前回の連載のなかで、
「ご実家などに眠っている
ファンシーなグッズはありませんか?」
と、呼びかけたところ、
メールやツイッターで
たくさんの投稿をいただきました。
どうもありがとうございます!
なんとメロさん、ほぼ全ての方の
投稿写真を鑑定してくださったんです。
ぱっと見ただけで、「あ、これはですね~」と
あらゆる方向に話が進んだ鑑定の様子を、
そのまま、こってりとお伝えします。
レアで貴重な「ファンシー絵みやげ」の数々、
その当時の時事ネタもおたのしみください。
担当はほぼ日のフジタです。
- ーー
- みなさんからの投稿を見て、
本当にたくさんの種類のファンシー絵みやげが
あるなあと感じます。
次は、ミントンさんから、
今も現役で使っているという湯呑みです。
祖父母が広島に行ったときのお土産です。
多分20年近くはこれでお茶を飲み続けています。
欠けたりヒビも入ってなく未だに現役です!
(ミントン)
- メロ
- これは宗教ファンシーですね。
- ーー
- 宗教ファンシー?
- メロ
- 神社仏閣、教会などにまつわるファンシーなものを
私が勝手に宗教ファンシーと呼んでます。
宮島といえば厳島神社ですから、
その神社の神主さんと巫女さんを使っているんですね。
宮島には鹿がいますが、さきほどの奈良の鹿以外では、
あまりモチーフにならないんです。
鹿は顔を大きく描くデフォルメや、
直立歩行させる擬人化がしづらい。
ファンシーにしづらいのです。
- ーー
- 鹿はファンシーにしづらい。
- メロ
- はい。なので、宮島といえば、
厳島神社を復興させた平清盛をイラストに使う
ケースが多いんです。
そのため、これはめずらしい。
他の神社を見ても、神主さんと巫女さんを単独で
モチーフに使うことは少ないです。
さらにめずらしいのは、この髪の処理ですね。
- ーー
- はい。髪、これは‥‥。
- メロ
- 髪がチリチリで、あんまり巫女さんっぽくない。
どうしたんでしょうか。
クレヨンみたいなタッチで、
なかなかめずらしくていいですね。
陶磁器のプリントって、階調でのグラデーションを
かけられないので、
微妙なニュアンスを出しづらいんですが、
このイラストはうまく出していると思います。
今も現役で使っている、というのが
何よりいいなと思います。
自分の修学旅行で買った
部屋のドアにかけておくヤツ(正式名称不明)です。
いつの日からか、ずっと外出中のままとなってます。
(ミントン)
- メロ
- やっぱり呼び方がわからないという
問題が出ていますね。
これ、「ドアプレート」と仮に呼びましょうか。
「勉強中」とか「外出中」という、
現在のステータスを表すものです。
- ーー
- 懐かしい。
「立入禁止」とかもありましたね。
- メロ
- 文字は「NIKKO」とあります。
日光で買ったんでしょうけど、
普通は「3猿」のところ2匹しかいないし、
見ざるでも言わざるでも聞かざるでもない、
何もしていない猿ですね。
日光猿軍団寄りのイラスト、という感じでしょうか。
我が家の小さいきつねのぬいぐるみです。
今、59歳の主人が20代のころに
もらったお土産だそうです。
自家用車にずっと乗せていて、
子供たちが生まれた時から大学生となった今も、
車に乗ると「こんこん」と呼んで遊んでいます。
(みき)
- メロ
- これ、かわいいですね。
ただファンシー絵みやげかというと難しくて、
ファンシー絵みやげは平面の絵が基本なので、
これは、ぬいぐるみメーカーが作っている
キャラクターですね。
でも、これも観光地の土産店にも流通していますよ。
当時、車に小さいぬいぐるみをぶら下げたり、
キツネの尻尾みたいな毛のものを掛けたりするのが
流行りました。
UFOキャッチャーが流行った時期は、
ダッシュボードにひたすらUFOキャッチャーの
ぬいぐるみを並べたり。
これが車に乗っている光景は、いいな。
- ーー
- 気になったのは、
「59歳の主人が20代の頃にもらった」
と書いてあって。
20代の男性にこういうかわいいものをあげるような
時代だったわけですね。
- メロ
- そうですね。
みんながかわいいものが好きだった時代。
愛があります。次いきます。
鬼怒川のロゴとみどりの色合いとチープさが、
当時を醸しだしているなぁと(笑)。
万年カレンダーである=実用的
なところが私にとって大事。
したがいまして、令和になっても現役。
でも、月によってはバランスが悪くなり、
傾くのもこの当時のお土産らしさだ、と思うのです。
ひるぜんの壁掛けも、実用的。
いちばん下のフックは、鍵をぶら下げるに重宝。
だけど、バランスを考えてぶら下げないと、
これも傾くのです。
(ぽぽちゃん)
- メロ
- 「月によってはバランスが悪いので傾く」
というのが、なんともいいですね。
鬼怒川温泉のほうは、
ファンシー絵みやげより、少し前のものですね。
メルヘンで牧歌的なカントリー調の木工品。
この頃は手芸ブームで人形を作るのが流行っていました。
こういう文化が、後のファンシー絵みやげにつながるので
重要なんです。
(ぽぽちゃん)
- メロ
- この「ひるぜん高原」のものは
まさにファンシー絵みやげですね。
下は超リアルなウシで、右上は2頭身のかわいいウシ、
という違う世界観が一緒になってて、
めちゃくちゃで、いいなあ(笑)。
左には字が書いてあって、これお面ですかね、
ひるぜん(蒜山)の伝統的な民芸品が描いてあると。
こういう実用的な、状差しと呼ばれるタペストリー、
よく玄関先とか電話台の上とかに掛けて、
ハガキとか領収書とかを分けて入れてましたね。
これは今もこのフォーマットで売っています。
ただ、ファンシー絵みやげのブームが去った今は、
全部がリアルな絵となっているものが多いです。
木製のクリップです。ラッコブームの頃、
下田の水族館で買ったような気がします。
何となく捨てられず、現在も会社の机の上に飾っていたら、
同世代の同僚の机で同じ物を発見してお互いにびっくり。
同じく、何となく捨てられて無かったそうで、
数多のオフィス引っ越し、
席替えを乗り越えて来た強者です。
同僚は既に退社し、並べて撮影できず残念。
(ねむねむ)
- メロ
- 下田はラッコがいましたね。
「現在も会社の机の上に飾って‥‥」
え、同じものを?
社員旅行で買った、とかじゃなくて?
- ーー
- でもラッコブームの頃、と書いていますよ。
昔に買われたのでは。
- メロ
- いやだって、同じものが同僚の机から見つかるって‥‥。
「同僚はすでに退社して、並べて撮影できず残念」。
いますぐ同僚を探してほしいです(笑)。
ファンシー絵みやげって、
当時、何万種類とあって、下田の水族館だけでも、
おそらく100種類とか作っていたわけです。
それが1年で売り切れたりするんです。
たとえ同世代だからって、
たまたま同じ絵の同じクリップを持つ2人が同じ会社にいた、
そんな天文学的な話あるわけないじゃないですか。
ちょっとこれ、疑惑ですよ。
- ーー
- 疑惑。
- メロ
- そうです。
この人がおいくつなのかわからないですけど、
可能性として考えられるのは、
たとえば昔、会社の誰かが買ってきて、
みんなに同じものを配った、ということならわかります。
こういう小さいクリップって、
3つくっついて売っていたりするんですよ。
紙に3つ挟んで。それを分けたとかも考えられます。
そうじゃなく、おふたりが偶然、
それぞれ同じものを買っていた、とすると事件です。
ちょっとこれは追加調査が必要です。
それが事実だとしたら、あり得ないというか、
「うわーっ」となってしまいます。運命の相手ぐらいの。
- ーー
- 運命の相手。
- メロ
- 裏に地名があるかも知りたいですね。
当時のラッコブームはすごくて、
どこの水族館もラッコを展示したくて。
三津シーパラダイスが最初だった気がします。
もう1つは三重県の鳥羽水族館。
鳥羽だけじゃなく伊勢志摩でも売られまくって、
ラッコを展示しているところの周辺では、
やたらとラッコが使われていたんですよ。
あと小樽水族館もラッコです。
同じ絵の流用もあったでしょうから、
同僚は下田じゃなく、
小樽でこれを買ったとかもあり得る。
それも含めて知りたいですね。
- ーー
- 続報を待ちたいと思います。
次、いきましょう。
宝探しのような心持ちでワクワクと探しました。
写真を1枚、添付いたします。左上は、「北きつね」(HOKKAIDO)
右上は『B&B club』と描いてあります。
下は『イラストポエム集 旅するとき 那須高原』
発行(株)風光社/企画 アトリエふうらい房/
イラスト&ポエム 大門多美
(こもも)
- メロ
- こももさん、細かく情報も書いてくださって
ありがとうございます。
左上の北きつねは、純然たる
ファンシー絵みやげじゃないんですけど、
アイヌの木彫りを生かしたおみやげで、
これも大ブームだったんです。
今でもたくさん商品がありますね。
右の「B&Bクラブ」じゃなくて「R&B」で、
「ラビット・アンド・ベア」の略ですね。
おそらくミルクを運んでいるクマバージョンと、
人参を持っているウサギバージョンがあった。
もしくは反対側にウサギがいて、取れたかもしれない。
これは完全にファンシー絵みやげですね。
下の那須高原、これはいわゆる
ファンシーな女子向けのしおりセットですね。
この作者の大門多美先生と私は運命的な出会いをしています。
- ーー
- え! メロさん、お会いしたんですか。
- メロ
- 江の島で保護活動をしていたら、
これが売っていたんです。
確か去年閉店しちゃった江の島のお店でした。
店内で「あるな」と思いながら見ていたら、少し遠くから、
「あ、これ私のお母さんが描いたやつだ」
という声が聞こえてきたんです。
「えっ?」と思って、
その方に話しかけたら、
大門多美先生の娘さんだったんです。
- ーー
- すごい偶然ですね。
- メロ
- もうテンションがあがってしまって、
「私、大門先生の『旅するとき』シリーズを
何個も持っています!」と言ってお伝えして。
さらに、それだけで話が終わらなくて、
その後、偶然が重なって、
最終的には大門先生ご本人とお会いする、
ということがありました。
とりあえず探してみました。で、すぐに見つかったものを。
ウサギのは猪苗代と妙高のスキー場のもの。
左下のはファンシーブームで作ったと思われる
ペンションのオリジナルグッズです。
当時、軽井沢に行った時に皆でお揃いの
Tシャツやタンクトップを買いましたが、
それも確かキツネかウサギだったと思います。
お土産屋さんにもありましたが、
このグッズの専門店もありました。
もー30年以上前ですね
(ダンデライオン)
- メロ
- 妙高赤倉は、新潟と長野の県境ぐらいにありますね。
私は妙高高原の「夢冒険」という
ペンションに泊まりました。
その理由も、のりピーの曲と
同じタイトルだから泊まろうと。
- ーー
- さすがです。
- メロ
- 妙高高原のすぐ北側に
赤倉温泉というのがありまして、
スキーで遊んで温泉に泊まれるエリアですね。
ちなみに赤倉温泉は山形にもありますが、
「妙高」が書いてあれば、これは新潟の赤倉とわかります。
猪苗代スキー場のものも
同じスキーラビットのモチーフですね。
左下のはペンションのオリジナルグッズです。
「ペンションマンボウ」。
プリントした布を切って巾着に縫い付けている。
これは、ロゴも入ってますし、
このペンションでしか売れないものですね。
- ーー
- そうですね。
これも、つまりレアということですね。
- メロ
- レアですね。
その場所でしか売れないわけですから、
この絵はペンションを建てるときに
作ったイラストなんでしょうかね。
ペンションはホテルみたいに
1日に何百人と泊まるわけじゃありませんから。
だから私も、特定の施設とか観光地のもので、
ペンションのものは特に重要視しています。
作られている数が少なかったり、
そこでしか買えなかったり、
売店があっても入れ替わっちゃうので、
今現地に行って見つかることもなかなかないわけです。
レアです。大事にしてほしいです。
妹と実家にお土産のキーホルダーが
たくさんはいった四角いお菓子の缶があったよね、
と盛り上がりました.
帰省中に探したところ、缶はありませんでしたが
写真立てとタオルがありました。
タオルは現役で、洗濯物として干されていました。
(ねね)
- ーー
- 今度は「いけいけ新選組」です。
- メロ
- イケイケギャルが流行った時期ですから。
「缶はありませんでしたが」。
ええっ。捨てられちゃったんですかね、残念。
タオル、かわいいですね。
- ーー
- 少し色あせているところも、現役感があります。
- メロ
- しかもこの新選組、
「誠」って入れちゃえばいいですからね、
新選組は。
- ーー
- 「誠」と入れれば新選組。
- メロ
- こういう新選組のキャラクターの
良いところは、誰でもないことなんですよ。
- ーー
- 「誰でもない」。
つまりモデルが特定できない。
- メロ
- そうです。
大体が個人名は書いてない。
だからご子孫の方々が
「うちのご先祖様を何してくれる」と言っても、
具体的に新選組の誰とも書いてない。
さっきのようにモーターバイクに乗っていても、
「いや、バイク乗ってねえし、勝手に歴史を曲げるな」
と怒られることも少ない。
そういう意味で、こういう子ども向けの商品が
作られやすかったんでしょうね。
(ねね)
- メロ
- 和歌山県、南紀白浜の写真立て。
「ハッピー・ズー」とあります。
南紀白浜で「ハッピー・ズー」なので、
「動物園」というくくりで考えると、
これは南紀白浜の
「アドベンチャーワールド」でしょうね。
フォトスタンドに紙が1枚入っていて、
キツネ、ウサギ、クマがいます。
普通は動物園のアイドルといえば
キリンとかゾウ、ライオンです。
しかも「アドベンチャーワールド」
はパンダが有名です。
つまり、これは、
自然がいっぱいある観光地用のお土産で、
「ハッピー・ズー」と
後から貼り付けているだけな気がします。
そういう、雑さとゆるさがありますね。
- ーー
- そうですね。じわじわくるゆるさです。
そしてこれは、前回の連載でも話にのぼった
「ナキギツネ」でしょうか。
連載を興味深くよみました。
そして!なんと!初代と思われる、
このキーホルダーがありました。忘れていたのですが、
1985年(わたくし、14歳)、
札幌の陸上全国大会で購入したか、もらったか
したもののようです。比べてみると、
尻尾のようすがちがうので、
本物ではない可能性もありますが‥‥。
ぜひ、鑑定をお願いいたします。
(satoko)
- メロ
- 本物、という概念とはちょっと違うんですが、
確かに「ナキギツネ」のキャラクターって、
上に尻尾が立っているんです。
- ーー
- 前回見せていただいたのも、そうでしたね。
- メロ
- だからこれは、それを
真似して描いたものかもしれませんね。
それ以上に重要なのがまず1985(年)、
「ジュニア・ハイスクール・ミーティング」
と書いてあるんですよ。
シールでも何でもなく、プリントしてある。
普通は北海道全域で売れるものには
「北海道」とだけ印刷して、北海道全体に卸します。
しかしこれはあくまで中学校の陸上大会の限定品。
- ーー
- そうですね、かなり限定的なアイテムです。
- メロ
- こういうのはトロフィーとかを作る会社が
キーホルダーも同時に作っていたりしたんですよ。
トロフィーとかメダルも金属加工をするので。 - 「子ども向けの参加賞、何かないかな」
「キーホルダーがいいんじゃない」
「北海道に来た記念になるように、
北海道のキャラをのせよう」
「最近こういうのが流行っていて、
観光地に卸しているから‥‥」
きっと、こういう経緯なのかもしれません。
- ーー
- やりとりが浮かんできました。
- メロ
- ただとにかく、この文字が入っている
というのがすごいです。
だって観光地をいくら探しても
こんなの出てこないわけですから。
もちろん問屋さんとか工場では
余りがあったりするかもしれないですけど、
なかなか見つかりません。
ちなみに同じように北海道の旭川で
高校生の大会向けに作った、のれんみたいな、
観光地みやげの体をとった商品を見たことがありました。
でも、イラストが若干ファンシー絵みやげとは違ってまして、
こちらは、よりそのままファンシー絵みやげの
「ナキギツネ」のキャラなので、貴重です。
レアだし、資料性が高い。
でもこれは思い出の品なわけですよね。
陸上大会に参加した思い出の品なんですよね。
おいそれと「欲しい」とは言えないですけど‥‥。
- ーー
- メロさん、ものすごく
欲しがっているじゃないですか(笑)。
(つづきます)
2020-04-02-THU