパターンがありますけど、
どこかで買ってしまったか、
行った人にもらったんじゃないでしょうか。
今だとお菓子とか消えものをあげますけど、
当時は消えものより、こういうキーホルダーを
あげるのが普通でしたから、
行った人にもらった可能性も高いと思います。
おそらく人にもらったものだからこそ
大事に取っておいたのかもしれません。
これはファンシー絵みやげより前の時代だと思いますね。
平面じゃないし、絵をプリントしているわけじゃなくて、
パーツを作ってつるしているので。
- ーー
- なるほど。
- メロ
- ただこの相合傘というモチーフは、
その後もずっと続いていくので、
たぶんその後のファンシー絵みやげにつながる
重要なアイテムですね。
今でこそ相合傘なんてあんまりないですけど、
昔は落書きといえば相合傘、
相合傘を見つければ「ヒューヒュー」
みたいな時代もありました。
あと、このシールに、地名だけでなく
特産品のりんごが書かれているのもいいですね。
めずらしいです。
青森の、夫の実家にありました。
ドアのすりガラスを隠す役目にしていたようです。
(マオピー)
- メロ
- 「青森の夫の実家にありました」とあります。
すごく物持ちがいいですね。
トイレのすりガラスって、
はっきり中は見えないけど、
外の光も入ってくるし、シルエットが見えちゃうし、
こうやって隠しておくご家庭も多いですね。
- ーー
- あれ、トイレにすりガラスってありました?
- メロ
- ありましたよ。
昔はすりガラスごしにライトが
点いているか点いていないかで
入っているかがわかったんです。
今も、ごく小さいすりガラスとかありますが、
昔は大きかった。
- メロ
- で、あれ、なにこれ。
「京都‥‥いらっしゃいまほ」。
「まほ」?
- ーー
- 「まほ」?
- メロ
- 方言でしょうか。こんな大胆な
間違いはしないと思うんですが。
- ーー
- 念のため、検索してみましょうか。
‥‥‥‥あ、明石家さんまさんのギャグですね。
『オレたちひょうきん族』のころだそうです。
- メロ
- ええ、観ていたけど、全然知らなかったです。
じゃあこれ、さんまさんのギャグを使っているんですか。
うわあ、知らなかったなあ。
こういうところが、
ファンシー絵みやげの怖いところです。
自分が当時の文化まで含めてすごく調べているのも、
結局知識がないと、「ミスかな」と思っちゃう。
当時の風俗を調べることがいかに重要か、
と、こういうときに思い知らされます。
- ーー
- そうですね。
- メロ
- 当時モータースポーツのブームがあって、
こういうスポーツバイクが流行りました。
さっきのウォークマンを聞いている桃太郎、
と同じく、時代を超えて新選組がバイクに乗っちゃう。
そして、
「龍馬には俺が勝つさ」
「さあ今日も龍馬に勝つ」。
龍馬をめちゃめちゃライバル視!
2人とも龍馬に勝とうとしています。
- ーー
- 龍馬をそんなに意識して。
- メロ
- 龍馬は高知が本拠地ですけど、
京都にもいたので、京都にも
龍馬のファンシー絵みやげがあるんですよ。
その対立構造で、龍馬vs.新選組という描かれ方が多いです。
これは新選組風にギザギザを描いていて、
凝っていますね。
- ーー
- スポーツバイクの描き方もリアルです。
- メロ
- 子どもは乗りものが好きなので、
意外と細かく描かれているんですね。
- ーー
- きました。また新選組。
実家に帰ってみたら、ファンシー絵みやげの
湯飲み茶碗があったので、写真を送ります。
お正月、ファンシー絵みやげの話題で盛り上がりました!
あった、あった!と懐かしがってました。
(智美)
- メロ
- 「お正月、ファンシー絵みやげの話題で
盛り上がりました」
いいですね、そのシーン。
これ、髪型が今までのものと違いますけど、新選組ですね。
そして、文字は方言シリーズ。
方言を並べたのれんとか湯呑みは多いんですよ。
おそらくファンシー絵みやげより
ちょっと新しい時代に流行りましたし、
デザインの違うものが現役でも売られてます。
リアルな絵が描いてあるパターンもあるんですけど、
こんなふうに、子ども向けに
かわいい絵が描いてあるパターンもあります。
お土産でいただいたのか、
自分で買ったのか記憶が曖昧ですが、
実家にずっとありました。鍵つき貯金箱。
中に入っていたのは星の砂でした。
(鍵も残っててよかった‥‥)
(てるま)
- メロ
- これすごい。鳳凰が上に乗っていて、金閣寺が描かれています。
そしてやっぱりスポーツバイクに乗っている。
絵が違うので、違うメーカーでしょうね。
イヌが「わお、かっこいいなあ。サインして」
と言っていますね。
(てるま)
- ーー
- かわいい。
- メロ
- 「俺のマシンはすごいんだぞ」という。
日本語ローマ字なのに、突然英語が出てくる。
あれ、「マシン」って最後は
「e」が必要じゃなかったですか?
(てるま)
- ーー
- 必要ですね。
正しくは、MACHINEです。
- メロ
- 普通にローマ字読みだと思って読んでいったら、
「俺のマチンはすごいんだぞ」と。
ミスですね、これ。
(てるま)
- ーー
- ‥‥。
- メロ
- ちなみに「R」と文字が入っているから、
これは龍馬です。
龍馬vs.新選組という、これまた対立構造ですね。
髪型も、龍馬は浪人なので月代がなく、
髪を結わえています。
そして注目すべきは足元です。
草履じゃないんですよ。
龍馬といえばブーツ。ブーツにも見えないけど、
まあ草履じゃない、というところで
龍馬だということをアピールしてます。
いかに龍馬に見えるか、と苦心して作っているんです。
そういうところも深く考察するとたのしめます。
(つづきます)
2020-04-01-WED