前回の連載のなかで、
「ご実家などに眠っている
ファンシーなグッズはありませんか?」
と、呼びかけたところ、
メールやツイッターで
たくさんの投稿をいただきました。
どうもありがとうございます!
なんとメロさん、ほぼ全ての方の
投稿写真を鑑定してくださったんです。
ぱっと見ただけで、「あ、これはですね~」と
あらゆる方向に話が進んだ鑑定の様子を、
そのまま、こってりとお伝えします。
レアで貴重な「ファンシー絵みやげ」の数々、
その当時の時事ネタもおたのしみください。
担当はほぼ日のフジタです。
- ーー
- 鑑定の続きを、お願いします。
はじめまして!
若いのに、人生賭けて集めてますね。
少しで良ければあげます。
(A)
- メロ
- 「少しで良ければあげます」
ああ! ぜひ、おねがいします!
というか、この左の鍵のキャラクター、
「バリーバディ」じゃないですか。
『アウト×デラックス』にも出てきました。
- ーー
- あ、出てきましたね。
- メロ
- 偶然にもオンエアの後にバリーバディ。
ナイスタイミングです。
このキャラ、めちゃくちゃマイナーですからね。
よくお持ちでしたね。
中央の相合い傘のキーホルダーも
前回の連載でTOP画像に使っていただいた
相合い傘と関連してます。
この方、すごいです。
- ーー
- しかも「あげます」とまで書いてくださって。
- メロ
- もしかして、もっとお持ちなのでしょうか。
「少しで良ければ」って‥‥。
このすごいアイテムを出して、
「少しで良ければ」という謙虚さ。
事件か挑戦状ですよ、もう。
- ーー
- 何気ないメールにも、メロさんにとっては
事件が隠されています。
- メロ
- はい。そして中央の傘、
これは傘の部分だけ金属のプレートなんですね。
だからここは大量生産して、
地名ごとに作って貼り付ければ、
全体のロット数を増やせるんですね。
ただ、傘の形で作っているので、
傘形のものにしか貼れないわけです。
- ーー
- 「宮崎」という部分が変わって、
「ナイス・デー」というのは共通ですか?
- メロ
- 共通です。
ただ、地名がないものもあります。
「ナイス・デー・バケーション」とか。
どこでも使える。
いや、すごいものを見ました。
- ーー
- 次の方も、たくさん送ってくださってます。
小学生のころ、お土産といえばファンシーな
絵のキーホルダーでした。
ずっと大事に宝箱にとっておいたのを思い出し、
先日、実家に帰省した際、見事発掘いたしました。
懐かしくて、ちょっと泣きそうに
なってしまいました。
ステキな企画をありがとうございます。
(ポーネー)
- メロ
- おお、いっぱいあります。
「ずっと大事に宝箱に取っておいて」とありますが、
どんな宝箱だったんだろう。
箱自体も気になります。
- ーー
- この方、ハンドルネームは
ポーネーさんですけど、
送られてきた画像を見ると、
「ゆみ」さんなんでしょうね、きっと。
(ポーネー)さんからの写真2枚目
- メロ
- そうですね。
この名前を選ぶタイプのもの、
今もサービスエリアなどであります。
- ーー
- はい、最近も見たことあります。
- メロ
- おもしろいのが名前を選ぶキーホルダーを、
時代ごとに見ていくと、
名前の流行りがわかるんです。
本当に古いものだと古風な名前しかなかったり、
ちょっとハイカラな名前が増えてきたとか、
キラキラネームがあったりとか。
そして「トシちゃん」とか「ミホ」とか、
好きなアイドルのものを
買う人もいました。自分の名前じゃなくて。
- ーー
- そうかも、わかります。
- メロ
- 実は私は「くにちゃんコレクター」です。
- ーー
- くにちゃん!
山田邦子さんですか。
「やまだかつてないテレビ」のブームで、
くにちゃんショップもありましたね。
- メロ
- はい。「KUNY」ですね。
山田邦子さんの勢いはすさまじかったです。
その人気が昂じて、
名前の中に「くにちゃん」もありました。
しかし、当時の子どもで「くに」がつく名前というのは、
そこまで多数派ではありませんでした。
そして、山田邦子さんのファンも、
自分の名前じゃない「くにちゃん」を
あまり買わなかったようで、
けっこう、残っているんです。
私は日本全国で、くにちゃんという
名前のものを見つけては買っています。
- ーー
- メロさんは、
「くにちゃんコレクター」という
肩書きもお持ちだったんですね。
- メロ
- ええ。
他のも見てみましょう。
まず、左側の「マーフィー・フォックス」という
きつねのキャラクターですが、
これは島根県の津和野ですね。
津和野は、森鴎外記念館があって、
「鴎外くん」というファンシー絵みやげが
あるんですよ。
- ーー
- 森鴎外のファンシー絵みやげがあるんですか?
- メロ
- あるんです。
ほかにも、津和野といえば「鷺舞」という
鷺の被りものをして舞う郷土芸能があって、
その鷺舞も鴎外も
どちらもやっぱりファンシーなイラストにしづらい。
だからこういう基本的なキツネとか
森にいそうな動物のキャラクターが多いですね。
- メロ
- その隣がスペースワールドですね。
スペースワールド‥‥これすごい。
かぐや姫を使うんですか。
かぐや姫って、たぶんはっきりとした
舞台とされる場所がない気がするんですよね。
- ーー
- ああ、たしかに。
どこの竹やぶか、わからないです。
- メロ
- 金太郎は足柄山だから箱根で使われますが、
一寸法師やかぐや姫は、場所がないので、
ファンシー絵みやげに使うのは難しいんですよ。
かぐや姫のファンシーって、見たことないです。
でもこれはスペースワールドなので、
「月」ということなのでしょうね。
「月」なので「かぐや姫」。
逆にすごいですね。
かぐや姫は月から来た宇宙人ですから。
- ーー
- なるほど、月に帰るんですもんね。
- メロ
- 月に帰る設定のかぐや姫を
スペースワールドで使う。事件です。
「うちは使いますよ、月ですから。
かぐや姫いただきました」
この商品から、
そういう勝利宣言みたいなものを感じますね。
自分だって初めて見ましたもん、
かぐや姫のグッズ。
欲しい。
- ーー
- メロさんが持っていないほど、レア。
- メロ
- 何なら私が持っているものと
交換したいぐらいですね。
その右の爪切りは「パイパイ」「大きくなあれ」、
「パイパイ」のセリフの下には
「ボインボイン」と書いてあります。
- ーー
- いまパソコンで拡大しようと思ってました。
メロさん、まだ拡大していないのに、
よく文字が読めますね。
- メロ
- これは、爪切りではなかったのですが、
同じイラストを
他で見たことがあるので知っているんです。
子どもが好きそうなモチーフですね。
- メロ
- 左下は「ロマンの町長崎」。
これはファンシー絵みやげより前ですね。
パーツを見ればわかります。
このチェーンを使ってるものは、
より古いものに多いので、
ファンシー絵みやげより以前のものだと思います。
そしてその右、愛媛県松山の「坊っちゃん」。
これは「ボットチャン」と読めますよね。
- ーー
- はい、「ボットちゃん」。
- メロ
- 普通はローマ字って子音を重ねるんですよ。
この場合だと「cchan」というふうに
子音を重ねますが、
ヘボン式のローマ字の場合、
「ch」の前は「t」で促音になります。
英語とかでも「マッチ」とか
「tch」ってあるじゃないですか、
これに則って、ヘボン式のローマ字では
「tch」と書くんですね。
- ーー
- ちゃんと坊っちゃんの
英語版だとこうなるみたいですね、やっぱり。
- メロ
- 松山の町を歩くとわかるんですけど、
「坊っちゃん」の英字表記が揺れています。
ヘボン式にしているのもあれば訓令式もあって。
あと、この絵は違いますが、松山は、
坊っちゃんとマドンナが
カップルにされがち問題があります。
- ーー
- カップルにされがち。
- メロ
- 観光地では、
カップルや夫婦が記念にペアで買ったりするので、
恋人同士の男女が描かれたグッズが多くつくられます。
そうなったとき、『坊っちゃん』に登場する主要な女性は
「マドンナ」ということになるので、
坊っちゃんの横にマドンナを置いて、
ラブラブな雰囲気で描かれているんです。
そういうものが大量にあります。
でも物語中で坊っちゃんとマドンナは
1回も恋仲になっていないどころか、
坊っちゃんが遠くからマドンナの姿を見て、
「なんだ、いけ好かない」と
思っているくらいの関係性で、
一切カップルじゃないんですよ。
- ーー
- たしかに、そうです。
- メロ
- 現地の土産店の方に
「おかしいですよね」と言ったら、
「そうなのよ」と言われました。
現地の人は当然ちゃんと物語を知っていますからね。
「でも売れるからいいわ」みたいな感じでしたけど。
たぶん現地の人じゃない、
よその業者が『坊っちゃん』を読まずに作っているのかなと。
「マドンナっていうくらいだし、
これ絶対坊っちゃんの彼女でしょ」って。
- ーー
- (笑)メロさんのおかげで、
全国津々浦々のいろんな事情がわかって
おもしろいです。
- メロ
- まだありますよ。
これ、小さいスケボーがくっついているんですけど、
『坊っちゃん』とスケボーは何の関係もないわけです。
裏側を見ると「ボーイズ・ライフ」と書いてあって、
キャップ、野球帽がついてます。
坊ちゃんの時代に、日本には
ほぼないような気がする野球帽があるわけですよ。
「なぜ?」って話なんですね、
- ーー
- たしかに。
- メロ
- なぜ『坊っちゃん』に、
スケボーと野球帽がついてくるのか。
実は、私、この『坊っちゃん』と
同じ仕様のものを持ってます。
裏に「ボーイズ・ライフ」と書いていて、
やっぱりスケボーのパーツがあるんですよ。
「ボーイズ・ライフ」というシリーズなんです。
そのキャラクターは、キャップを被って
スケボーを持ってスタジャンを着ている、
ストリートファッションに身を包んだ男の子のキャラですね。
- メロ
- スケボーやストリートファッションが流行ったので、
子どもが喜んで買うんじゃないか、
ということでつくられたキャラなんですね。
特徴としては、いつも右側を見ています。
なんと、このフォーマットを
他の偉人とかに流用したわけです。
だから、『坊っちゃん』も右側を見ていて、
スケボーのパーツとか野球帽とか、
おかしなものがくっついている。
いろんな意味でおかしいです。
これもレアグッズと言えるかもしれません。
- ーー
- ありがとうございます。
ここまではポーネーさんの投稿、
つづいて、Tさんです。
縦約22cm、横約20cmのキツネの温度計です。
(T)
- メロ
- キツネの温度計。
これまでいろいろ木彫りものが
出てきましたけども、これもすごい。
何がすごいかって‥‥わかります?
- ーー
- 形が「ナキギツネ」?
- メロ
- そうです。
ファンシー絵みやげの最初のキャラクター、
「ナキギツネ」を逆輸入して、
木彫りに持ってきた、と考えられます。
- ーー
- 互いに影響を受けあっていた、
ということですね。
- ーー
- あ、次の方も、キツネですよ。
いつ、どこで、誰が、どうやって入手したのかは不明。
いつの間にか、一眼レフカメラのレンズを布にくるみ、
この巾着袋に入れて使っていたんです。
自分のカメラを買って使っていたので
少なくとも30年以上前からあったと思います。
気に入って長年使っているものなので、
鑑定していただけると嬉しいです。
(ちゅぱ・かぶらお)
- メロ
- またキツネ、この流れはいいですね。
- ーー
- キツネ流れ。偶然にも。
- メロ
- 「一眼レフカメラのレンズ入れにしていた」と。
これ実は「ファンシー絵みやげ」じゃないんですね。
これはファンシーショップで売っていた、
「ロンリー・リトル・フォックス」という
コクヨのキャラクターです。
この牧歌的なイラストレーションの描き方も
ファンシー絵みやげと違うので、
関連性は希薄かもしれません。
ただ、キツネって、おみやげ界だと
めちゃくちゃ多いんですけど、
純粋なファンシーグッズ界には全然いないんですよ。
サンリオでも「どんじゃらほい」という
キャラクターの中の「コン吉」というのがいるだけで。
キツネがメインのものはたぶんないです。
そういう意味で、同時代の重要なキツネ系ファンシーです。
むしろこれが出てきた、というのはすごい。
- ーー
- 気に入って30年以上使っている、
と書かれてますね。
大事にしているものを送っていただけて
うれしいです。
- メロ
- そう、だから時代も
ファンシー絵みやげと一緒なんです。
影響を与えあっていたと思います。
- ーー
- さて次の方は、コメントはなく、
写真だけ送ってくださいました。
すごくかわいいですよ、これ。
(S)
- メロ
- ああー、いいですね。
このシリーズは、
いろんなキャラクターがいるんですけど、
基本的には女の子と男の子が描かれた
カップルのものというのがいっぱい存在します。
2つセットで1つのキーホルダーぐらいの値段で
売っているんですね。
さっきの坊っちゃんとマドンナとか、
いろんな「カップルにされがち」問題を
自分も見てきたんですが、
この鍵のタイプで西郷隆盛のものは初めて見ました。
これ鹿児島で、「SAIGODON!(西郷どん)」と
書いてあるじゃないですか。
この左側にいる女の子は、桜島大根を持った
薩摩おごじょという、女性ですよね、
鹿児島県の女性を表していて、
つまり特定の誰かではないんです。
- ーー
- 誰でもない。
西郷隆盛は何度か結婚してますよね。
でも誰でもない。
- メロ
- はい、関係ないんですよ。
これ鹿児島共通なんですけど、
西郷どんカップルの相手役はいつも
薩摩おごじょなんです。
伝統的な鹿児島の女性の服装をしてる。
- ーー
- そして、桜島大根を持ってるんですね。
- メロ
- 桜島大根を持ち、桜島大根にも顔があり、
更に上のほっかむりにまた桜島大根!
- ーー
- (笑)
- メロ
- カップルなので、
「あなたの鍵でマイハートを開けて」と。
当時カップルで記念にこれを買って、
男女で持ち歩く。
- ーー
- これ、ちゃんと入れると
ピッタリ合うんですかね。
- メロ
- 合います。
というか、これ合わないと大変です。
他にも、ハートが分かれているネックレスとか、
2人で持つものはいろいろありました。
こういう鍵のモチーフは人気も高いです。
ファンシー絵みやげって、
意外と女性向けに作られてないものが多いなか、
こういう女の子っぽい雰囲気のものって
めずらしいです。
(まだまだ、つづきます)
2020-04-03-FRI